東名あおり運転やりなおし裁判 懲役18年求刑

5年前、神奈川県大井町の東名高速で起きたあおり運転死傷事故の裁判を取り上げます。高速道路で相手の車を煽り、強制的に追い越し車線に停車させたため、後続のトラックが追突し被害者側の両親2人が死亡しています。石橋和歩被告には一旦、横浜地裁で懲役18年の判決が下されたのですが、控訴審である東京高裁は1審に不備があるとして差し戻しを決定しました。そのやりなおし裁判が横浜地裁で開かれており、検察は懲役18年を求刑しています
やりなおし裁判に至った経緯を含め、産経新聞の記事が解説していますので引用します


■一転して成立と認定
本題に入る前に簡単に事故について振り返っておきたい。起訴状などによると、石橋被告は29年6月5日、事故直前に東名高速の中井パーキングエリアを利用した際、静岡市の萩山嘉久さん=当時(45)=から車の駐車方法を注意されて逆上。先にパーキングを出た一家の車を追いかけた末、あおり運転を繰り返して停車させ、その結果、後方からきた大型トラックによる追突で萩山さんと妻の友香さん=同(39)=を死亡させたなどとしている。
30年12月の1審横浜地裁は、公判前整理手続きの段階で、裁判官が停車中の車について危険運転致死傷罪の成立は「認めない」と検察官や弁護人に表明していたものの、判決では一転して成立すると認定し、懲役18年の判決を言い渡した。
■前回の〝不意打ち〟
令和元年12月の東京高裁判決も同罪の成立は認めたが、一方で、1審で有罪判決が言い渡されるまでの流れが、弁護側に対する「不意打ち」に当たり、同罪が成立する見通しで反論していれば「因果関係や量刑に影響した可能性がある」として、改めて地裁での裁判員裁判で審理を尽くすことが相当だと結論付けた。
そうした経緯をたどった末、今回弁護側が取った戦術の一つが、一家4人が死傷したそもそもの原因は、後続のトラックにあるとした点だ。事故が起きたのは3車線あるうちの右側の追い越し車線で、ここを大型トラックが走行することは禁止されている。
さらに、追突したトラックは制限速度をオーバーしていたうえ車間距離も十分に取ってはいなかった。初公判で弁護側は、裁判員の方に目をやりながらトラック運転手のこうした問題点をたたみかけるようにして列挙し、石橋被告の運転と事故との因果関係を否定した。
また、主張の変化は妨害運転を行った回数にも及んでいる。差し戻し前の1審で、検察側は石橋被告が一家の車の前に割り込み、減速して車線変更させる行為を3回繰り返した上、4回目の進路妨害で追い越し車線に停車させたなどと指摘。この点について、当時の弁護側は事実関係に争いはないとしていた。
■裁判員はけげんな顔
ところが今回、改めて被告人質問に立った石橋被告は検察側の質問に答える形で、一家の車の前に出たのは「2回」だった旨、証言した。衛星利用測位システム(GPS)の記録などを確認し、認識が改まったという。妨害運転をした後、一家の車は自らの意思で追い越し車線に停車したと印象付けたかったのか、弁護側の「どちらが先に止まったのか」との質問には「相手だったと思う」とも証言している。
その一方で、検察側から「どうやって相手の車を止めようと思っていたのか」「追いかけているときは、時速何キロ出していたのか」「相手の車の前に行ったのはどうしてか」などとただされると、石橋被告は「考えていなかった」「覚えていない」を連発。これに、一人の男性裁判員がけげんな顔をしながら「覚えていないのに、危険運転をしていないといえる根拠は」と問うと、石橋被告は「そういう運転、していないです」とかみ合わない答えをみせる一幕もあった。
果たして、差し戻し前の1審で言い渡された懲役18年という厳罰が適当なのか、そうでないのか。結審後、裁判員らはどのような結論を導くのだろうか。
(産経新聞の記事から引用)


最初の裁判ではあおり運転の結果、強制的に停車させた車が後続車による追突事故に巻き込まれた場合でも危険運転致死傷罪は成立するとの判例が示されたのは成果でしょう。しかし、裁判員裁判を再びやらなければならないのであり、時間と費用の無駄です
さらに石橋被告の弁護人は戦術を変更し、死亡事故が発生したのは石橋被告が強制的に車を停車させたからではなく、追突したトラックに原因があったと責任を転嫁する弁論を展開しました。しかし、この戦術の変更が効果的だとは思えません
石橋被告の「オレは関係ない」と言わんばかりの態度に裁判員は反感を抱くはずです。反省もできない男、という印象を抱くのでは?
ちなみに最初の裁判で検察は懲役23年を求刑しているのですが、やりなおしとなった裁判では1審判決の懲役18年を超える求刑はできないとの決まりがあるらしく、横浜地検は懲役18年の求刑しています
石橋被告の行動(高速道路の追い越し車線に車を強制的に停車させる)は、車の同乗者が事故に巻き込まれ死んでも構わないという「未必の故意」に当たると自分は考えます。なので最初から殺人罪で起訴しておくべき事件だったのではないか、と思うばかりです
殺人罪の適用を裁判官が認めるかどうか、という問題はありますが、石橋被告は無期懲役で厳罰に処すべき人物でしょう。それが懲役18年というのはあまりに軽い扱いです

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