「人財教育」を持ち込む小学校 7つの条件

J-CASTニュースの記事に、北海道の小学校で校長が研修会で聴き込んだ「人財教育」をやっている、との記事がありましたので取り上げます
教育委員会が校長を集めて研修会をやり、そこへ人材教育のコンサルタントが講師に招かれて「人財となるには7つの条件がある」と吹き込んだのでしょう
調べてみると、2010年以前から企業相手に「人財教育」やら「7つの条件」といったセミナー、講習会が行われており、「7つの条件」を並べたポスターを販売している会社もあるのが分かりました
個人のブログでも、「7つの条件を満たして人財と呼ばれるようになろう」と呼びかけているものが散見されます
自分は経営コンサルタントとか人材教育コンサルタントと称する人物が大嫌いなので、批判する内容を以下、記述します


「YESが0の人は『人罪』」小学校だよりが物議 書いた校長「7つの大事なことを伝えただけ」
「YESが7の人は『人財』であり、会社が求めているよい『じんざい』」
「人財になるための7つの条件」。同校の学校だよりでは2021年5月28日、こんなタイトルを付けて、校長名の文を載せた。人財とは、財産になる人材という意味で使っているらしい。
それによると、校長は、道立教育研究所の学校経営力向上研修に参加し、7つの条件について講義を受けた。条件とは、「明るく、元気な挨拶ができる」「言われなくても、自分で考え、行動できる」「人が嫌がることでも、進んで取り組める」などだ。
これに基づいて、校長は、「いくつクリアできているか」を教職員に提示したという。それは、次のような内容だった。
「YESが7の人は『人財』であり、会社が求めているよい『じんざい』であり、自分で考えて成果をあげられる人だそうです。YES が4~6の人は『人材』であり、会社が求めているふつうの『じんざい』であり、言われたことなら、自分でやりきれる人だそうです。 残念ながら、YESが1~3の人は『人在』、YESが0の人は『人罪』となるそうです」
条件は、社会人の指標だったが、校長は、「本校児童の状況を確認します」といい、例えば、「明るく、元気な挨拶」は二極化しており、教職員や保護者が適切な対応をすれば改善できるとした。そして、子供たちを「人財」に近づけるには、身近な大人の存在が重要だと述べた。「7つの条件の備わっている子どもの多い学級は軌道に乗っている」とも書いている。
校長を研修した講師「子供に使われたとすれば、本意ではなく、違う」
学校だよりの内容は、6月1日になって、会社が求める資質で教職員や児童をランク付けするショッキングなものだとツイッターで指摘され、波紋が広がった。
この投稿は、3000件以上もリツイートされており、様々な意見が寄せられている。
批判的な声は多く、「人罪か、、、教育に関わる人が使う言葉としてひどすぎる」「会社、社会、体制に従順な人材を欲しているんでしょうか」といった反応が出ている。
一方で、「この社会で生きていく以上、使える、使えないとか生産性とか嫌でもつきまとう」「教師は一般企業で働いたことがない、社会を知らない、となじり続けた結果では?」と一定の理解を示す声もあった。
校長が受けたのは、道立教育研究所が4月28日にオンラインで行った研修ではないかとみられている。この研修では、道商工会議所連合会の福井邦幸政策企画部長が「組織を活性化させるマネジメントと人材育成」と題して講義していた。
福井氏は6月3日、J-CASTニュースの取材に対し、知り合いの研修講師から借りた資料を使って、7つの条件について校長らにレクチャーしたことを認めた。
「この条件は、本などいろんなところに出ており、校長はどうあったら資質が向上するかを話すときに、1つの指標として使いました。学校経営で、教頭以下の組織マネジメントをどうするかということです。『人罪』は、極端の例としてあるだけで、そのまま人に使うのはダメですね。著作権の問題がありますので、受講者にペーパーを渡しておらず、スクリーンの画面で見せました」
校長が条件を子供たちに当てはめたことについては、こう話す。
「子供に使うとは一切話しておらず、使うものではありません。そういうふうに使われたとすれば、本意ではなく、違うのではないかと思います。条件は、経営者の心構えを説いたもので、人に使うべきではなく、自分に当てはめてほしかったですね」
(以下、略)


自分も過去にこの手のセミナーへの参加を命じられ、仕方なく出席した経験が何度かあります
経営コンサルタントは「3つのMが大切です」などと称しMで始まる単語を並べてあれこれ語るわけですが、それが本当に妥当なのか、意味があるのか、といつも疑問に思います。研修という場を乱すような真似はしたくないので反論したり、疑問を投げかけたりはしないよう心がけていましたが
こうした場で反論したりすれば、講師は「メンドクサイ奴だな」と思うだけでしょう。自分が受け売りしている組織論やら人材論を疑ったりはしませんし、妥当性を検証する気もないのですから
さて、校長は心底、この「7つの条件」を素晴らしいと感じ、学校でも使えると思ったのでしょう。なので、いまさら抗議を受けたとしても、撤回するのは自分のプライドが傷つくので拒絶するはずです
教育者として「人罪」という定義を疑問にも思わなかったというのは致命的欠陥であり、所詮はその程度の校長であったと解釈するしかありません。児童にどのような影響を及ぼすか、想像もしなかった、できなかったということです
校長だからといって人格者であるとは限らず、いじめ事件を隠蔽して保身に走ったり、買春で逮捕される校長もいるのですから
「学校だより」に掲載する前に、周囲の意見を聞くなどしておけば騒動にならなかったのでしょうか?
おそらく周囲の教員も校長のアイディアに異議を唱えるような真似はせず、忖度して賛同したと想像します
経営コンサルタントや人材教育コンサルタントの説く話を鵜呑みにせず、妥当なのかどうか、自身で考え検討する態度を身につける必要があるのですが、大学の講義を聴いてそのまま受容する(無批判に享受する)ような人物が教師になるのでしょうから、難しいのかもしれません

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