大阪障害者施設で暴行死 職員は公判で無罪主張

老人介護施設、障害者施設で職員が入所者に暴行を加えたり、薬物を投与して殺害する事件が相次いでいます
今日取り上げるのは2019年に大阪の障害者施設で、知的障害のある入所者男性に職員が暴行を加えて死亡させた事件です。ブログで取り上げるまでは、「人手不足の折から介護や福祉の職に不適格な人を採用するからこうした事件が起こるのでは」と思ったのですが、報道を読み返すとそう簡単には決めつけられないという気がしてきました
まずは2019年6月の伊住祐輔被告逮捕時の報道を以下、引用します


捜査1課によると、伊住容疑者は当直勤務中の3月22日午後11時~翌23日午前1時15分ごろ、茨木市清水1丁目の「障がい者サポートセンターしみず」で、男性の腹部に乗ったり、首を圧迫したりするなどの暴行を加え、胸腹部に打撲やのどの骨を折るなどの重傷を負わせ、同24日に死亡させた疑いがある。
捜査関係者によると、男性の胸や腹、腕などに計10カ所以上の打撲痕があったという。伊住容疑者は逮捕前の任意の事情聴取に対し、「男性がなかなか寝付かなかったので、体を倒して覆いかぶさり、おとなしくさせるためにひざで胸や腹を押さえつけた」との趣旨の説明をしたという。
施設を運営する社会福祉法人「慶徳会」は13日午後、会見を開いた。重度の知的障害がある男性は2~3年前からこの施設を利用し、3月22日夕、1泊の予定で入所。男性の利用は4回目で、伊住容疑者は初めて男性を担当したという。
法人の説明では、この日は伊住容疑者と50代の女性職員の2人が当直勤務で、男性を含め4人が宿泊した。午後6時の夕食後、同9時の消灯時間を過ぎても男性は就寝できず、個室の就寝部屋と廊下を行き来していた。女性職員が休憩に入った午後11時半以降、伊住容疑者が添い寝するなどしたが、寝つかず、レクリエーションに使う広めの部屋に移動。その部屋に移すと寝入ったとの引き継ぎを参考にしたという。
会見によると、伊住容疑者は男性が布団に入ったことを確認して部屋を離れたが、その後、午前1時15分ごろに部屋を訪れ、布団から床に落ち、息をしていない様子の男性を発見。休憩中の女性職員を呼び、女性が119番通報した。伊住容疑者は施設に対し「添い寝の時におなかに足を乗せたが、けがをすることはありえない」などと説明したという。
伊住容疑者は2002年から契約職員として法人で勤務を始め、06年に正規職員になり、精神保健福祉士の資格も持ち、利用者から苦情を寄せられたことはなかったという。
亡くなった男性の母親は13日、「一日も早く本当のことを話してほしい」と語った。母親は搬送先の病院で、息子の両手首にあざがあるのを見て、施設で何かあったのではないかと不安になったという。伊住容疑者らから「巡回中に異変に気づいた」とだけ説明を受けたという。母親は「腕をつかむだけで死ぬほどのけがを負うはずがない」と憤った。
(日本経済新聞の記事から引用)


「ひざで胸や腹を押さえつけた」と伊住被告は釈明していたわけですが、実際はどうだったのでしょうか?
おそらくひざ蹴りを数発、腹部に見舞った上に床に押し倒し、喉の骨が折れるまで首を締めたというのが実態ではないか、と思います。明らかに過剰な暴行です。伊住被告も激昂し、冷静な判断を失っていたものと推察されます
伊住被告は記事にもあるように、同一施設に長く勤務しており、精神保健福祉士の資格もあるわけで、制止に応じない障害者をどう扱うべきか経験も有していたはずです。それでも激昂し、歯止めが効かなくなるほど暴行を加えたのですから、「どうして?」と考えてしまいます
なお、この裁判で昨年の夏に始まったものですが、弁護側が証拠として提出する予定の写真が裁判員に強度の刺激を与え、精神的な負担になるとの理由で裁判長が再考を求めたのでが、弁護側が応じなかったためすべての公判予定が取り消されるという異例の展開になりました
仕切り直しの公判は現在進行中であり、3月10日に判決が言い渡される予定です
公判取り消しと証拠写真については、以下のように報じられました


傷害致死罪に問われた男の裁判員裁判で、大阪地裁(佐藤卓生裁判長)が8月末の初公判後、残りの公判日程を取り消していたことがわかった。弁護側が使う予定だった写真が裁判員に強い精神的負担を与える「刺激証拠」に当たるとして、加工しないまま公判で示すことを裁判長が認めなかったためという。
裁判員裁判の公判期日が初公判後に取り消されるのは異例だ。遺体の写真や血の付いた凶器といった刺激の強い証拠(刺激証拠)の扱いには慎重さが求められているが、事前に2年にわたり協議を重ねており、このタイミングでの取り消しに被害者遺族や専門家からは疑問の声が上がっている。
男は大阪府箕面市の障害者施設元職員 伊住いずみ 祐輔被告(42)。同府茨木市の施設で勤務中の2019年3月、知的障害がある男性(当時30歳)の首を圧迫するなどして窒息させ、搬送先の病院で死なせたとされる。
19年7月の起訴後、裁判官と検察官、弁護人の3者が集まって争点や証拠を整理する公判前整理手続きが今年8月26日まで計24回行われた。被告は起訴事実を否認しており、争点は▽暴行の有無▽暴行と死亡の因果関係――に絞られ、9月21日の判決を含む計9回の期日が決まっていた。
加工に応じず
関係者によると、初公判後、3者が非公開で協議を行った。この際、予定されている遺体の解剖医らへの証人尋問で弁護側が使おうとした写真の中に未加工のものが含まれているとして、佐藤裁判長が公判でそのまま示すことを認めなかった。だが、弁護側も加工に応じず、残り8回の期日取り消しを決めたという。
弁護側が用意したのは、男性の遺体写真とは別のもので、遺体写真と見比べることで暴行の有無や死亡との因果関係を否定する狙いだったとみられる。写真の存在は公判前整理手続きの段階で明らかになっていたが、加工について裁判所と弁護側の意思疎通が不十分だったとみられる。
(読売新聞の記事から引用)

この記事だけでは詳細が分からないのですが、被害者男性の遺体の写真と比較するため、別の遺体の写真(おそらくひどい暴行を受けてズタボロになった遺体)を並べ、「検察官の主張するような暴行が実際にあったのなら遺体はここまで無残な状態になっているはず。本件被害者の遺体はそこまで外見的な傷はないのだから、被告が暴行を加えたという検察官の主張は信用できない」と主張する意図があったのでしょう
が、遺体の写真を見せられる裁判員はたまったものではありません
法廷戦術とはいえ、もう少し考慮してもらいたいものです

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