東大試験会場で刺傷事件 思春期挫折症候群?

東海高校の2年生男子生徒が東京大学の試験会場前で受験生2人と成人男性1人を切りつけた事件では、エリート高校生による犯行として注目されました。新聞、週刊誌、テレビ番組はさまざまな専門家のコメントを集め、事件の背景や逮捕された男子生徒の心理を解説しようと試みています
動機もはっきりしない大事件が起きた際には、「この事件は△△である」と納得できる説明を聞かないと居心地が悪く、落ち着かないものです
それゆえ、専門家の解説が要求されるのでしょう
ただ、報道されている事柄だけしか情報がないのですから、それだけで男子高校生の心理を見てきたかのごとく説明するのは無理があります
もちろん、専門家たちも無理を承知でコメントを出しているわけですが
週刊新潮は新潟青陵大学大学院の碓井真史教授(社会心理学)のコメントを記事にしています。記事の冒頭にも断り書きがあるように、報道されている内容をベースにしたものです


東大前刺傷事件 社会心理学者が読み解く東大理III志望「高2被疑者」の“心の闇”
(前略)
ルサンチマンの謎
新潟青陵大学大学院の碓井真史教授(社会心理学)に、現時点での報道をベースに少年についての分析を依頼した。
「確かに現時点では、動機に謎の多い事件ではあります。とはいえ、犯罪の類型としては『通り魔殺人事件』の範疇に入ると考えられるでしょう。2001年の附属池田小事件、08年の土浦連続殺傷事件、そして昨年の京王線刺傷事件などとの共通性が浮かび上がります。ルサンチマン(註:弱者の強者への嫉妬や恨み)を抱えた被疑者が、社会に一矢報いるため、大量殺人を企てた事件だと言えるのではないでしょうか」
ただし、なぜ彼がルサンチマンを抱えるに至ったのか、それが判然としない。
「1938年に起きた津山三十人殺し(津山事件)は、犯人が自殺したこともあり、なぜこれほど大勢の人が殺されなければならなかったのか、根本的な理解は難しいものがあります。ただし、犯人の遺書を読むと、“村八分”による疎外感に悩んでいたことなど、彼の心理状態が全く分からないというわけではありません。我々にも共感できる点がいくつかあるのです」(同・碓井教授)
動機の謎
1968年の連続ピストル射殺事件(永山事件)では、容疑者が貧困家庭で育ったことが犯行に結びついたのではないかと、裁判では俎上に載せられた。「貧しい家庭で育った人が全て殺人犯になるわけではない」のは厳然たる事実だ。
とはいえ、97年に死刑が執行されても、いまだ彼の境遇に同情する意見は散見される。
「ところが東大前刺傷事件の場合は、少なくとも現時点の報道を見る限り、被疑者の少年を取り巻く社会状況や家庭環境に原因を見出すことは難しいかもしれません」(同・碓井教授)
デイリー新潮は1月25日、「東大前刺傷事件 同級生が見た高2容疑者 異様な生徒会長選の演説とひげヅラ動画」の記事を配信した。
その中で、少年の「ひげヅラ」の写真を紹介した。奇矯な印象を受けるのは事実だが、彼が普通の家庭で育ち、成績も決して悪くはなかったことは事実だ。
そんな高校生が、なぜあのような凶悪な事件を引き起こしたのか──こうした疑問も、事件への関心を高めているという。
「ただ、我々にとっては挫折ですらない体験でも、本人にとっては大問題ということはあります。私が勤務する大学で何かの折に聞いたのですが、学年で成績が3位だった中学生が5位に下がってしまったところ、深く落ち込んでしまったというのです。普通は『下がったといっても5位でしょ』となるわけですが、本人はそうは思えないんですね」(同・碓井教授)
思春期挫折症候群
こうしたことが起こるのは学業だけではない。部活動においても似たケースがあるという。
「中学時代に野球が上手かった少年が、甲子園の常連高に進学したとします。ところが、よくあることですが、先輩どころか同級生も尋常ではないレベルだった。そう感じて、立ち直れないほど落ち込んでしまう生徒もいます。あるいは、甲子園を目指して頑張っていたものの県大会の決勝戦で敗れた高校3年生も同じでしょう。野球に興味のない人からすれば『なぜそんなに落ち込むのか』と疑問でしょうが、本人はひどく落ち込むものです」(同・碓井教授)
碓井教授によると、「大半は日が経つにつれて強いショックを忘れていき、普通の精神状態へ戻っていく」という。だが、中には忘れることができず、引きずってしまう者もいる。
「思春期の挫折体験によって、抑うつや不登校、引きこもり、暴力行為などが引き起こされてしまうことを、心理学の世界では“思春期挫折症候群”と呼びます。多くの学生は『上には上がいる』、『自分の分を知る』ことを学びながら成長していきます。誰もが東大に合格できるわけではありません。それでも勉強を続け、他の国立大学や私立大学に進学するわけです。ところが、今度の事件を引き起こした高校生のように、挫折体験のショックから立ち直れない学生もいるのです」(同・碓井教授)
(以下、略)


