日立母子6人殺害を考える 初公判目前
2017年に茨城県日立市のアパートで妻とこども併せて6人を殺害した罪などに問われた無職小松博文被告(36)ですが、勾留中に記憶障害になったという報道があり、公判が開かれるのかどうか危ぶまれていました
前回、この事件を取り上げた際は小松被告がなぜ記憶障害に至ったのか報道がないため、勾留中に縊首自殺を図り脳死状態になったためかと思ったのですが、違いました
茨城新聞の記事によれば、持病の高血圧症によって心肺停止になり脳の記憶野がダメージを受けたようです。脳がダメージを受けた場合でも、運動機能や言語などは回復することがありますが、記憶は戻らないでしょう(心因性の健忘や記憶障害とは違います)
そのような状態ではあっても公判停止にはならないようで、小松被告の初公判が今月31日に開かれると記事にはあります。さて、どのような裁判になるのでしょうか?
茨城県日立市田尻町の自宅アパートで2017年10月、妻子6人を殺害したとして、殺人などの罪に問われた無職、小松博文被告(36)の裁判員裁判初公判が31日、水戸地裁(結城剛行裁判長)で開かれる。小松被告は25日までに茨城新聞の接見取材に応じ、「なぜ子どもたちまで巻き込んでしまったのか」と後悔を口にした。勾留中の疾患で事件当時の記憶を失っており、「自分がしてしまったことに本心から向き合えない。(記憶と現実の)矛盾がつらい」と語った。
21日、水戸刑務所(ひたちなか市)の面会室で対面した小松被告は、丸刈りに白いマスク姿。「一時は30キロほど体重が減った。今は体調に問題はない」と話し、逮捕時のふくよかな体格に戻っていた。
これまでの公判や接見での話によると、小松被告は逮捕から約1年後の18年11月26日、日立署で勾留中に突然倒れ、病院に緊急搬送された。持病の肺高血圧症によるもので、一時、心肺停止状態になった。手術で一命を取り留めたものの、後遺症で記憶の一部が欠落。医師からは「心因性ではなく物理的な原因によるもの」として、回復は難しいと告げられた。
病床で意識が戻った小松被告は、周囲に「自分はなぜここにいるのか」「家族と連絡を取ってくれ」としきりに依頼したという。勾留に至った経緯を伝えられると「ただただびっくりした」。
「詳細な資料を読むと、自分がやってしまったのかという思いが半分。信じられない、受け入れられないという気持ちが半分」と困惑を隠せない様子だった。
起訴状などによると、小松被告は17年10月6日午前4時40分ごろ、自宅和室で妻の恵さん=当時(33)=のほか、当時11~3歳の子ども5人を包丁で刺した後、玄関付近にガソリンをまいて放火し、殺害したとされる。その後、小松被告は日立署に出頭。「妻から別れ話を切り出された」などと容疑を認めていた。
現在、事件当時の記憶は失ったものの、以前の家族との日々は覚えている。「子どもたちを連れて動物園に行ったこと、好きなおもちゃを買ってあげたこと、幸せだった頃をよく思い出す」と目を細めた。
「何でこうなっちゃったのかな」。右手を額に当て、伏し目がちにつぶやいた。勾留生活を送る部屋の棚の上には家族の写真を飾り、毎日、手を合わせる。「なんで自分は手を合わせているんだろうって思いが一方ではある」と吐露した。
裁判員裁判に先立つ区分審理では有印公文書偽造罪などに問われ、3月に有罪の部分判決が言い渡された。公判の中で検察官らが示した証拠に記憶はなく「正直、人ごとのようだった。(有罪判決にも)ああ、そうかという感じ」と振り返る。
一方で、「妻と子どもたちに償いの気持ちはある」と話す。
もし記憶が戻るなら-。問い掛けに小松被告はこう答えた。
「戻らないでほしい。どうして子どもに手を掛けたのか、毎日のように考えて夜も眠れず、睡眠剤を飲んでいる。今戻しちゃったら、自分は精神的に耐えられないと思う」
(茨城新聞の記事から引用)
記事にはいかにも子煩悩な父親だったように書かれていますが、現実は違います。仕事もせずパチンコにのめり込み、借金だらけの生活をしていた人物であり、父親らしいことをどれだけしていたのか、と
都合の悪い記憶はすっかり失われ、別人のようになったのか?
さて、起訴状朗読や罪状認否という初公判の手続きですが、小松被告は自身の犯行を記憶していないのですから、どう反応するのでしょう
検察官は被告の供述調書など有罪に持ち込めるだけの材料は揃えていますので、6人を殺害しアパートに放火した罪で死刑を求刑するでしょう
裁判官はどう判断するのか、難しいところです。
ただ、麻薬中毒者による殺人や酒乱の人間が飲酒後に殺人に及んだケースでは、刑事責任を問えるという判例があるわけで、自動的に心神喪失で無罪になったりはしません。事由によっては心神耗弱を認めて減刑するケースはあるのでしょうが
小松被告の場合、犯行時は正常な判断能力があったと認められます。ただ、事件後に病気のため記憶を失っているわけで、そこをどう裁判官は受け止め、解釈し、判断するのでしょうか
犯行時の記憶を失ったとしても、犯行の責任は小松被告の人格に付随するのですから、人格そのものが失われたわけではない以上刑事責任を問える…といった解釈になるのかもしれません
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