林真須美死刑囚 再審請求(第二次)を考える

林真須美死刑囚が弁護人を介して再審請求(2度目)を行った件を昨日、取り上げました
その後の報道で多少なりとも再審請求の中身が伝わってきていますので、考えてみましょう
従来の林真須美死刑囚の弁護人とは別の弁護士が、別の切り口で再審請求を申し立てたと報じられています。再審請求については刑事訴訟法に詳細な規定はない、とのことで別の事由に基づく再審請求であれば何回でも申し立てるられるのだとか(もちろん、同一の主張による再審請求を複数回申し立てても、裁判所がこれを受理しません)
今回の再審請求を請け負った弁護士はベテランの元裁判官なのだそうです


林死刑囚は死刑確定後の09年7月に既に再審請求をしており、再審を認めなかった20年3月の大阪高裁決定を不服として最高裁に特別抗告中だ。
生田弁護士は1970年から22年間、裁判官を務め、大阪高裁判事まで上り詰めたベテラン弁護士。「第三者による犯行は明白で、林死刑囚は無罪」と話す生田弁護士にあらためて話を聞いた。
――なぜ事件の弁護人を引き受けたのですか。
10数年前から毎年のように、林さん(死刑囚)から「弁護人を引き受けてほしい」という手紙が何通も届いていました。しかし、別の案件を抱えていて時間が取れず、ようやく時間が出来た昨年9月ごろ、本人と面会すると、とにかく弁護人を引き受けてほしいと。そこまで言うのであればと、裁判記録などを調べ始めたのがきっかけです。
――「第三者による犯行は明白」というのは、どういう意味でしょうか。
事件の記録を検討したり、各新聞記事を読んだりしました。和歌山地裁の判決文に目を通し、証拠や添付書類を一つ一つ丹念に調べたところ、3人の医師の供述調書などから(少なくとも)3か所において、「第三者の犯行(である可能性)」との結論に至りました。とにかく(証拠調べなどが)酷いとの感想です。
――今後の見通しは。
再審事件は細かな規定がなく、(今のところ)どうなるかは分かりません。
この事件をめぐっては、当時から「物証に乏しく、動機も曖昧」などと言われてきた。
毒物鑑定を担当した和歌山県警科捜研は当初、原因毒物を「青酸化合物」と誤鑑定。後に警察庁科学警察研究所(科警研)が「ヒ素」と特定するなど混乱が起きている。さらに、和歌山県警科捜研では2012年に男性主任研究員による鑑定結果の「捏造事件」が発覚。林死刑囚の裁判でも、弁護人が「鑑定資料の収集、保管の過程がずさんで不透明」「保管や受け渡しの際の状況が、写真などの客観的証拠で保全されていない」と捜査の不手際を批判していた。
今後の展開に注目だ。
(日刊ゲンダイの記事から引用)


第三者による犯行であると立証できる根拠は明確ではありません。せいぜい、林死刑囚の犯行と断定するには(複数の証拠に)疑いがある、といったところでしょうか?
最近の大学の法学部の講義内容は分かりませんが、以前は「一点でも疑わしいところがあれば死刑判決は回避すべきだ」とか「疑わしきは被告人の利益に」などなど、刑法や刑事訴訟法の講義では教えていましたし、冤罪事件を取り上げて問題点を指摘する講義もありました
そのためか、「冤罪」との表現に過敏に反応し、「善良な一般市民がある日突然殺人犯に仕立てられ、死刑判決を受ける」といったドラマチックな展開をイメージする人がいます
ただし、林真須美は夫林健治と共謀し、生命保険金を騙し取る犯行を繰り返した人物であり、善良な一般市民とは言い難い人物です
事件は町内の夏祭りで起きたのであり、地域住民でない人物がフラリと立ち寄って毒物をカレーに混入させる可能性は皆無でしょう(カレー鍋は町内の当番の人が順繰りに見ていた)。監視の目が離れた時間があったにせよ、その機会を伺って行動するのは容易ではありませんし、余所者がカレー鍋の近くにいたら目立ちます
よって、カレー鍋の当番になっていた家の誰か、による犯行と推測されます。そして夏祭りのカレーを食べなかった家、というのが林家です
状況証拠といえばそれまでですが、決して証拠のない事件ではありませんし、犯行動機に関しても昨日書いたように林真須美には周囲の人たちを中毒にして憂さ晴らしをしよう(必ずしも殺害する意図はなかった)と思い立つだけの理由があります
せっかくの再審請求ですが、林真須美を犯人だと推定できるだけの根拠を否定し、第三者の犯行だと主張するには不十分だろうと思います
夏祭りの日、林真須美はどうしてこどもたちにカレーは食べるなと命じ、カラオケへ出かけたのでしょうか?
通常なら義理でも、夏祭りに顔を出すくらいはするでしょう。そうしなかったのは町内の人たちと反目していたからでは?
有罪判断の材料となった証拠に疑問を投げかけるのはよいとしても、状況証拠を覆せるだけの主張ができるのか疑問です

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