8人を強姦殺害 大久保清事件から50年(1)

大久保清の名前を聞いてその人物を思い浮かべられる方は、それほど多くないのかもしれません。今ではすっかり忘れられた名前、なのでしょう
1971年、強姦殺人の容疑で逮捕された大久保清容疑者には、複数の事件に関与した疑いがありました。が、大久保容疑者は取り調べに対してのらりくらりと応じ、女性を強姦し殺害したことも、その遺体をどこかに遺棄したことも認めようとはしませんでした
当時は、防犯カメラもドライブレコーダーもない時代ですから、目撃者の証言と本人の自供が頼りで、捜査は難航したようです。ただ、大久保が当時は珍しかったマツダロータリークーペを乗り回し、服装もルバーシカにベレー帽という芸術家気取りで小脇に詩集や小説を抱えていると特徴のある風体あったため、聞き込みを続ける警察には目撃証言がぼつぼつと集まり始めます
最終的に検察は大久保を8人の女性(17歳から21歳で、未成年者が6名)に対する強姦殺人と死体遺棄と1人の女性に対する強姦で立件し起訴します。ただし、大久保の手にかかって殺害された犠牲者はもっといたのではないか、との見方もあります
群馬の地元紙「上毛新聞」が大久保清事件から50年を機に特集記事を掲載していますので、それを読みつつ思うところを書きます


大久保は問う~女性連続殺人から50年(2)翻弄 否認、うそ…核心遠く
「まだ暗くなる前だったかな。出てきたのは」
高山勝さん(80)=前橋市関根町=は3月中旬、群馬県の榛名湖の近くで土の中にあった遺体を掘り起こした時の光景を思い出した。高崎署捜査課係長として現場に急行したと記憶する。1971年5月のことだった。
遺体は当時17歳だった女性。大久保清元死刑囚=76年執行、当時(41)=に殺され、遺棄された。
大久保元死刑囚は8人の女性(当時16~21歳)を71年3~5月に殺害した。高山さんが立ち会った発掘で見つかったのは、最初の遺体だった。深さは他の場所に埋められていた被害者よりも浅かったように覚えている。実況見分には無数のマスコミが押し寄せた。
この発見が、誘拐や乱暴をした疑いで逮捕された大久保元死刑囚を、殺人容疑で本格的に立件する転機になると思われた。そうした捜査機関側などの思惑に反し、事件の全容を解明するにはしばらく時間がかかった。残る7人の発見には、同年7月末まで費やした。
妙義山麓、高崎市の工業団地周辺、下仁田町のコンニャクイモ畑。遺体は各地に埋められていた。皮肉なことに、県警にとってはこの際の遺体発掘の経験が、71年から72年にかけて県内で起きた「連合赤軍」の殺人事件で生きたとされる。
大久保元死刑囚の捜査はなぜ困難だったのか。
否認、うそ。「余分なことは話すが、核心はうたわない。決してばかじゃないが、(人間としての)センターが狂っていた」(高山さん)。そうした容疑者との駆け引きに、翻弄ほんろうされ続けたのだとされる。
〈大久保(元死刑囚)のウソつき、ホラ吹きは一流だったが、弁舌さわやかという点でも類を見ない犯罪者だった〉〈早く遺体を出して家族にお返ししたかったが、焦る気持ちを読み取られては負けで、神経を使った〉…。捜査段階で100日間ほど向き合った県警の取調官(故人)は、後に述懐している。
大久保元死刑囚は当初、藤岡署に逮捕された。71年7月中旬まで前橋署に勾留されていたが、それから同年8月下旬までは当時の松井田署(今の安中署松井田交番)に身柄が移された。
妙義山が一望できる閑静な場所。勾留先をここに変えたのは、大久保元死刑囚の良心に訴える県警の苦肉の策だった。すぐ隣の補陀寺では、住民が心に響けと鐘を鳴らした。「たくさんの記者が来た。2社くらいに電話を貸したな」。近所の細矢栄吉さん(90)は半世紀前を振り返った。
(上毛新聞の記事から引用)


芸術家然とした風体を装い、若い女性に「絵のモデルになってほしい」と声をかけるのが大久保の手口、とされます。が、被害者8人は殺害されていますので、実際はどうであったのか不明です(大久保から強姦された女性が別にいて、殺害を免れていますので、被害者は9人というのが正確なところです)。大久保も事件の核心部分については自供をぼかし、はっきりとした言い方はしていません
さて、話を戻して大久保の生い立ちに触れます。通常、凶悪な犯罪者の場合、その家庭にさまざまな問題が見られるのであり、大久保清も例外ではありません
大久保の父は家人の前でもセックスをするほど性欲が強く、またモラルに欠けた人物で、清の兄の嫁まで強姦しトラブルになっています(兄は2度結婚し、妻は2人とも義父に襲われる被害に遭っています)
異常な性欲が遺伝するとは考えられませんが、性に対する父親の放埒な言動・日常がこどもの成長を歪める可能性はあります
大久保のその異常な性欲が発現したのは小学6年生の時で、近隣に住む女児を強姦しようと試みて抵抗され、腹いせに女児の膣に石を詰める暴行を加えたとして騒ぎになりました。が、警察沙汰にはならなかったようです
20歳の時に大久保は女子高生を強姦して逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けたのですが、その直後に再び強姦未遂事件を起こして有罪判決を受け、先の執行猶予も取り消されて松本少年刑務所に服役します。3年ほど服役して出所した大久保ですが、半年後にはまた強姦未遂事件を起こします(親が示談金を支払ったため不起訴処分)
なので、連続強姦殺人以前にも性犯罪を繰り返していたのであり、認知の歪みと女性への蔑視は相当なものがあったと考えられます
前科を隠して結婚した大久保ですが素行は改まらず、またも2件の強姦事件を起こして府中刑務所に服役します
そして府中刑務所出所後、本件の連続強姦事件に至るのです
親の金で手に入れたマツダロータリークーペで群馬県内から近隣県まで走り回り、若い女性に声をかけて、車に乗せてはホテルなどに連れ込んでセックスして殺害、遺体を遺棄するという鬼畜の犯行を重ねるのです
長くなりましたので、一旦区切りとします

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