8人を強姦殺害 大久保清事件から50年(2)
9人の女性を強姦し、そのうち8人を殺害して遺棄した大久保清死刑囚の事件から50年が経ちました。上毛新聞が事件から50年を機に、特集記事を掲載していましたので、それを読みつつ思うところを書きます
ところで大久保清事件をインターネット上で調べると、Wikipediaの内容を丸写ししたウェッブサイトやブログがいくつも目に付きます。アクセス数を稼ぐためなのでしょうが、いかがなものかと思ってしまいます。まあ、自分のブログもいくつかのウェッブサイトや本に書かれている内容の寄せ集めですから、批判できる立場ではないのですが
さて、今日は大久保清がどのような人物であったのか、に絞って書くつもりです
大久保は問う~女性連続殺人から50年(3)素行 親の訴えにも自供拒絶
「車は密室で、外から中の様子は見えない。『知らない人の車には絶対乗っちゃだめ』って、よく教え子に伝えました」
群馬県富岡市の女性(81)は3月、大久保清元死刑囚=1976年執行、当時(41)=が逮捕された71年のことを思い出した。東京農大二高で教壇に立っていた。
女性の夫(81)も富岡東高で教えていた。大久保元死刑囚が、上州富岡駅の周辺でも若い女性たちに声を掛けたという真偽不明の情報が出回った。「生徒たちには気を付けろと、相当言いました」と言う。
殺害された被害女性計8人(当時16~21歳)の住所地は、旧新町、旧新里村、高崎、伊勢崎、前橋、藤岡各市と広域にわたった。大久保元死刑囚はこれ以外にも県内各地で無数の女性に声を掛けていた。県外へも出掛けていたとされる。
「友人が男に声を掛けられ、それが後で大久保(元死刑囚)だと分かり、富岡署で事情を聴かれた」。甘楽町の女性(65)は語る。あの子が誘われた、高崎の駅近くで接触した…。いつもなら平穏そのものの町中に、うわさが広まった。町民の男性(72)は「身近な場所でこんな犯罪が起きるなんて。そうした不穏な空気があった」と話す。
大久保元死刑囚はどんな素行だったのか。初公判(同年10月、前橋地裁)で示された検察側の冒頭陳述に、記述がある。
35年に当時の碓氷郡八幡村(現高崎市八幡町)で生まれ、53年にラジオ店を開業した。55年に女性に乱暴しようとした罪で執行猶予判決を受け、翌56年には別の女性に乱暴した罪で実刑判決が下り、刑務所へ入った。出所後は牛乳店を営んだ。
67年に再び女性暴行事件を起こすなどして実刑判決を受け、恐喝未遂罪なども併合されて、同年中に府中刑務所に服役した。仮出所は71年3月2日。8人殺害事件の最初の被害者に手を出したのは、そこから1カ月もたたないうちだった。
女性殺害事件を巡り逮捕され、勾留中の同年6月、大久保元死刑囚の両親が接見に前橋署を訪れた。取り調べで否認や狂言を繰り返すなどして、被害者が最終的に何人に上るか分かっていない時期だった。
〈他に何人も殺しているなら、早く自供を〉
両親の訴えに、大久保元死刑囚は接見の目的が自身に供述を促すためだと見透かした上で、返した。
〈俺は家族にも裏切られた。刑務所から出てくるたびに、友達も冷たくなった。俺の気持ちは誰にも分からない〉
(上毛新聞の記事から引用)
大久保の家族や育成歴に問題があるとしても、家族を頑なに拒絶するようになった理由がいまいちはっきりしません。むしろ、性犯罪を繰り返して刑務所を出たり入ったりする己を所業を「家族のせい」にする、ある種の被害妄想があったのではないか、とも考えられます
逮捕後、大久保の精神鑑定が実施されたのですが、ウェッブサイトを見て歩くうちに、「精神鑑定は大久保が正常であると判明した時点で終わっており、それ以上は深く大久保の人格に踏み込まなかった」との記述を見つけました
これは疑問に思います。なぜなら、大久保の精神鑑定は東京医科歯科大学の中田修教授(精神鑑定の第一人者)が半年かけて担当し、助手には福島章、小田晋、稲村博の3人が起用されました。いずれも精神鑑定や精神医学の分野で名を成した人物です。これだけのメンバーが集まり半年を費やして、「大久保は精神異常とは認められず、責任能力に問題はない」との結論だけで終わるはずがありません
大久保の精神鑑定結果については詳細がまだ確認できていませんので、後日取り上げるつもりです
さて、大久保清事件の詳細と逮捕後の取り調べなどなど、Wikipediaの記事よりも情報量が豊富なサイトを紹介しておきます
被害者の実名まで書かれているのはアレで、読まれる方は心の中で手を合わせ被害者の冥福を祈念してください
大久保清連続殺人事件
上記のサイトの中で、大久保は拘置所で手記「訣別の章」(手紙が後に編集され本になった)を書き残しており、下川耿史が「殺人評論」(青弓社刊)で「言葉遣いが難しい割には浅薄で、他にもひどくセンチメンタルな詩を長々と書き連ねており、これが36歳の男が書くものかと思うほど実に少年っぽい」と酷評しています。その大久保の手記・詩の一部を読むことができます
やたらと凝った表現の、ナルシズムにどっぷり浸った「詩情溢れる」文章が並んでいます。が、こうしたポエムを綴るインテリ、というのが大久保の憧れであり、そういう者になりたかったのでしょう(もちろん、なれないのですが)
読んでわかるように中身のない、ただ言葉を飾っただけの表現であり、その中身のなさが等身大の大久保清そのものであったのかもしれません
当時の学生運動に刺激を受け、小難しい演説をする学生活動家に憧れ、イデオロギーやらアナーキストという表現を使ってはいるものの、その本質は決して彼には理解できないままだったのではないか、と想像します
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