ヒステリックブルーのナオキ 懲役1年6月の求刑

今年3月から始まった裁判が10月末、ようやく結審し、後は判決を待つだけとなりました。実に長い裁判です
検察は二階堂直樹被告に対し、懲役1年6月を求刑しています
これまで書いてきたように、検察は性犯罪で懲役12年の判決を受けて服役したにもかかわらず、再犯に至った二階堂被告を厳しく批判して強制わいせつ未遂罪の適用を主張してきました。二階堂被告は被害者の体を一瞬触っただけであり、県迷惑防止条例違反(いわゆる痴漢行為)として扱うべき事件だと反論してきました
求刑公判を朝日新聞は以下のように報じています。二階堂被告は被害者に恐怖を与えた点を認め猛省すると発言してはいますが、自身の犯行を終始、軽微なものであると言い張ったところに認知の歪みを感じてしまいます。被害者女性もそうした二階堂被告の態度に憤慨したのか、示談には応じたものの、「厳しい処罰を求める」との意見を寄せていました


女性の胸を触ろうとしたとして強制わいせつ未遂の罪に問われた、ロックグループ「ヒステリックブルー」(解散)の元ギタリスト二階堂直樹被告(42)=甲府市=の公判が25日、さいたま地裁(任介辰哉裁判官)であり、検察側が懲役1年6カ月を求刑し、結審した。判決は11月24日に言い渡される予定。
起訴状などによると、二階堂被告は昨年7月6日午前2時10分ごろ、埼玉県朝霞市内の路上を歩いていた20代女性に背後から近づき、左手で口をふさぎ、服の上から胸を触ろうとしたとされる。抵抗され、未遂に終わったという。
検察側は論告で「相当な力で口を塞ぎ、被害者が助けを呼ぶことや抵抗することを困難にした」とし、「性的刺激や満足を得ようとしたことは明白」などと主張した。
弁護側は、「女性の胸に一瞬だけ触る意図しかなかった」とし、強制わいせつ罪の要件には当てはまらず、「県迷惑防止条例違反の適用にとどまる」と主張した。また、強制わいせつ未遂罪に該当したとしても、執行猶予判決が妥当だとした。
紺のスーツ姿の二階堂被告は公判の最後に証言台に立ち、「被害者の方に深い恐怖を与えたことを猛省しております。二度と犯罪に関わらないで生きていきたい」と述べ、頭を下げた。
(朝日新聞の記事から引用)


以前にも書いたように、深夜、路上で背後から男に口をふさがれれば、そのまま拉致されてレイプされるのではないかと女性なら考えるでしょう
二階堂被告は「深い恐怖を与えた」と理解し反省すると言いながら、犯行は「痴漢程度のもの」だと主張し続けているわけで、どうにもちぐはぐな印象を受けます。一見、物分りが良さそうに見えて、実は歪んだ受け止め方しかしていない、と言わざるを得ません
さて、ここで二階堂直樹被告が山形刑務所に服役していた当時の手記から、一部を引用します。月刊誌「創」に掲載されたものからの抜粋です


元ヒステリックブルーのナオキが出所を前に獄中12年の心情と事件の真相を手記に綴った
(前略)
山形刑務所では毎年4月に「観桜会」が実施される。もっとも、その名称ほど大仰なものではなく、運動場の片隅に数本生えている桜の木の下にブルーシートを広げ生菓子を喫食するという10分15分の行事だ。
冬の間ずっと不機嫌だった太陽がようやく顔を出した昨年の観桜会。春風にあおられた花びらが小躍りする様を眺めながら、「交談禁止」のため黙々とプレミアムスイーツ『ふんわりワッフル(4ケ入り)』を食していた。脳内再生されていたBGMはオリビア・ニュートンジョンである。その瞬間、私は確実に小さな幸せを噛み締めていた。生クリームとともに。
税金で犯罪者にそんな贅沢させるなという意見もあるだろう。しかし、単調な生活を送る毎日にあって、このような行事が受刑者に与える心理的影響は決して小さくない。幸せを感じると同時に、改めて気付かされるのである。
――ああ、幸せだ。社会からは忌み嫌われるべき存在でしかない犯罪者のオレが、こうして美味しいお菓子を食べさせてもらいながら桜を眺め幸せを感じている。でも、オレの被害者の人たちは事件以降こんな幸せさえ感じることができなくなってしまったのかもしれない。彼女たちは事件の傷とどう向き合い、どう乗り越え、あるいは乗り越えられず今も苦しんでいるのだろうか。本当に、本当に申し訳のない、取り返しのつかないことをしてしまった……。
2004年3月4日、私は建造物侵入及び強制わいせつ容疑で逮捕された。事案は、マンション内の共用廊下に立ち入り、その場で女性にわいせつ行為をしたというもの。その後、余罪を自供し、強姦1名を含む計9名に対するわいせつ・強姦事件で06年6月に実刑判決が確定した。
〈そのような事を行うのは、人間の行い得る犯罪の中で最も醜悪で下等で、残酷な犯罪だと、自分はいまでは思っています。〉(太宰治『人間失格』新潮文庫)
逮捕から12年、受刑者としてはちょうど10年の節目を迎える。償いとは何か。被害者の方々に罪を償うにはどうすればよいのか。それをずっと考えてきた。……いや、ちょっと待てよ。その問いの背景には、何らかの方法によって償うことができるとの前提が隠れているのではないか。「償える」と思うことが被害者の苦しみを過小評価した加害者側の傲慢さの表れではないのか。そもそも、加害者(しかも性犯罪)が被害者に対し償うこと自体可能なのか。答えは否である。たとえ死んでお詫びしたところで被害者の傷が癒えるわけでもない。ならば私は償うことさえ叶わない大きな罪を犯したのだという自覚を持ち、一生それを背負って生き続けなければならないのだ。
懲役刑に服するということはあくまで社会治安を乱したことに対する国家への償いでしかなく、むしろ服役を終え自由を手にした後こそが真の償いの始まりである。自分の被害者に対して償えないのであれば誰に対して償うのか。まずは「未来の被害者」なのだと思う。今はまだ被害に遭っていないが将来何らかの事件に巻き込まれるかも知れない存在。つまり私自身が再犯に至らないことを大前提として、その上でなお、新たな犯罪を防ぐことができないだろうか。


「自分自身が再犯に至らないようにする」との自戒の念を手記の中で表明していた二階堂被告ですが、その自覚はどこへ消えてしまったのか?
裁判の中で、「犯行は痴漢行為の未遂だから、(性犯罪の)再犯ではない」と詭弁を弄んでいるだけと映ってしまいます

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