未解決 つくば高齢者夫婦殺害事件を考える

毎年、年末になると未解決事件を掘り起こす記事を新聞が掲載します。いつもなら世田谷一家殺害事件を取り上げるのですが、今年はつくば高齢者夫婦殺害事件について考えます
2017年12月、人家から離れた林の中に建つ小林孝一さん宅に賊が侵入し、小林さん夫妻を鈍器で撲殺し逃走した事件であり、金品は盗まれていなかったといわれます。周囲に民家はないのですから、物取りの犯行なら小林さん夫妻を殺害した後、屋内を物色して盗みができたはずです
となれば、盗む目的ではなく殺害こそ、犯人の狙いだった可能性が考えられます
以下、産経新聞の記事から引用します


研究学園都市として知られる茨城県つくば市。整備された街路樹や新しい建物が街の開発を物語る。だが少し外れると田園風景が広がる。小林孝一さん=当時(77)=と妻の揚子(ようこ)さん=同(67)=が殺害された住宅はそうした場所にある。現在は空き家となり、取り残されたようにポツンとたたずむ。正月に発覚した事件からまもなく4年。解決の糸口を求め、県警や遺族は目撃情報の提供を呼びかけ続ける。
恨みによる犯行か
平成30年1月1日。新年のあいさつに来た次女が見つけたのは、顔を鈍器で殴られ血だまりに浮かぶ夫婦の姿だった。前年12月30日午後7時半ごろにスーパーから車で帰宅した夫婦の会話がドライブレコーダーに残されていたことと、31日午前7時ごろに訪ねてきた友人への応答がなかったことから、県警はこの約12時間に殺害されたとみている。
現場に目立った物色の跡がなく、夫婦が繰り返し殴られて殺害されていたことから、県警は怨恨(えんこん)による犯行を有力視した。当時の捜査幹部は「特に揚子さんは過去にカラオケ居酒屋で働いており顔が広く、交友関係の洗い出しは時間がかかった」と振り返る。だが、殺人につながるようなトラブルは見つからず、面識がない「流し」や強盗などの可能性も含め捜査が続く。
「若いとまでは言えないが、機敏に動ける人物の可能性は高い」。ある捜査関係者はこうもらす。夫婦の自宅は玄関が施錠されており、1階の窓は格子がはめられている中、血痕が残っていた無施錠の2階ベランダの窓から逃走したとみられるためだ。高所から逃げる力のある人物は犯人像の一つとなっている。
遺族への視線
取材に応じた小林さんの長男、照幸さん(50)は、怨恨による犯行の可能性を指摘する。照幸さんが警察署で対面した父の遺体は目の横が切れ、鼻が潰れていた。揚子さんも執拗(しつよう)に殴られていたという。
遺体を見た照幸さんは「豪邸でもないあの家を見てお金があると思う人はいない」と話し、飲食業などを通じて幅広い交友関係を持つ夫婦を恨む人物がどこかにいるとみる。
一方、事件をめぐっては当初、照幸さんが周囲から「犯人視」された一面もあった。事件後にコンビニであった友人から冗談交じりで「お前が犯人だろ?」などといわれることもしばしばだった。警察からも捜査の一環として、携帯電話のデータを残すよう言われ、事件前後の行動についても連日聞かれた。
「捜査には必要だから仕方ない。おやじのことは同じ男として尊敬していた。もちろん犯人ではない」。犯人が分からない未解決事件の遺族は、こうした「視線」を経験することが少なからずあるといわれる。
事件解決に協力するため、照幸さんは今年1月に最大100万円を支払う私的懸賞金を実施。「自分たちにできることはやらなければ」と話す。「酔っぱらったときにポロッと『人を殺したことがある』とか、そういう誰かのつぶやきを聞いた人もいるかもしれない。懸賞金目当てでもいい。どんな情報でもほしい」と呼びかける。
現場は林に囲まれ周囲の住宅も少ない。今年12月25日の夜には、空き家となった小林さん方が一部焼けるボヤも起きた。関係者によると、油分などをまかれた様子はないが、電気などは止まっており、放火の可能性もあるという。
当時の捜査幹部は「現場前の道路は地元の抜け道のようで、事件後に検問を行った際も交通量はそこそこあった」と振り返る。「4年前の年の瀬、あの道を通っていないか、そして不審な車や人物を見ていないか、もう一度思い出してほしい」と力を込めた。
(産経新聞の記事から引用)


この事件で思い浮かぶのが、2019年9月茨城県境町のぽつんと一軒家に暮らす小林光則さん夫婦が殺害され、岡庭由征被告が逮捕された事件です。どちらも隣家のないぽつんと一軒家であり、状況が似ています
しかし、岡庭被告は女子児童と女子中学生を刺した事件でその時期は医療少年院に収容されていました。医療少年院を出た日がはっきりしないのですが、少年院送致決定では「23歳まで収容する」となっており、岡庭被告の誕生日から計算すると2017年12月15日には出院したものと推測されます。が、収容継続の手続きを取れば23歳を超えて収容できるわけで(2017年12月以降に出院したとも考えられるので)、23歳の誕生日前に出院したのかどうか、明確ではありません
さらに、医療少年院を出たら実家に帰るものと思われる方もいるでしょうが、保護者が引き受けを拒否する場合も少なくありません。その場合は更生保護団体に一時的に身を寄せます。岡庭被告の場合、どうであったのか分かりません
ただ、12月15日に医療少年院を出たとしても、12月31日に事件を起こすのは無理があるように思えます。周囲に人家のない小林さん宅に狙いをつけ、下見をし、凶器を準備して侵入するのに2週間では足りないのでは?
警察も当然、岡庭被告の当時の行動がどうであったのか、調べたはずです。現時点で、岡庭被告をつくば高齢者夫婦殺害容疑で再逮捕には至っていないのですから、シロだと思われます
ただ、この事件ではおそらくハンマーのような鈍器が凶器に使われたと考えられます。強盗犯にしろ、殺人犯にしろ、ハンマーを凶器として選択するケースは多くありません。一撃で相手を抵抗を封じ、殺害するのなら刃物で刺す方を選択するはずです。ハンマーだと相手を殴打し損ねたり、奪い取られて逆襲されるリスクもあります
それでも敢えてハンマーを凶器として選んだのなら、夫妻を殺害するのに刺殺ではなくハンマーで繰り返し殴打し、叩きのめしたいとの思いがあったのかもしれません。が、世の中には岡庭被告のように「人を殺したくて殺す」という、異常者もいるのであり、必ずしも怨恨による殺人と決めつけるわけにはいかないのです

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