佐世保高1女子殺害事件を考える16 医療少年院で収容継続
世間を震撼させた佐世保での女子高生による同級生殺害から、もう7年になります、医療少年院に送致された加害者である女子高生も23歳になり、少年院での収容期限とされる年齢になりました
通常の少年院なら23歳の年齢に達したところで満期出院となるわけですが、医療少年院では継続して医療措置が必要とされる場合特例として26歳までの収容を認めると法律上規定されています。この場合、医療少年院から収容継続申請が家庭裁判所に提出され、家庭裁判所による審判によって収容の継続を決定する手続きになっています
しかし、加害者である元女子高生の弁護人は収容継続に反対しており、退院させるべきとして争っています。家庭裁判所は少年院側の申請通り収容継続を決定しましたので、弁護人は抗告(少年審判手続きでは抗告と言います。刑事裁判でいうところの控訴)しています
長崎県佐世保市で2014年7月、高校1年の女子生徒=当時(15)=を殺害し、医療(第3種)少年院に収容されている同級生の元少女(23)について、長崎家裁が異例の収容継続を認める決定をしていたことが14日、関係者への取材で分かった。少年院は23歳未満までだが、第3種は精神に著しい障害がある場合、26歳になるまで延長を認める規定がある。
収容先の少年院長は、元少女が今夏で23歳になるのを前に、収容継続を申請。家裁は審判を開き、8月24日、24年までの収容継続を認める決定を出した。元少女側は不服を申し立てて抗告したため、判断は福岡高裁に移る。
(共同通信の記事から引用)
医療少年院での治療がどこまで進んでいるのか、家庭裁判所での審判手続きの中で争点になったわけですが、審判自体非公開で進められますので表に出ることはないのでしょう。原則、元少女が収容継続のための審判に出廷し、自分で意見を述べることはなく、書面をもって自身の気持ちを裁判官に伝えるのが通常です。ただし、弁護人がついており、本人から直接意見聴取が必要と裁判官が判断するなら、出張審判もありえます。原決定を行った長崎家庭裁判所佐世保支部の裁判官が、収容先であるおそらくは京都医療少年院に出向き、臨時の審判廷を設けて審判をするというものです。収容継続を争う審判の場合、検察官は関与せず、出廷もしません(裁判官から特別に要請があれば出廷して意見を述べるケースはあるとしても)
弁護人は長期間の医療少年院収容で治療・矯正教育の目的を果たしたとの考えを述べ、今後は社会生活を送る中で適応を図るべき、と主張しているものと推測されます
ただ、そのための手立てがあるのかどうか、が問題です
23歳で退院するのか、26歳で退院するのかはともかく、いずれは医療少年院を出て社会に戻るのですから
父親は自殺し、父親の再婚相手だった義理の母親が引受るのでしょうか?
実兄は東京の私立大法学部に進学したと報じられましたが、卒業して就労しているとしても身元引受人になるには若すぎるでしょう
精神的な問題を抱える人達が暮らすグループホームのような場所に、一時的に居住させるという選択肢もありますが、誰かが彼女を見守る必要があります
十分な支援と監督ができるのかどうか?
もちろん、いつまでも施設に拘禁しておくのが正しい選択とは言えません
神戸連続児童殺傷事件の酒鬼薔薇聖斗も、世間からはいまだにバッシングを受け、憎悪の対象です。が、彼は自らカミングアウトした後も事件は起こさず、社会の片隅で暮らしています。いろいろ言われるものの、再犯に至らず暮らしているのであれば更生と見なさなければなりません
受け入れる、受け入れないの問題ではなく、受け入れざるを得ないというのが実際です
また、「彼女の内なる悩みに気づいてやれれば、彼女に声をかけてやれればこの事件は防げた」との意見もあるわけですが、リア充の見本みたいなお嬢さんが心の内に闇を抱えていたと気づく人は誰もいなかったのです。たとえ一言二言、声をかけたとしても彼女の殺人衝動を解消するなど不可能であり、これは「◯◯していたら」、「◯◯していれば」という後付けのタラレバでしかありません
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