給食センター所長 給食費横領で逮捕
大阪府四條畷市の学校給食センター元所長が小中学生の保護者から預かった学校給食費を銀行口座から勝手に引き出し、約1450万円を横領した容疑で逮捕、起訴されています
この給食センター元所長、林雅弘被告(65)は給食調理員として採用されてからの叩き上げで、いわば給食業務をよく知る人物としてワンマン経営振りを発揮していたのでしょう
横領すれば当然、口座の残高が不足します。四條畷市の給食会計は3年連続で赤字となり、林被告はこれを「食材費高騰のせい」だとして市教育委員会に給食費を値上げするよう迫っていたのだとか
市が当然、監査をして給食会計をチェックしていたはずで、横領を見抜けなかったとすれば監査業務自体いい加減だったと思われます
ただ、学校給食業務は市教育委員会の所管でしょうから、市教育委員会が林被告に任せっきりにしていたのが、そもそもの原因です
以前にも書きましたが、日本では教育現場に政治を介入させないとの理由で、教育行政は市や県の行政とは別立てにされており、市長や県知事といえども教育現場には直接介入できないというのが建前です。そのため、学校でのいじめや教師による性犯罪も教育委員会任せになっており、教育委員会が責任逃れのため隠蔽工作をする事態もしばしばです
学校給食41年
業務上横領罪などで起訴されたのは、林雅弘被告(65)。昭和54年に給食調理員として採用され、学校給食に41年間たずさわった「たたき上げ」。平成26年から再任用期間を含めた6年間、学校給食センター所長を務め昨年3月に退任した。
後任の所長らが、センターが事務を担う「学校給食会」の会計に不審な点があるのに気づき、今年1月、大阪府警に告発。林被告、給食会計の口座から、令和元年7月から11月までの間、3回にわたって計約330万円を横領した容疑で今年5月に逮捕され、余罪を合わせ7月に起訴された。
起訴状などによると、食材の納品業者を装った自分の口座に学校給食会から振り込み手続きを行う手口で、平成27年1月以降、10回で計約1450万円を横領したとされる。
また、平成31年3月に行われた給食配送業務の入札をめぐり、業者から紳士靴やスーツなど計約22万円相当を受け取った加重収賄罪などでも起訴された。
市関係者の一人は「いま思えば派手な腕時計など公務員らしくない部分はあった。所長になった初年度から給食費に手をつけていたとは」と話す。
値上げしても赤字
市によると、市の学校給食会の会計は年間2億3千万円前後の支出・収入がある。林被告が所長となった26年4月に給食費を値上げしたにもかかわらず、給食会の会計は28年度に約55万円、29年度に約100万円、30年度に約310万円の赤字が続いた。
このため、31年4月から給食費は月額200円値上げされ、小学校は4400円、中学校は4800円に。中学校は府内平均レベルだが、小学校は約400円高い。
この給食費の値上げを市教委や学校給食会の理事会に提案したのが林被告だ。31年1月の市教委定例会の議事録によると「台風や地震で食料品価格が上昇している」と値上げ理由を説明し、理解を求めていた。
市への取材によると、値上げにより給食会計は年間約1100万円の増収となった。だが、林被告はその後も横領を重ね、給食費の値上げで会計の赤字を埋め、さらに横領を続けた可能性がある。
市の関係者は「会計を1人に任せたのは市と市教委の責任。1450万円もの横領が明らかになった以上、給食費の値上げが妥当だったのか、保護者や教員に説明する必要がある」と指摘する。市教委の担当者は「食材価格が上昇していたのは事実だと思うが、それ以上は何も言えない」と言葉を濁す。
東修一市長と植田篤司教育長は林被告の逮捕後、記者会見し「教育行政と市政への信頼を損なうことになり申し訳ない」と陳謝した。6月議会で自らの減給処分を行ったが、さらなる説明が求められるだろう。
(産経新聞の記事から引用)
横領した金額が1450万円とされますが、本当はもっと多いのでは?
ただし、林被告が会計業務に携わるようになった当時の古い書類、領収書などはすでに廃棄されてしまい、チェックできない状態ではないかと思います(一般的には10年保存して、その後は廃棄)
当然、林被告にこれを支払うよう請求するわけですが、回収できるかどうかは別です。林被告の有罪は動かないはずで、林被告名義の預金や土地、家屋は差し押さえの対象になり、有罪で服役するとなれば年金受給資格も出所するまで停止されます
それでも給食費を横領してやりたい放題してきたのですから、世間からは同情されたりしません
記事からの引用では省略しましたが、教材費や修学旅行の積立金、PTA会費など、公の会計に組み込まず教員が私的に管理しているケースも多いと記事では指摘しています。そこからの横領、着服もたびたび事件として報道されます。が、それでも仕組みを改めようとしないのは異常、と自分の目には映ります
公務員時代、会計検査院の監査を受けた経験がありますが、それは随分と細かく容赦ないものでした。最初から不正な行為があると疑ってかかる姿勢であり、細かく法令や規則、部内の規定にまで突っ込んだ質問を浴びせてきます
「誰が業務を主管しているのか、その業務を誰がチェックしているのか、チェックしているのならその記録を見せろ」と要求してきます。記録がないのであれば、「その業務が適切に行われているのか誰も確認しないまま放置しているおり、問題だ」と決めつけてきます
本件に立ち返ると、林被告が給食会計を適切に処理しているか、毎月必ず帳簿と口座の出入金、請求書や領収書を突き合わせて確認する必要があり、誰が確認したのか記録として残さなければならないのですが、やっていなかったのでしょう
教育行政を教育委員会に丸投げしている今の仕組みを改め、金の動きは市が管理するよう改めないと、同種の事件がまた発生します
追記:2022年2月4日、大阪地裁は林雅弘被告に対し懲役3年執行猶予5年、追徴金6711円の判決を言い渡しています。退職金として既に受け取っていた額の返納と被害金額がすでに弁済されているとの理由で執行猶予付きの判決になりました
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