大和市男児殺害 綾乃容疑者の凄惨な少女時代
楳図かずおら、日本のホラー漫画には少女がさまざまな化け物に追い詰められ苦しめられる展開の作品群があります。自分がこどもの頃、あれがブームで女の子たちが互いに貸し借りして読みふけっていたものです。自分はあのおどろおどろしい作画が苦手で、手に取る気にはなれませんでした(正直、怖かった)
いわゆる少女小説(現在のライトノベルの前身)であれ、レディースコミックであれ、主人公である少女がこれでもか、と悲惨な目に遭い痛めつけられる物語というのは不思議と需要があるらしく、現在でもその系統の作品が描かれています
さて、余談はここまでにして、大和市で母親が次々とこどもを産んでは手にかけて殺害したと推測される事件の続報です
文春オンライは上田綾乃容疑者がどのような境遇で育ったのか、記事にしています
決して長くはない記事なのですが、読んだ後に有吉佐和子の長編小説を通読したかのような疲労感がどっと押し寄せてしまいました。それが上記の、主人公の少女がこれでもかと悲惨な目に遭い虐げられ続ける物語、の記憶につながっています
文春オンラインの記事を以下、引用します。全文を読みたい方は文春オンラインにアクセス願います
《大和市4児死亡事件》親族が語った逮捕母“見放された”孤独と絶望の学生時代 「1年で会うのはお年玉をもらいに来る3分だけ」「祖母に生活費を借金」
(前略)
容疑者を絶望させた「両親の死」
そして、両親の死が綾乃容疑者を追い込んだ。前出の綾乃容疑者の同級生の親が振り返る。
「綾乃ちゃんがまだ中学生の頃だったでしょうか。『母親が乳がんになり死期が近い』と聞いていたのですが、その少し前に父親も勤務先で突然死していました。結局、母親も後を追うように亡くなり、残された綾乃ちゃんは弟2人と子供たちだけで暮らすようになりました」
弟2人と残された綾乃容疑者。周囲の大人たちが手を差し伸べるかと思いきや、支援の手が行き届かないほど、本家と分家の断絶は深かったようだ。前出の従兄が続ける。
「綾乃の祖父は大正生まれのNHK職員というエリートで、大柄かつとても厳粛な人でした。祖父は綾乃の伯父にあたる私の父に、全てを継がせようとしたのでしょう。長男でしたから。帝国ホテルのコックとして高卒の父をコネで就職させるなど、人脈をフルに生かし面倒をみていたようです。
綾乃容疑者と親族の関係性は…?
一方、次男である綾乃の父は電気関係の職人だったようですが、就職の面倒もみてもらえなかった。祖父は綾乃の父に、実家のすぐ傍の畑に『分家』として家を建ててやりましたが、それで『やれることはやり切った』という感覚だったのでしょう。
その後、関係は断絶し、綾乃の一家が本家に入ったこともなければ、本家の人間が分家に入ったことも一度もありません。お互い葬式にすら行きませんでしたよ。いとこ同士で同じ小・中学校に通っていましたが、話した記憶もありません」
住居こそ両親から引き継いで困らなかったとはいえ、生活は徐々に窮していったようだ。
「両親の死後、綾乃と弟2人は、よく祖母に金を借りに来ていたようです。詳しくは分かりませんが3~5万円ずつ、生活に困る度に訪れていたと聞きました。祖母は几帳面に手帳に金額をメモしていたようですが、返済されることもなかったようですね。『分家』も結局売却されました。
祖父が亡くなった際には、本家の家を相続するため、綾乃に連絡を取ろうとしましたが、行方は全くわかりませんでした。弟2人も知らなかったようです。不動産会社を通じて司法書士にお願いし、なんとか押印と『今後は現金など他の遺産も一切相続しない』という誓約書を返送してもらいましたが、それ以降のやり取りはありません。正直、綾乃のことはよく知りませんし、今回の事件も迷惑だと思っています」
従兄はこのように綾乃容疑者を突き放した。
自身の辛い境遇を容疑者はどう受け止めたのか?
同級生らによると、綾乃容疑者は実家から地元の公立小・中学校に通っていた。横浜市内の商業高校に進学するも、後に中退している。結婚後は、前夫と暮らし始めるが、2002年の第一子を皮切りに、雄大君を含む4人の子供が死亡していたのだ。
両親の死、親族との断絶――自らの辛い境遇を綾乃容疑者はどう受け止めていたのだろうか。
「どう受け止めたていたのだろうか」とありますが、受け止めるも何も、その日をどうやって暮らすのか、明日はどうするのかを考えるので手一杯だったのではないでしょうか?
学校の教師にできることはないとしても、民生委員や児童委員に話をつなぐとか、生活保護を受給させるとか、対応する手段はあったはずです
本家の人間が何もしないという態度も信じられないほど薄情ですが
よくぞこどもたち3人だけで生き延びたと言いたくなります
ただ、綾乃容疑者の心労たるや、我々には想像もできないほど大きく深いものだったはずです。何も考えずに気安く祖母のところへ金を無心に行ったわけもなく、さまざまな思いを心の中で噛み殺しながら向かったのでしょう
中学生の少女に向かって、両親が死んだのだから「もったああすべきだった」とか「こうしないとダメだ」など言える者がいたなら、恐ろしく想像力を欠いている人間に違いありません
結果として、綾乃容疑者の心はこの凄惨な状況を生き抜く過程で壊れ始めていたのかもしれません。高校中退からどう生きたのか、記事にはないものの、それこそNHKの朝の連続テレビ小説では描けないような日々だったのでは
綾乃容疑者は壊れたまま、現在に至ったものと思われます。もちろん、それで4人のこどもの命を奪った罪が帳消しになったりはしないのであり、彼女は刑事責任を問われるでしょう
にしても、文春の取材に「(事件で名前が出て)迷惑です」と言ってのける従兄弟の何と薄情なことか
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