中国のバイオレンスアニメ「守護者と謎の豆人間」

7月23日から中国の劇場版アニメ「DAHUFA 守護者と謎の豆人間」が日本で公開されると、複数のメディアが取り上げています。中国初のバイオレンスアニメで、年齢制限付きとして劇場公開されたと説明されています
しかし、その動画を見ると2017年に公開された劇場版「大護法」そのものではないか、という気がします。この予告動画は以前、当ブログでも紹介しました。無駄で無意味な殺戮シーンが連続するアニメで、どうしてこんなものを作ったのか、と思ったほどです
日本公開に合わせてタイトルを「大護法」から「DAHUFA 守護者と謎の豆人間」に変更したと思うのですが、日本での評価はどうなるのでしょうか?
映画メディアが監督とのインタビューを記事にしていますので、引用します


中国国産アニメにおける“前代未聞”の挑戦として知られている「DAHUFA 守護者と謎の豆人間」(7月23日公開)。光線彩条屋影業、好傳動画が製作、面白映画が提供した同作は、中国史上初の“年齢制限付アニメ”として注目を集め、過激な暴力描写で熱狂的な支持を得た作品だ。
王宮から失踪した皇太子を捜すため、奕衛(イーウェイ)国の守護者であるダフファーは国境を越え、とある謎の村に辿り着いた。ここの住民は自らの意志を持たず、喋らず、見た目も皆そっくりで、村中には不気味な気配が漂っていた。やがてダフファ―は、この村に隠された秘密へと徐々に近づいていく。
映画へのレイティング制度がなく、アニメ作品は子ども向けとされている中国本土において、制作側が「13歳未満の鑑賞はお控えください」と自主規制した事が話題に。中国公開時は約13.5億円のスマッシュヒットとなり、アニメファンから高評価を得ている。
今回、監督を務めた不思凡にインタビューを実施。企画の経緯、制作裏話、日本で公開されることへの思いを聞いた。
――まずは、本作の企画経緯について教えて頂けますか?
この映画に関しては、私自身のアニメ映像に対するこだわりを全部出しました。ある意味、作家性の強い作品だと言えるでしょう。正直に言えば、「こういうものに作りたい」という思いはありませんでした。たまたま「新しいものを作りたい」となった時、劇中で描かれているような要素が頭の中に浮かんできたんです。テーマとして選んだのは、当時の私が最も描きたかった「社会の停止」「人々の思考停止」。私も時々、考えが止まっているような感覚を覚えることがあります。
――中国では、現在でも「アニメ=子ども向け」という考え方が一般的だと思います。一方で「DAHUFA 守護者と謎の豆人間」は、完全に大人向けですね。この点については、どのようにお考えでしょうか?
これは中国のアニメ業界が長年直面している問題です。ただし「DAHUFA 守護者と謎の豆人間」も含めて、近年はさまざまなアニメ作品が話題になったため、アニメに対する理解が広がってきたと感じています。この傾向が続けば、より多くの人々がアニメを見るようになり、クリエイターたちはより良質な作品を作るために頑張らなくてはいけない。そうなることで、観客も、我々クリエイターも一緒になって成長することができるはず。中国経済が安定した成長を続けている限り、文化産業も発展していくでしょう。ただ、もう少し時間は必要かもしれません。
――本作を見た観客からは「よく検閲が通ったものだ」という声があがっていました。中国国内の検閲については、どう考えているのでしょうか?
正直、そこまで深くは考えていませんでした(笑)。当初は配信用のアニメ作品として制作する予定だったので、劇場上映のことを全く考えていませんでした。だから、劇場上映が実現できたということが、本当に意外だったんです。映画としても、アニメとしても、「DAHUFA 守護者と謎の豆人間」は、新しい試みだったのかもしれませんね。我々のチームは、制作面で壁にぶつかった事もありました。その時に生じた負の感情が、(作品の中に)つい溶け込んでしまったかもしれません。
――街全体のデザイン、キャラクターデザインは非常に大胆で新鮮さを感じました。デザイン面で特に意識したことはございますか?
うちのスタッフが、偶然粘土で面白い人形を作ったことが、すべてのきっかけとなりました。それを劇中の“謎の生き物”として登場させています。そして、助監督のひとりはグラフィティが好きで、よく描いているんです。その中のひとつが非常に魅力的だと感じ、本作の主人公・ダフファーが誕生することになりました。その他の人物、街のデザインなどは、この2つのキャラクターや脚本の内容を踏まえたうえで手掛けることになりました。
――特筆すべきは、セリフ量の多さ。独白のシーンも印象的です。
これに関しては、私個人の作家性というか、創作上の習慣なんです。おそらくダフファーのキャラクター性とも関係があると思います。彼は知恵を持っている賢者ですが、同時に色んな悩み事があります。戸惑いながら、さまざまな問題に対して、自分なりの答え、見解を示していきます。これは人の成長、ある意味、人類の発展だと言えます。制作中はセリフが多いということを意識していなかったのですが、中国での上映後、多くの観客に「主人公がうるさい」と言われました(笑)。
――中国国内での上映も話題となり、今回日本でも公開されることになりました。改めて、本作への思いをお聞かせください。
先程も話しましたが、劇長公開自体が意外なことだったんです。本作での体験は、すごいことばかりです。今振り返ってみると、色々な問題、反省する部分がわかりますが、制作当時の私からすれば「納得の作品」でした。
多くの人の過去には、足りないこと、反省すべき点が見つかるでしょう。しかし、過去の失敗がないと、成長はできないと思っています。だからこそ、全力を尽くし、それが例え失敗だったとしても諦めず、次の作品へと導くことができたらいい――私は常々、そう思っています。
(映画.comの記事から引用)

