空港トイレで出産殺害の女子大生 懲役5年判決
世の中には何とも痛ましい事件があります。金銭目的の強盗とか性欲を満たすための性犯罪などは動機も明確で、意図もはっきりしており、ある意味わかりやすい事件です
逆に、動機も意図も判然とせず、成り行き任せとも言える犯行はわかりにくいものです
2019年11月、羽田空港のトイレで出産した乳児の首を絞めて殺害し、公園に埋めたとして殺人と死体遺棄の罪に問われたのが北井小由里被告(24)です。女子大生が妊娠し、空港のトイレで出産…という、世のオヤジたちが眉をひそめて説教したくなる事件でした
その北井被告に東京地裁は懲役5年の判決(求刑は懲役7年)を言い渡した件を取り上げます
就活女子大生、乳児殺害遺棄に懲役5年 法廷で明かされた“ジャニーズオタク”と“性の悩み”
被告は取り乱すこともなく、冷静な表情で判決を聞いていたという。2019年11月、出産したばかりの乳児の首を絞めて公園に埋めたとして、殺人と死体遺棄の罪に問われた北井小由里被告(24)に、東京地裁は24日、懲役5年の実刑判決を言い渡した。風俗店でアルバイトをしていたという北井被告の奔放な大学生活にも注目が集まった今回の裁判員裁判。鼻の整形費用に数十万もの大金をつぎ込み、ジャニーズの追っかけに夢中になっていたという被告の“素顔”とは――。
(中略)
殺害後にアップルパイ
法廷では、犯行時の詳細な行動が再現された。北井被告は、トイレットペーパー「3巻分」をちぎって3回、赤ちゃんの口に突っ込み、さらに首を絞めて殺害。遺体を持ったまま空港内のカフェに入り、アップルパイとチョコレートスムージーを頼み、写真まで撮っていた。その後、予約していたホテルにチェックイン。スマートフォンで検索して見つけたイタリア公園に向かっていた。
「パニックになって頭が真っ白になった」。被告人質問で犯行動機についてこう答えた北井被告。彼女がもっとも気にかけていたのは、翌日に控えていた航空関連会社の面接試験だった。
「一人では子供を育てていく経済的な余裕がない。就職活動の邪魔になると思った」
だが、北井被告が風俗で得た高額な報酬で奔放に暮らしていたことも法廷で明らかにされた。裁判を傍聴し続けてきた記者が語る。
「彼女が通っていたのは地元の芦屋大学です。大学進学後まもなく風俗の仕事を始め、稼ぎは月に10万円から30万円くらい。友達と一緒にジャニーズの追っかけをしたり、約54万円かかった鼻を小さくする整形手術などに使っていた。事件後に約15万円の二重まぶたの整形手術を受けた領収書も検察側から証拠として出されましたが、なぜかこの手術については否定。風俗の仕事は、出産3カ月前の19年8月に辞めています」
「北井被告の話には不可解な点が多かった。妊娠中には、お腹を蹴る子供がかわいいと思っていて、名前まで考えていたとも語っていたのです。裁判官から『自首を考えなかったのか』と問われ、『自首ってなんですか』と問い返し、『そんな制度があるなんて知らなかった』と答えた場面もありました」(同前)
空白だらけのエントリーシート
弁護側は最終弁論で、北井被告が就職活動で企業に提出したエントリーシートを取り上げた。名前と経歴だけが書かれ、自己PRと志望動機の欄が空白になっているお粗末なものだ。結局、遺棄翌日に受けたという空港内のホールスタッフのほか、大手航空会社子会社の空港グランドスタッフなど、片っ端から航空関連企業を受けたがすべて不採用で、地元の衣料品店でアルバイトをしていたという。
「弁護人は、このエントリーシートをもとに、彼女は知的能力が低く、周囲に相談する相手も少なかったと情状酌量を訴え、執行猶予付きの判決を求めた。一方、検察側は、『自己中心的で極めて身勝手な動機』として、懲役7年を求刑していた」(前出・記者)
判決で裁判長は「強い殺意に基づく執拗かつ惨たらしい犯行」「身勝手で短絡的な動機」と指摘し、5年の実刑判決を言い渡した。
最終意見陳述では涙を拭いながら「赤ちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱいです」と述べていた北井被告だったが、判決公判では、無表情でじっと裁判長の話に耳を傾けていたという。
尊い命を救えなかったことが悔やまれてならない。
(デイリー新潮の記事から引用)
大学在学中から性風俗店に勤務し、整形手術をし、ジャニーズの追っかけをするという、世のオヤジたちが思い描く「軽薄な女子大生」の姿です
が、公判で明かされたのは北井被告が知能指数(IQ)が74という「境界知能」級だという事実です。70以下なら「知的障害者」と判定されるレベルであり、相当低いといえます
上記の記事の中でも北井被告が「自首」という制度を知らなかった、というエピソードが書かれています。「境界知能」だと中学校での授業にはついていけない状態であり、北井被告が高校や大学に進学しているのも信じられないところです。漢字の読み書きは訓練によってある程度こなせるようにはなるでしょうが、単純な四則演算も難しく、もちろん分数計算の概念は理解できないでしょう
一般には中学生くらいで集団式知能検査を受けるはずですから、その段階で北井被告が「境界知能」であると判明していたはずです。親はそれを受け入れられなかったのかもしれません。「うちの子はやればできる子なんです」とか言って。親からすれば、こどもが特別支援学級に入るのは世間体が悪く、反対する人も少なくないのですが、能力に応じた教育を受ける機会を逃すのは本人のためになりません。親の見栄のため、適切な教育や訓練を受けられないまま卒業してしまうと、本人が実社会で苦労するわけです
就職のためのエントリーシートが空白だらけ、というのも理解できます。自分のアピールポイントを具体的に書くよう求められても、何をどう記入すればよいかわからないのですから
ただ、今の私立大学の就職活動のサポートには力を入れていますので、キャリアカウンセラーとかがエントリーシートの記入の仕方や面接でも対応の仕方など、細かく指導しているのでは?
北井被告が大学の提供する就職活動支援を理解できず、相談もしていなかった可能性もありますが
少子化の時代を迎え、進学を希望すれば定員割れの不人気な高校なら入学試験で名前を書くだけで合格できますし、Fランク大学のように入学金と授業料を納付すれば通えるところもあります。ただ、授業についていけるかどうかは別です
軽度の知的障害のある人の特徴として、周囲に同調し行動を真似ることで仲間になり、付き合いを維持する傾向が見られます。北井被告がジャニーズのおっかけをしていたのも、同調できる仲間がいたからなのでしょう。ジャニオタになれば、多少おバカな行動があっても皆から仲間として扱ってもらえるわけですし、そこに所属していられる安心感があります
「境界知能」というレッテルを貼るのはよくないという意見、差別だという意見はありますが、本人も親も知的能力に問題があると早くから認識した上で、知的水準に合った教育や訓練を受けていたなら、このような結果にはならなかったのではないか、という気がします
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