秋田連続児童殺害 畠山鈴香受刑者の話

代理ミュンヒハウゼン症候群という一般の方にはなじみのない名称が登場した事件として、2006年4月に起きた秋田連続児童殺害事件があります。犯人である畠山鈴香受刑者は無期懲役が確定しています
まず、事件の概要を述べた上で、「週刊女性」が畠山受刑者についての記事を2021年8月に掲載していますので取り上げます
畠山受刑者は交際中の男性と過ごすには長女が邪魔になると感じ、橋から突き落として川で溺死させます。続いて畠山受刑者は2軒隣りの家に住む小学生男子児童を絞殺し、川辺に遺棄します。最初の事件は女児が転落死した事故と扱われたのですが、2人目の被害者が出たため連続殺人事件として扱われ、畠山受刑者が容疑者として浮上。連日、マスコミが押しかける事態になりました(いわゆるメディアスクラム)
畠山受刑者の供述が二転三転したものの警察は逮捕に漕ぎ着け、起訴に至りました。畠山受刑者には統合失調症だとか、代理ミュンヒハウゼン症候群だったのではないかとの説も飛び交ったのですが、秋田地裁は無期懲役を言い渡しています(検察の求刑は死刑)
事件に関する報道の中で、畠山受刑者が小学生時代から繰り返しいじめに遭っており、卒業アルバムには「いままでいじめられた分強くなったべ。俺達にかんしゃなさい」、「会ったら殺す」などと書かれていたと明かされていました
以上が簡単な事件のあらましです


《秋田児童連続殺害事件》拘置所で何度も自殺未遂、“鬼母”畠山鈴香受刑者の素顔
(前略)
彩香ちゃんの死から1か月後の5月17日。2軒隣の家に住む米山流星くん(仮名・享年7)が学校から帰宅せず両親が捜索願を提出。翌日遺体となって発見され、殺人事件として捜査が開始されたのである。私が取材に参加したのもこのころからだった。事件当時の『週刊女性』6月13日号では《彩香ちゃんのママもブチギレた! いま地元でささやかれる「嫌な噂」》と称して逮捕前の鈴香が疑惑の人物としてすでに報じられている。流星くんの事件から1週間もたたないうちに鈴香が容疑者として挙がっていることはわれわれマスコミに知れ渡っていた。多いときには100台ものカメラが鈴香の実家を囲み、普段は静まり返っている山間の一軒家は異常な観光スポットと化していった。
このとき私は鈴香本人に取材している。畠山家の実家の広い玄関の三和土(たたき)に鈴香が座り、われわれは彼女の話をただ聞いていた。そのときの主張は「私は流星くんを殺めていない。犯人は許せない」といったような話だった。われわれの質問に対しては「決めつけないでください」「(思っていること)全部は話しきれない」と何度も繰り返した。目の前にいる鈴香はワイドショーで繰り返し流されたヒステリックな女性ではなく、どこかおどおどとした娘を亡くしたひとりの母として映った。取材をした記者の中には「鈴香は白!」と社に報告している者までいた。記者だけではなく自分までも欺く鈴香の生い立ちは、聞く者に同情を与えるものだった。
父親から逃げたかった
1973年2月、鈴香は畠山家の長女として生まれた。秋田県北部の二ツ井町で運送会社を経営する父と元飲食店従業員の容姿端麗な母と4歳下の弟の4人家族。
幼いころから父親から暴力を受け、いつしか鈴香は父親に怯えて暮らすようになったという。
学校でも大人に恵まれなかった。小1のとき担任から「水子の霊が憑いている」と言われたことがきっかけで同級生から《心霊写真》というあだ名をつけられた。高学年になっても給食を食べるのが遅い鈴香は残ったおかずを手のひらにのせられ、それを食べさせられた。その姿を見た同級生たちは彼女を《バイキン》と囃し立てた。
「バイキンを洗い流すために便所に押し込まれて洗剤をまかれたというエピソードもありました。高校の文集の寄せ書きには《いままでいじめられた分、強くなったべ。俺達に感謝しなさい》、《秋田から永久追放》など心ない言葉が続き、多感な少女時代にそんな扱いを受けていた彼女に同情しました」
と、雑誌記者が明かす。
転機が訪れたのは高校卒業後。栃木県の鬼怒川温泉ホテルや川治温泉で仲居やコンパニオンとして働き始める。しかし父親に連れ戻され、帰りたくない実家に帰ることとなる。そのころ秋田で後に彩香ちゃんの父親となる男性と出会い、やがて2人は結婚する。21歳のときだった。2年後に彩香ちゃんが誕生し、その1年後に離婚。彩香ちゃんは鈴香が引き取ることに。
(中略)
死刑が求刑されるも一審判決は無期懲役。続く控訴審判決でも無期が確定し、'09年4月高検の上告断念によって終結した。事件から丸3年たった時点で見えてきたものはなんだったのか。それはやはりチグハグな鈴香の姿だった。
第一審判決のとき、鈴香は被害者遺族に土下座し謝罪するというひと幕があった。しかし、そのころ担当医にあてて書かれていたメモには、
《米山さんがなんで怒っているのかわからない。まだ2人も残っているじゃない(被害者は次男で他に長男と三男がいる)恵まれているのに》
その内容は世間に“嘘つき鈴香”の印象をより強めた。
(以下、略)


記事を書いた記者は畠山鈴香の「チグハグな言動」に着目しており、省略した部分では取材中に記者団に唐突に罵声を浴びせたとか、いくつものエピソードを並べています。上記の法廷で遺族に土下座する行動もその1つでしょう。ただ、それは計算の上でのパフォーマンスではなく、そうするしか思う浮かばなかったゆえの行動なのかもしれませんし、こどもの頃にいじめを受け土下座を強要させた延長で「そうすればとりあえずは許してもらえる」と学習した結果なのかもしれません
おそらく畠山鈴香受刑者が受けたいじめはこの記事に書かれた事案の数倍あるはずで、毎日学校へ通うのは「いじめられるため」であったと言えるほどなのでしょう
また、省略部分では畠山受刑者の自殺未遂にも書かれており、事件を起こす前や逮捕後の拘置所での自殺未遂(刑事のタバコを盗み取り飲み込んだ、ボディソープを飲んだ、ボールペンを腕に突き刺す、タオルを首に巻いて縊首を図った、鏡を割って腕を刺した)が述べられています
ただ、それが本当に自殺を企図したものかどうかは疑問です。ボールペンを腕に刺しても死ねないのですから
記事は畠山受刑者が娘を愛しており、娘への殺意を認めた判決をどうしても受け入れられなかったと結んでいます
畠山受刑者の本心がどこにあるのか、判断は難しいのであり、何とも言えません
ただ、娘を愛していたからこそ殺してしまった可能性は残ります。そして、畠山受刑者をこどもの頃からいじめまくっていた同級生たち、暴力をふるい続けた父親が彼女を壊してしまったのも事実であり、その責任を誰も取っていないと指摘しなければなりません。「こどもの無邪気な行為」ではなく、明らかに迫害でしょう。そして親による虐待です
もう少し丁寧にこの事件を読み解き、報道しようとする配慮があれば、また別な描き方があったのではないでしょうか?
ちなみに、フランスでは昨年12月に学校でのいじめを犯罪として罰する法律が国会である下院を通過しています。「子どもたちの人生が台無しにされることは決して容認できないのであり、これを犯罪として処罰するのはフランス共和国の価値観を実現する手段」だと宣言し、禁錮3年以下あるいは570万円以下の罰金を課すというものです。被害者が自殺した場合は禁錮10年以下の刑が予定されており、フランスの本気が感じられる法案になっています

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