ヒトと似て非なる奇妙な生き物たちの首が次々と切り飛ばされていく/映画『DAHUFA -守護者と謎の豆人間-』本編映像


中国での興行収入13億円がスマッシュヒットなのか、疑問です
2017年の中国での公開を前に、中国メディア「人民網」がこの作品を紹介記事を掲載していましたので、引用します


中国国産アニメ映画「大護法」がまもなく上映
中国初の成人向けアニメ映画「大護法」が7月13日に中国全土の映画館で上映開始となる。このほど公開された封切り前最後となる予告編では、ストーリーの構成から登場人物の関係までストーリー全体をまとめている。新華網が伝えた。
映画「大護法」のテーマは「自分探し」。予告編では、主人公・大護法の視点から、花生鎮の住民である花生人たちが逆境や抑圧におとなしく従っていることに、すこしずつ疑問を抱き始め、自分探しをするという三つの段階を経て、語られる。
「大護法」は中国初の成人向けアニメ映画として、そのコンセプトやスケールは中国国産アニメにおける「前代未聞」の挑戦。予告編からもわかるように、そのスケールとは、作風における暴力美学的なスタイルだけでなく、非常に深みのある思想を兼ね備えていることからも見て取れる。また、制作側は「13歳未満のお子さんの鑑賞はお控えください」と特に明記し、幼い子供や保護者に注意を促している。
「大護法」は、「西遊記之大聖帰来」や、「大魚海棠」に次ぐ、元となる原作やそれを支持するファンを持たない完全なオリジナル作品。しかし、その独特なスタイルやコンセプト、ストーリーにより、映画制作には多くのアニメ業界人や二次元ファン、視聴者からの支持を集めている。
(人民網日本語版の記事から引用)


日本も「暴力」を扱ったアニメは多いのですが、「この中で誰が一番ツエーのか」というヤンキーアニメはともかくとして、そこにはさまざまなテーマを抱えています(友情、努力、勝利というように)
「エヴァンゲリオン」なら、使徒と人類の戦いという大前提の下に、いくつもの複雑なテーマが絡み合って存在する作りになっています
この「守護者と謎の豆人間」はどうなのでしょう。感情を表に出さない豆人間を現代中国人を象徴するとして、共産党支配下社会を風刺する作品とでも解釈すればよいのでしょうか?
作品の面白さとは必ずしも主人公のかっこよさとか、爽快感だけではなく、観終わった後に残る余韻とか反復して噛みしめる味わい、などなどがあります。が、自分にはこの作品の味わいというのが理解できません
大人向けとは言いますが、観る人を選ぶ作品でしょう

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