岐阜の老人施設で5人死傷 初公判で犯行否認

岐阜県高山市の老人介護施設「それいゆ」に入所していた高齢者が相次いで3人死亡し、2人が重傷を負った件は、施設側が事故や病気が原因であり事件性はないと否定していました
しかし、5人の入所者の介護に関わっていた施設職員小鳥剛被告が逮捕、起訴されました
目撃者のいない施設内での事件であり、検察がどのように小鳥被告の犯行であると立証するのか注目されます
初公判の模様を報じた岐阜新聞の記事から引用します
小鳥被告は上記のように、3人の死亡と2人の負傷に関わっている可能性があるわけですが、検察は1人への致死傷罪と1への傷害罪で起訴しています


起訴から2年以上という異例の長期に及んだ公判前整理手続きを経て2日、岐阜地裁で始まった岐阜県高山市の介護老人保健施設「それいゆ」元職員の男性被告(36)の裁判員裁判。弁護側は一貫して事件性を否定して無罪を主張し、検察側と対立。一方、検察側は司法解剖の結果から「事件性」を示し、犯行が可能だった人物を絞り込むことで被告の犯行だとあぶり出す主張を展開した。
「胸部に相当強い圧迫があった。体重を掛けるくらいの大きな力が必要」。司法解剖を担当した男性解剖医は検察側の証人として出廷し、事件性があると繰り返し主張した。
被告が傷害致死の罪に問われている女性A=当時(87)=の死因について、胸部を前から少なくとも3回、強く圧迫したことで折れたろっ骨が肺に刺さり、右肺には直径約3センチもの穴が開いていたことを詳述。「拳やボールのような鈍体が骨折部位に作用した。損傷は病気では生じない」。何者かが殴った可能性があると指摘した。
被告が傷害罪に問われた女性B=当時(91)=の胸部のけがも含め、「年相応に(2人の)骨はもろくなっていたが、移動や入浴などの負荷では骨折しない程度の弾力は維持していた」と、骨粗しょう症だったとする弁護側の主張を全面的に否定した。
検察側は、暴行したのが被告だったとする「犯人性」については、施設の建物構造や立地から第三者が侵入して犯行に及んだ可能性を打ち消すと、複数の職員の証言などから犯行可能な時間帯を特定した。さらに、防犯カメラの映像解析や職員の勤務シフトから、居室で被害者と二人きりになれた人物を絞り込む中で、犯人を被告と断定する主張を組み立てた。
この日は女性Bの遺族らが傍聴に訪れ、女性Aの長男もニュースで被告の無罪主張を知った。長男は「否認するのは分かっていたこと。本当のことを話してほしい」と願った。
◆弁護側 骨粗しょう症、介護で負荷
逮捕直後から一貫して容疑を否認し続けてきた被告は、黒のスーツに紺のネクタイ姿で入廷すると、弁護士に会釈し、ちらりと傍聴席に目を向けた。はっきりとした口調で起訴内容を否認。起訴状を朗読する検察官を真っすぐに見据え、証人尋問では熱心にメモを取るなど終始、落ち着き払った様子だった。
弁護側は冒頭陳述で、被害者2人の死傷について「決して暴行によるものではない」と事件性を否定。「2人は骨粗しょう症だった」とすることを根拠に、事故だと強調した。
移動の際、要介護度の高い女性Aは二人がかりで介助する必要があった。女性Bは1人でできたが、車いすに乗せるために体を持ち上げる必要があった。弁護側は食堂や浴場への行き来が繰り返されることにより、もろくなった上半身の骨に負荷が掛かり続けて起きた「不幸な事故だった」と主張した。
犯人性についても明確に否定。検察側は、暴行の類似性から2件は同一犯だと断定し、状況証拠を積み上げて犯行可能な人物を被告に絞り込んだが、「犯行時間を限定し、他の職員の証言をそのまま受け入れている」と問題視した。
また、被告は「介護職に向いているとすら思っていた」とも主張。検察側が冒頭陳述で示した女性Aに暴行したとする「1分足らず」の間は、あおむけになれない女性Aが寝やすいように「タオルケットをかけていた」とし、女性Bに暴行したとする「3分弱」の間は「おむつ交換をしていた」と説明した。
(岐阜新聞の記事から引用)


死亡した入所者の遺族にすれば何とも納得がいかない裁判でしょう。3人殺害で2人に重傷を負わせたとして有罪なら死刑判決が下されるところです
しかし、上記のように立証困難な2人の死亡と1人の負傷については起訴せず、見送っています。よって小鳥被告にはどれだけ見積もっても、有期刑を求刑するしかないのであり、懲役15年くらいでしょうか?
前回取り上げた川崎市の老人介護施設の事件では、3人の高齢者をベランダから落下させて殺害した今井隼人被告に1審で死刑判決が下されています。小鳥被告の場合は今井被告と比べても悪質(2人への傷害があるので)であるのは確かです。しかし、起訴されない犯行では裁きようもありませんので、小鳥被告はまんまと死刑を免れるわけです

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