富山交番襲撃犯 控訴審で差し戻し判決

2018年、富山市の交番襲撃事件で強盗殺人罪などに問われた元陸上自衛官、島津慧大被告(25)の控訴の判決が名古屋高裁金沢支部でありました。1審の富山地裁は犯行を殺人と窃盗の罪にとどまるとして無期懲役を言い渡していたのですが、高裁は「被告は最初から拳銃を奪おうと計画して犯行に及んだのであり、強盗罪の成立を認めなかった1審判断は事実誤認がある」として、差し戻しと命じる判決を言い渡しています
高裁の判断に従うのであれば、島津被告は強盗殺人として1審をやり直すことになります。差し戻しを決定した高裁の判断に縛られるわけではありませんが、強く影響されるのは確実であり、死刑が下される可能性があります


4年前、富山市の交番で警察官を刃物で殺害したうえ、その拳銃を使って警備員を殺害した罪に問われた25歳の元自衛官の2審の裁判で、名古屋高等裁判所金沢支部は「強盗殺人罪を適用せずに無期懲役を言い渡した1審判決には明らかな事実誤認がある」として取り消し、裁判員裁判をやり直すよう命じました。
元自衛官の島津慧大被告(25)は平成30年6月、富山市の交番で46歳の男性警部補をナイフで殺害したうえ、その拳銃を使い近くの小学校の校門前にいた68歳の警備員の男性を殺害したとして、強盗殺人などの罪に問われ、死刑を求刑されました。
1審の富山地方裁判所は、去年3月「拳銃を取る意思が生じたのは警察官を殺害した後だった可能性を排除できない」として強盗殺人罪を適用せず、殺人と窃盗の罪で無期懲役を言い渡しました。
24日の2審の判決で、名古屋高裁金沢支部の森浩史裁判長は「被告は、交番襲撃前から相手が拳銃を所持していることを明確に意識していた。当初から拳銃を奪うことを意図していたとみるのが極めて自然な見方だ。1審の判決には明らかな事実誤認がある」と指摘しました。
そのうえで「強盗殺人罪の成立を前提としてふさわしい刑の重さを判断する必要がある」と述べて1審の無期懲役を取り消し、富山地方裁判所で裁判員裁判をやり直すよう命じました。
遺族「判決の理由には納得できた」
殺害された警備員、中村信一さんの妻は、判決のあと取材に応じ「被害者の思いを裁判所がくみ取ってくれた判決だと思います。私は刑の重さにはこだわっていませんでしたが、今回の判決の理由には納得できました。これからまた長い裁判になると思いますが見届けていきたいです」と話していました。
また、中村さんの長女は「ほっとしています。1審から極刑を望んでいたので、富山で裁判をやりなおすという判決がでて、父も私によかったねと言ってくれていると思います」と涙ながらに話していました。
被告の弁護士「上告するか本人と話し合う」
今回の判決について、島津被告の弁護士は「最高裁判所に上告するかどうか本人と話し合って決めたい」と話しています。
名古屋高検 次席検事「強盗殺人罪の成立を認めた点は妥当」
判決について、名古屋高等検察庁の中村孝次席検事は「検察官の主張どおり、強盗殺人罪の成立を認めた点は妥当であり、この判断を前提として差し戻し後の裁判で適正な量刑判断がなされるよう尽力したい」というコメントを出しました。
(NHKの記事から引用)


1審の判決時、当ブログでも書いたように「交番にいる警察官を襲撃し、拳銃を奪う」との犯行動機は、取り調べに応じない島津被告の断片的な供述を警察官が拾い集め、つなぎ合わせて調書にまとめたものなのでしょう。苦心して供述調書を作成したのでしょうが、富山地裁の裁判官はその調書の不自然さを指摘し、被告の内面を吐露した供述だとは言えないと指摘し、最初から拳銃強奪目的で犯行に及んだとする検察側の主張を退けました
被告側にすれば強盗殺人で改めて裁判やり直しとなれば、死刑判決もあり得るわけで不利です。上告して最高裁に持ち込み、「高裁の差し戻しの判断は誤りだ」との決定を手にしたいのでしょう
本件は裁判員裁判なので、富山地裁で差し戻し審を行う場合は裁判官と裁判員を入れ替えて実施することになります

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