未解決 上智大女子学生殺害事件(平成8年)

毎日さまざまな事件、事故、トラブルが発生しています。解決したり決着するものあれば、未解決のままという事件もあります。特に殺人事件の場合、犯人はこの世のどこかで平然と暮らしているのであり、遺族の無念はいかばかりかと思います
平成8年(1996年)の今日、9月9日に起きた東京・葛飾の上智大学に通う女子学生が殺害され、家に火が放たれた事件もいまだに解決しないままです。事件から25年ということもあり、各メディアが一斉にこの事件を振り返る記事を掲載しています


上智大生殺害事件から25年 「今ならば間違いなく逮捕できた」捜査員が嘆息
「八王子スーパー強盗殺人」(平成7年7月)、「世田谷一家4人強盗殺人」(平成12年12月)、そしてこの「柴又・上智大生殺人放火事件」を合わせて、平成の「三大コールド・ケース(未解決凶悪事件)」と巷では総称する。いずれも物証に乏しく、犯人像にすら遠く及ばない。それぞれ、600万円、2千万円、800万円の懸賞金が付き情報提供を呼びかけるも、犯人逮捕に結び付く新たな情報は、残念ながら皆無といってもいいだろう。
柴又の事件で殺害されたのは、上智大学外国語学部の4年生(21)だった。米国留学を2日後に控え、自宅で一人、荷造りをしていたところ、凶行に襲われた。粘着テープで口を塞がれ両手両足を縛られた遺体は、頸部右側に集中して数カ所の切創があった。凶器は残されていなかったが、傷痕の形状から、刃渡り8センチ程度の小型ナイフ(果物ナイフかペティナイフ)と特定されている。
遺留品は二つ
当時、取材した記者が、メモを片手にこう語る。
「両手には刃物傷が複数残されていました。これを防御痕(ぼうぎょこん)といい、つまり被害者はナイフで襲われた際、激しく抵抗したことがわかる。火は殺害後につけられ、被害者は下半身に火傷を負っていた。私が当時、引っかかったのは、犯人はどうして被害者が横たわる2階6畳間からもっとも離れた1階の和室に火を放ったかという点。証拠を消すための放火ならば、殺害現場に火をつけるはず」
遺留品は二つあった。一つは拘束に使用された布製ガムテープだ。静岡県内の工場において製造されたことまで判明しているが、全国に広く流通している商品で、犯人を絞り込める物証にはならなかった。大量物流時代の罪(ざい)、どこにでもある製品はもはや「犯人像」を語らない。以前は商品の流通範囲は小さく、偏っていた。たとえば「ゲソ(足跡)」の紋様から靴製品の製造工場、製造年を割り出し、販売店舗を絞り込み、地域から犯人を炙り出すという時代は終わったのである。
さて、もう一つの遺留品は「A型の血液」だった。「それは犯人逮捕の決め手になる物証ではないのか」と色めき立つ読者がいるやもしれないが、血液や体液、あるいは毛髪など、それだけでは捜査上何の役にも立ちはしない。DNA鑑定の上、同一人物だと判定される際には決定的な証拠となりえるが、その容疑者が不在とあってはまったくの無価値と言わざるをえない。
(中略)
捜査は当初から、怨恨説と行きずり説とに二分された。前出の元記者が解説する。
「が、被害者には暴行の跡もなく、現金も手付かず。同居家族も含め恨まれるような人たちではなかった。今ならばストーカーということになるのでしょうが、その線も早々に消えた。つまり動機すらわからない。犯人がどのような人物なのか、その像が皆目、浮かばなかったのです」
この事件ではいくつかの目撃情報が得られている。(1)出火直前、傘もささず柴又駅方向に走り去った20~30代の白いシャツの男、(2)午前中から現場付近をうろついていた中年の男、(3)昼ごろ、現場付近で使い捨てライターをいじっていた40歳前後の男……といった具合だが、冷静になって見つめ直せば、「よくある町の一コマ」にしか過ぎない。だが、「これが現在だったら」と嘆くのは、当時の捜査関係者だ。


記事のタイトル、「今ならば間違いなく逮捕できた」というのは、現代であれば街中の至るところに防犯カメラがあり、通りがかるだけでセンサーが反応し録画する仕組みであるため犯人の姿をとらえていたに違いない、との思いによるものです
女子学生が被害者、となれば男女交際のもつれが頭に浮かぶわけで、警察は被害者の友人・知人を徹底的に調べたのでしょう。それで容疑者が浮かばないのなら、流しによる犯行と疑います
たまたま1996年9月9日、被害者宅から主婦がパート勤めに行くため外出した(玄関に施錠せず)のを犯人が目撃し、侵入盗目的で入り込んだ…可能性です
留守だと思って侵入したら2階に被害者がいて鉢合わせなったのでしょうか?
しかし、被害者を紐と粘着テープでわざわざ拘束した後に、首を刺して殺害しているのですから、単純に窃盗狙いとは断定できません
ナイフで刺し殺害した後、1階の和室に放火して逃げたと考えられます。2階ではなく1階に火をつけたのは畳敷きの和室の方が燃えやすいと判断したためでしょう。1階で火が広がれば2階も焼け落ち、犯行の痕跡を消せる、との考えです
犯行に使われた凶器が刃渡り8センチほどの小型のナイフですから、最初から強盗殺人や強姦殺人狙いではなかったと推測できます。強姦狙いで脅すにしても、もう少し長目の刃物を使うのでは?
ただ、被害者の下半身が燃えていた、という記述はひっかかります。強姦の痕跡・精液が検出されないようにするため、下半身に灯油などかけて焼くケースは珍しくありません。被害者の下半身だけ焼けていたという表現だけでは状況が把握できません(住宅は放火により全焼していますので)
なお、上記の記事では触れていませんが、被害者の両脚を紐で縛った方法が「からげ結び」という特殊なやり方だと判明しています。「からげ結び」は造園業者が生け垣を組み上げる際に用いる方法で、他にも電気工事やトビ(足場組立)、着物の着付けで用いられるのだとか
可能性としては犯人は男性で、造園業やトビのような建築関係に従事した経験のある人物であり、職業経験のない学生は除外されると推測されます
なお、粘着テープは被害者宅にはないもので、犯人が持ち込んだと考えられ、3種類の犬の毛が付着していました
警察としては捜査上の秘密、と判断してこれ以上、現場の状況や遺体の状況を明かすつもりはないのでしょう
最近では10年以上の未解決事件でも思いがけず犯人逮捕に至るケースもあります。この事件も犯人が検挙され、解決に結びついてほしいものです

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