過去の無差別殺傷事件と比較するのは手慣れた手段ではありますが、犯行形態だけで「あの事件と同じだ」と決めつけるのは危険ですし、エリートの挫折だから過去の「◯◯のケースと似ている」と考えるのも適切ではないと考えます
成績が下がり、「このままでは東大は無理」だと教師から言われる経験というのは、彼独自のまったく初めての経験であり、他の誰かの経験を引き合いに出したところで何の意味もありません。「君の先輩のB君も2年生の時の成績はひどかったけど、3年生で頑張ったから東大に合格したよ」と言われたところで、彼の心には響かないわけです。それは彼自身の経験には含まれない話ですから
東大の理科Ⅲ類に合格できずとも、地方の国立大学医学部に合格するだけの学力はあったと思われます。が、それではダメだったのでしょう
東大の理科Ⅲ類に合格という勲章を望み、手に入れようと躍起になっていただけに、他の進路など頭になかったこそ、絶望し自棄になったと考えられます。が、そんなエリートの挫折など自分には理解できませんし、同情する気にもなれません
世間を騒がせた事件ではありますが、形の上では不良少年がケンカをし、刃物で刺した殺人未遂事件と大きく変わりはないと解釈します
ひねくれた裁判官なら「反社会的傾向が著しい」と処断して刑事裁判にし、少年刑務所で懲役3年以上5年以下の不定期刑にするのかもしれませんが、ここは家庭裁判所による少年審判で少年院送致が妥当なところでしょう

(関連記事)
東大試験会場で刺傷事件 少年は東海高校自主退学
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/496768942.html
東大試験会場で刺傷事件 公判はまだ始まらず
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/494957622.html
東大試験会場で刺傷事件 検察官送致決定
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202206article_39.html
東大試験会場で刺傷事件 家庭裁判所に送致
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202205article_44.html
東大試験会場で刺傷事件 弁護士が黙秘を勧める?
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202202article_42.html
東大試験会場で刺傷事件 みじめな犯行失敗
東大試験会場で刺傷事件 私製火炎瓶など多数用意
東大試験会場で刺傷事件 「俺は東大を受験する」
東大試験会場で刺傷事件 17歳高校生逮捕
「3月のライオン」より 森安九段殺人事件を考える
こども4人を東大に入れた佐藤ママは勝ち組か
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202210article_7.html
玉川徹「社会に牙をむく若者が増えるのは当然」
甲府放火殺人 少年A(19歳)の生き様
甲府放火殺人 犯人は19歳の生徒会長
甲府放火殺人 交際拒否で逆恨み
甲府放火殺人 19歳少年を逮捕
神戸弘陵高生徒殺し 異様な素顔と書く「AERA」
神戸弘陵高生徒殺し 10年越しに犯人逮捕
白金高輪駅硫酸男 ストーカー行為と大失恋
白金高輪駅硫酸男 妄想性人格障害か?
小田急切りつけ男 懲役5年から7年という説
小田急切りつけ男 非モテによる無差別殺人?
小田急切りつけ男 勝ち組女子大生を狙った
相次ぐ列車内殺傷事件は承認欲求の産物?
京王線刺傷事件を考える 精神鑑定実施へ
京王線刺傷事件を考える 死にたがり男の凶行
京王線刺傷事件を考える ジョーカー男の心理
京王線刺傷事件を考える ジョーカーのコスプレ
「無敵の人」 ジョーカー男の無差別殺人への一考

この記事へのトラックバック