韓国ロケット打ち上げ 衛星の軌道投入失敗

かねてから注目していた韓国の純国産ロケット(エンジンの設計図はウクライナから購入したものですが)の発射実験が今夕行われ、打ち上げには成功したものの、模擬衛星を所定の軌道に投入できず失敗に終わっています
打ち上げ成功を祝う中央日報の記事から、以下引用します。この記事(予定稿として準備されていたのでしょう)を掲載した時点では、まだ模擬衛星が軌道に投入できたかどうか判別できなかったので、手放しの喜びようとなっています


宇宙ロケット独立の日だ。21日午後5時、全羅南道(チョンラナムド)の高興(コフン)半島先端にある羅老(ナロ)宇宙センターで韓国科学技術の自尊心がわき上がった。15度と寒い天気の中、打ち上げ場には火炎が作り出した巨大な綿雲が広がり始めた。2010年から10年余り純国産技術で開発してきた韓国型ロケット(KSLV-2)ヌリ号が打ち上げられ、地球上空700キロメートルの軌道に到達するのに成功した。これで韓国は世界で10番目にロケット打ち上げに成功した。
ヌリ号は当初午後4時に打ち上げ予定だったが、打ち上げ台下部システムとバルブ点検に時間がかかり、1時間遅い午後5時に打ち上げられた。ヌリ号は離陸後127秒で高度59キロメートルに到達し1段目を分離した。離陸233秒後には高度191キロメートルに達し3段目の末端にあるフェアリングを分離した。フェアリングはヌリ号の先端に搭載している人工衛星を保護する一種のカバーだ。ヌリ号の場合、開発後初の打ち上げだけに正式な人工衛星ではなくダミー衛星を載せた。ヌリ号は打ち上げ274秒後に高度258キロメートルに達して2段目も分離した。すぐに3段目が火を噴いた。打ち上げ967秒が過ぎ3段目のロケットが目標高度の700キロメートルに到達し、重さ1.5トンのダミー衛星を分離して軌道に乗せるのに成功した。
ヌリ号の打ち上げ成功は韓国が世界10大宇宙ロケット技術保有国になったことを意味する。これに先立ち2013年に最初の韓国型ロケット(LSLV-1)ナロ号が打ち上げられたが、実際には半分の成功だった。当時韓国政府は「自国の打ち上げ場で自国のロケットで自国の人工衛星を軌道に乗せた国になった」と自慢したが、ナロ号の1段目のロケットはロシア製の「完成品」だった。2段目もやはり液体ではなく固体ロケットを使った。
宇宙ロケット技術は代表的安保技術で国同士の技術移転は厳しく制限された分野だ。宇宙ロケット技術と戦略兵器であるミサイル、特に大陸間弾道ミサイル(ICBM)技術は大きく変わらないためだ。米国とロシアなど宇宙ロケット技術をすでに確保した国の大学と研究所では外国国籍者がロケット開発技術に近づけないよう遮断している。現在世界的に宇宙ロケットの自力打ち上げ能力を備えた国は米国、ロシア、中国、フランス、インド、日本、イスラエル、イラン、北朝鮮の9カ国だけだ。この中でも重さ1トン以上の実用人工衛星を打ち上げられる国は6カ国だけだ。イスラエルとイラン、北朝鮮は300キログラム以下の衛星打ち上げ能力だけ保有している。
ヌリ号は長さが15階建てビルの高さに相当する47.2メートルに達する。総重量も200トンに達する。1段目はケロシンを燃料に、液体酸素を酸化剤に使う推進力75トンの液体ロケットエンジン4基を備える。2段目には75トンエンジン1基を、3段目には7トンの液体エンジンを装備した。1.5トン級実用衛星を地球上空600~800キロメートルの低軌道に乗せられる。ヌリ号は来年5月に2度目の打ち上げをした後、2027年まで4回の追加打ち上げを通じて性能を確認する予定だ。2010年3月から来年10月まで続くヌリ号開発には総額1兆9572億ウォンの予算が投入された。
ヌリ号が成功するまでには「蓄積の時間」があった。1989年の韓国航空宇宙研究院設立後、1993年に開発した1段型固体科学ロケットのKSR-1がその始まりだ。その後1998年に2段型固体科学ロケットのKSR-2、2003年に液体推進科学ロケットのKSR-3と続いた。
2002年からは100キログラムの小型衛星を地球軌道に実際に打ち上げられる韓国型ロケット(KSLV-1)のナロ号プロジェクトが始まった。ナロ号は2009年をはじめ3回打ち上げられたが、最初と2回目は失敗し、3回目の挑戦で成功できた。2009年8月の最初の打ち上げ時は離陸には成功したが、搭載した科学技術衛星2号を保護するフェアリングの一方が分離せず目標軌道への進入に失敗した。2010年6月の2回目の打ち上げ時は離陸137秒後に空中爆発した。ナロ号はこうした過程を経て2013年1月31日午後3時45分に3回目の打ち上げで宇宙に行くのに成功した。
韓国航空宇宙研究院はヌリ号とは別に韓国型ロケット高度化事業に対する準備も進めている。ヌリ号よりも重い搭載物を宇宙軌道に上げることができ、月探査ができる水準のロケットを開発するという目標だ。昨年推進力75トンのヌリ号エンジンを改良し82トンに増やし、最大2.8トンまで搭載できるようにする内容の韓国型ロケット高度化事業計画書を提出したが、8月の予備妥当性調査で「挑戦性と革新性が不足する」という理由で脱落している。
(中央日報の記事から引用)


これまでにも書いてきたように、ロケットエンジンはウクライナから設計図を入手した推力30トンのエンジンがベースです。これを大型化して推力75トンにパワーアップし、4基を搭載して300トンの推力を得られるように改良したのは韓国の技術です
今回の打ち上げで格段のロケットエンジンは予定された通り燃焼したのですから、素直に称賛しましょう
では、なぜ模擬衛星を所定の軌道に投入できなかったのか、は不明のままです。これを解明し、改善しないと人工衛星の打ち上げはできないわけです
来年5月に次の打ち上げを予定していると報じられていますが、それまでに問題を解決できるのかどうか?
そしてナロ号の課題はより大型で重い人工衛星を打ち上げられるようにすることです。例えば日本が運用している気象衛星は静止軌道上(地球から3万6000キロの位置)にあり、重さは約5トンです。ヌリ号が重さ2トンにも満たない人工衛星を700キロ上空に打ち上げるのがやっとですから、とても実用的とは言い難い性能です
日本の次期主力ロケットH3型ですと、地球上約400キロの軌道を回る国際宇宙ステーションへの輸送機(機体と貨物併せて最大重量14トン)の打ち上げを予定しており、その打ち上げ能力がナロ号とは段違いであるのがわかってもらえるでしょう
韓国を見下したり、くさす意図はありませんが、日本だけでなくアメリカも中国も大型ロケットの実用化をすすめているわけで、1.5トンの人工衛星打ち上げ能力では見劣りします。大型ロケットの開発で先行する国々に追いつくのは簡単ではなく、韓国が夢見るように「宇宙ビジネスに参入して大儲け」というわけにはいきません
現時点では国威発揚として国民の支持を得られているので予算も付けられますが、国民の熱が冷めてしまえば「無駄遣い」と糾弾されるでしょう
宇宙ビジネスで儲けられるようになるまであと10年から15年はかかりますし、数千億円の投資が必要です。韓国メディアの報道によれば、アジア諸国や中東諸国の商業衛星の打ち上げを毎年10基ほど受注し、1基のロケットで複数の商業衛星を軌道に投入して儲けるビジネスモデルを見込んでいるそうです

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