ヒステリックブルーのナオキ 性犯罪を繰り返す理由

繰り返し取り上げている元ヒステリックブルーのギタリスト、二階堂直樹の強制猥褻事件ですが、まだ判決には至っていません
事件の概要や裁判の経過は当ブログにこれまで書いてきた記事を参照願います
今回は、「なぜ性犯罪を繰り返すのか?」という根本的な問いを考えます。すでに御存知の通り、二階堂直樹被告は過去の性犯罪で逮捕・起訴され、懲役12年の判決を受けて服役した経験があり、性犯罪が被害者にも自分自身にも多大な負担を与えると学習していたはずです
2020年9月の産経新聞の記事に、性依存症の治療を実施している精神科医のコメントがありますので取り上げます


20代の女性に対する強制わいせつ致傷の疑いで埼玉県警に逮捕された、バンド「Hysteric Blue(ヒステリック・ブルー)」(2004年に解散)の元ギタリスト、二階堂直樹容疑者(41)。過去にも強姦などの罪で実刑判決を受け、刑務所内で再犯防止プログラムを受けていたにもかかわらず、出所後、同様の犯罪を繰り返したわけだ。なぜやめられないのか。
逮捕容疑は7月6日午前2時15分ごろ、同県朝霞市内の路上で、背後から女性の口をふさいで押し倒し、右ひじに1週間のけがをさせた疑い。署によると、女性とは面識がなく「体を触りたかった」と供述している。
二階堂容疑者は2003~04年に東京都目黒区や大田区の路上で女性8人に乱暴したなどとして強姦などの罪に問われ、06年に懲役12年の実刑判決が確定し服役。山形刑務所に服役中の16年、刑務所内で性犯罪の再犯防止プログラムを受けていることを手記で明かし、同年に出所していた。
ヒステリック・ブルーは『春~spring~』などのヒット曲で知られ、1999年にはNHK紅白歌合戦に出場。二階堂容疑者はナオキの名で活動していたが、バンドは事件を受けて2004年に解散した。
依存性治療を専門とするライフサポートクリニック(東京都豊島区)の山下悠毅院長は、「依存症を抱えた人の真の目的は、性欲の解消でも射精でもなく、行為に伴う自己愛の獲得です。彼らは女性を乱暴することで、『自分だけができる』という自己重要感や、『今度はこんなこともできた』といった成長感を満たそうとするのです。痴漢や盗撮などの性犯罪が依存症である根拠として行為のエスカレートがありますが、それは先ほど述べた自己重要感や成長感を継続して満たすには、行為の頻度や難易度の上昇が欠かせないからです」と説明する。
そして、「倫理観や道徳観で一刀両断するのではなく、女性に乱暴することでしか自己重要感や成長感を満たせない当人の生きづらさを理解した上で、カウンセリングや精神科の薬剤も併用しながら回復を目指すことが大切です」と語る。
(産経新聞の記事から引用)


自分は精神分析の立場から、性犯罪は決して満たされることのない欲望を満たそうとする衝動に支配された、反復強迫行為の発現という仮説に基づいて考えます。ただ、1つのモデル(仮説)に何もかも当てはめようとするのは正しくないのであり、別の見方、別の仮説も無視できません
果たして性犯罪が、上記の山下院長の「(性犯罪を繰り返すことで)自己重要感や成長感を継続して満たそうという欲求」によるものなのか、即座に判断はできません
フランスの精神分析家ジャック・ラカンの考えによれば、「その欲求は満たそうとして決して満たされないもの」だからです
二階堂被告に照らし合わせると、「夜道を1人で帰宅する女性の後を尾行し、支配欲を満たそうと思った」との自覚は優越感を満たす狙いがあったのでしょう
それに続くコメントの「倫理観や道徳観で一刀両断するのではなく、女性に乱暴することでしか自己重要感や成長感を満たせない当人の生きづらさを理解した上で」というのは重要な指摘だと受け止めます
お説教をしたり、批判するのではなく、彼が抱えていた疎外感とか、元受刑者である自分を隠して生きなければならない閉塞感も斟酌して語らなければならないのでしょう
もちろん、女性を乱暴することでしか自分自身を確認できないとか、達成感を満たせないというのは大間違いであり、根本的な部分で認知の歪みが大きいのですが(それに女性は男の自己実現や達成感のための道具ではありません)
当ブログで取り上げている連続強姦殺人の死刑囚大久保清の場合、自己重要感とか成長感を満たしたいがゆえの犯行ではなく、1人でも多くの女を犯して殺したい、社会に復讐したいというドス黒い執念、衝動が前面に出ている感があり、二階堂被告とは大きく異なって映ります
なので、性犯罪を繰り返すにしても、そこは性犯罪者個々に理由・事情があると考え、1つのモデルに押し込めて解釈するのではなく個別に考察するのがよいのではないかと思います

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