いじめ対応に市長が積極介入
旭川市でいじめをうけた女子中学生が家出をし、凍死状態で発見される事件がありました。が、まだ事実関係の解明は第三者委員会に託されたままで、結論は出ていません
旭川教育委員会は第三者委員会メンバーに加害者たちと知己関係にある人物を紛れ込ませ、調査結果を歪めようと画策していた、と暴露され轟々たる批判を浴びています。とことん隠蔽を図り、教育委員会も現場の教師も責任を負うことなく事態を闇に葬りたいのでしょう
さて、ヤフーニュースのサイトに内田良名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授の書いた記事が掲載されており、自治体によるいじめ対応の事例が紹介されているので取り上げます
これまでにも繰り返し述べてきたところですが、学校行政は教育委員会の所管となり市長や町長、あるいは県知事も直接教育現場に介入できない仕組みになっています。戦前、教育現場に政治や軍が介入した例を反省し、学校教育の独立性を担保する狙いで教育委員会制度を導入したわけです。しかし、今では教育委員会がいじめや教員による体罰、わいせつ行為を隠蔽しており、教育を歪める張本人と化しているのが実態です
寝屋川市はこうした縦割り行政を打破し、市長の手が直接、教育現場に届くよう仕組みを改めたと紹介されています
いじめ対応 教育的アプローチの「限界」 いじめ加害者の出席停止の勧告等、市長による積極介入から考える
■市長部局が駆けつける
寝屋川すごい!
今年の10月4日、いじめ対応について「寝屋川すごい!」とつぶやいたツイートが拡散し、約1万件のリツイート、2.7万件の「いいね」の反応があった。小学一年生が、寝屋川市に設置されている「監察課」にいじめ相談の手紙を送ったところ、数日後には監察課から2名の職員が学校にやってきて、迅速に対応してくれたという。
寝屋川市は、2019年10月に市の危機管理部に、「いじめの初期段階から被害者・加害者・保護者・教員などに関与し、いじめの早期解決」を図るための部署として「監察課」を設け、いじめ事案への介入に積極的に取り組んでいる(監察課ウェブページ)。市立小中学校の子供には、監察課への手紙付きの「いじめ通報促進チラシ」を毎月配布して、広報にも努めてきた。
チラシの利用などによる監察課への直接の通報は、2020年度が69件、今年度(11月末時点)が91件で、いずれも監察課が調査・対応にあたっている。その成果の一つが、「寝屋川すごい!」のケースであった。
市長権限の強化と明示
監察課のウェブページには、「監察課は必ず解決します!」「攻めの情報収集、いじめの抑止」といった文言が並び、市側の強気の姿勢が伝わってくる。
この姿勢を支えるべく、市には「寝屋川市子どもたちをいじめから守るための条例」が制定(2020年1月施行)されている。いじめ防止に特化した条例が近年各自治体で整備されつつある(制定済みの自治体と各条例の概要はこちら)なかで、寝屋川市の条例の類を見ない特徴は、市長の権限がとりわけ強化されている点である。
条例の第11条では、市長(の直轄の部署)が、子供やその保護者あるいは学校などに対して直接に調査をおこなうことが可能とされている。
第13条には、さらに踏み込んだ内容が記されている。すなわち、いじめ加害者の「出席停止」やあるいは「学級替え」を、市長は学校やその他関係機関に「勧告」できるという。市長が学校の具体的な活動にまで介入できるよう、法令が整備されている。
旭川女子中学生凍死事件 いじめ認知に「極めて後ろ向き」
寝屋川市の取り組みを追随しようとしているのが旭川市だ。
旭川市では今年3月、市内の公園で中学2年の廣瀬爽彩さんが凍死するという事件が起きた。背景にいじめがあったとされ、文春オンラインが4月から6月にかけて計20本を超える詳細な記事「旭川14歳少女イジメ凍死事件」を発表し、社会に衝撃が走った。
この事案では、爽彩さんが中学校入学後すぐの6月に同じ中学校の生徒ら10人に囲まれるなか自殺を図ろうと川に飛び込んで警察が駆けつけたり、爽彩さんのわいせつ画像・動画が拡散されたりと、いじめや犯罪とよぶべき出来事が確認されている。
ところが、学校がそれをいじめと認知することはなかった。11月のNHK「クローズアップ現代+」も「旭川女子中学生凍死事件~それでも『いじめはない』というのか~」と題し、いじめの認知に「極めて後ろ向きな教育現場」と批判的に報じている。
積極介入を求める声
旭川市教育委員会は、今年の5月に第三者調査委員会を設置した。いまも調査がつづけられている。
結論はまだ出ていないものの、それを待たずして10月に定例市議会で、今津寛介市長が「いじめと認識している」と公に述べて、注目を集めた(10月29日、北海道新聞)。今津市長は、いじめへの積極介入の姿勢を示しており、いじめに対応する市長直轄の部署を2023年度に創設することを目指している。学校への「勧告」などを可能にする条例の制定も検討している(12月24日、NHK)。
(以下、略)
究極的には教育委員会制度そのものを解体し、教育行政のあり方を変えるべきだと考えます
市議会や県議会が教育行政への監査を実施し、教育現場の問題を議論できるよう変えていかなければなりません
旭川市のいじめ事件は誰がどう見ても陰湿ないじめが繰り返されたのであり、刑事事件として扱うべき事案なわけですが、それでも問題の中学校長は「いじめはなかった」と繰り返し主張しています。もはや校長失格でしょう
旭川市教育委員会も「いじめはなかった」と言い張り、生徒と家庭の問題だと主張しています
こんな状態で教育委員会に対応を委ねるのは大間違いです。事態の解明と対応は教育委員会ではなく、旭川市市長が命じたチームによって実施させるのがベターでしょう
これに対し、旭川市教育委員会は「政治による教育現場への不当な介入だ」と、北海道教育委員会に泣きつくのかもしれません
まあ、行政権限を巡る言い争いは裁判に委ねるとして、教育現場でのいじめや性犯罪に教育委員会では対処できないのは明らかであり、組織と権限の見直しは不可欠です
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