茨城一家殺害事件を考える 精神鑑定終え起訴

茨城県の民家に侵入し、小林さん夫妻を殺害した上にこどもたちまで殺害しようとした岡庭由征容疑者は鑑定留置を終え、水戸地検は起訴に踏み切りました。これから刑事被告人という身分になります
岡庭被告は目下のところ容疑を否認しているとされます。動機についても供述を拒否しているのでしょう。ただ、動機を語らないとしても無罪判決をえられる可能性は皆無であり、死刑を求刑される事案です


おととし茨城県境町の住宅で家族4人が殺傷された事件で、逮捕された26歳の容疑者の刑事責任能力を調べる精神鑑定が6日、終わりました。
検察は鑑定結果などをふまえて、今後、起訴するかどうか判断することにしています。
おととし9月、茨城県境町の住宅で会社員の小林光則さん(当時48)と妻でパート従業員の美和さん(当時50)が殺害され、長男と次女も重軽傷を負った事件では、ことし5月、埼玉県三郷市に住む無職、岡庭由征容疑者(26)が殺人や殺人未遂などの疑いで逮捕されました。
水戸地方検察庁は岡庭容疑者の刑事責任能力を調べるため、6月から専門家による精神鑑定を行っていましたが、3か月間にわたった鑑定は6日で終わり、昼前、容疑者の身柄が捜査本部が置かれている境警察署に移送されました。
警察は認否を明らかにしていませんが、捜査関係者によりますと、逮捕後の調べに対し容疑を否認しているということです。
検察は鑑定結果などをふまえて、今後、起訴するかどうか判断することにしています。
(NHKの記事から引用)


さて、岡庭被告の事件では各メディアがさまざまな報道を繰り広げており、当ブログでもその中からいくつか取り上げてきたところです
今回は「日刊SPA!」掲載の記事を取り上げます
少年院勤務を経験した者として、思うところを書かせてもらいます

知られざる少年院生活の実態「幼稚園児レベルの告げ口されるから、誰も信用できない」

以前も書いたように、少年院での教育や生活を役立つものにするか、しないかは少年次第です。少年院といえど洗脳教育を実施しているわけではありませんから、頭の中に手を突っ込んで考え方や性格を変えたりはできません
もちろん少年院に否定的な感情を抱く少年は少なくないのであり、全否定したくなるのも理解できます
ただ、少年院に勤務する法務教官の側からすれば、別の見方もできるわけです
自分はいわゆるG2と分類される性格に偏りがあり、知能レベルが低い少年(概ねIQ80以下)の少年を扱っていました。小学校・中学校で落ちこぼれ、高校にも進学できず、不良グループでもパシリ扱いで、シンナーなど薬物に耽溺して現実逃避に走るような少年たちです。暴力団に加入して入れ墨を自慢してはいますが、組でも底辺扱いされるのは変わりありません
ですから漢字の読み書きもできず、掛け算や割り算もできない少年も珍しくないのであり、彼らに漢字の読み書きを教え、分数の足し算や引き算を教えます(分数の概念が理解できない少年がほとんどです)
一般社会から見れば何をやっているのか、と思われるのでしょうが、人前で漢字が書けなかったり、暗算ができないことがどれだけコンプレックスになっているか、想像してください。少年院に面会に来る親の中には、面会申し込み票に自分の名前やこどもの名前を書けない人もいたりします
また、運動時間には徹底的に走らせることでストレスを解消させ、体力の向上を図ります。体育の授業をさぼり、部活もしていない彼らは威勢だけはよいものの体力的に劣っており、走るごとにタイムを縮められる喜びを肌で知るわけです
少年院での職業訓練はあまりに初歩的すぎるレベルですが、道具の扱い方から始めて作品つくりまで手掛けることで、自分でもやれるという実感を与えることに重点を置いています
建築系の現場で、「役立たず」、「のろい」、「バカ」、「何度言ったらわかるんだ」と怒鳴られ、自信喪失と屈辱感から長続きしなかった彼らに、何か一つでも「自分でもやれる」という実感を身につけさせる意味は、決して小さいものではありません
あるいは徹底的に文章を書かせ、物事を考えて表現する訓練というのも意義があり、意味があると自分は思っています
自身の内面を見つめ、考え、それを文章に表現するという、一般的な高校生なら当たり前にできる行為も、彼ら非行少年には経験のない行為であり、少年院だからできる訓練です
なので、こうした地道が訓練をする場が少年院であり、洗脳教育を実施しているわけではありません
ちなみに上記の「SPA!」の記事の文末に元法務教官のジャーナリスト草薙厚子が登場してコメントしているわけですが、彼女は東京少年鑑別八王子支所に数年勤務しただけで転職しており、少年院での勤務経験はなかったと思います

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