茨城一家殺害事件を考える 治療の対象か否か

茨城の小林さん一家殺害事件について、さまざまな報道が続いています。その中から幾つか、情報を整理しておくために書いています
10年前に岡庭容疑者が起こした女子中学生と女子小学生刺傷事件ですが、岡庭容疑者の祖父が自宅裏の土地を売って約1千万円を用立て、賠償金支払いに充てた、とのことです
しかし、被害者側の話では岡庭容疑者及びその親からは1度も謝罪がないままなのだそうです
岡庭容疑者の父親は測量技師として就労していたものの、糖尿病が悪化して指を切断したため、仕事を続けられなくなったという話もあります
しかし、糖尿病の悪化と被害者への謝罪は別ですから、謝罪しないままというのは理解できません。事件が10年ですから、謝罪する機会はいくらでもあったはずです。つまりは謝罪しに行って、被害者家族からあれこれ責められるのが嫌だったから行かなかった、と解釈するしかありません
岡庭容疑者に求められるまま、ナイフを買い与えていた親の責任をどう感じているのでしょうか?
さて、岡庭容疑者は医療少年院送致になったのに、再び凶悪な犯行に走った嫌疑がかけられているのであり、医療少年院での治療や教育の効果はどうであったのか、との疑問が湧くのは当然です
精神科医が以下のようにコメントしています


精神科医「治療困難なケース」 茨城4人殺傷の岡庭容疑者 過去に通り魔事件
岡庭由征容疑者(26)は10年前、少女2人を切りつける事件を起こし、医療少年院に送致され、治療を受けたにもかかわらず、殺人事件の容疑者として逮捕された。
埼玉県内の少年事件の精神鑑定を数多く担当している井原裕精神科医は、治療が困難なケースだったと分析している。
井原裕精神科医「一般論として、医療少年院は精神科病院だと思ってください。一般的には、医療少年院というのは意味があります。ですけど、非常に特殊なケースですね、ある独特の性癖を持っているような少年に対しては、そもそも今の精神医学の中に、そういった人たちを治療して、性的傾向を修正するような治療技術自体がありません」
(岡庭容疑者は、過去に重大な殺人未遂事件を起こしています。医療少年院に入ったものの、直後に殺人事件を起こしています)
井原裕精神科医「少年少女たちは、まだまだ成長しうる余地を残している人たちなので、彼ら彼女たちの完全に可能性を断ち切るようなことはやってはいけないと思う。やっぱり人生の敗者復活戦を用意しなくてはいけない。結局、少年法というものは、愛情を持って育てていこうという考え方の法律。愛情を持って育てようという考え方の法律の中で、今回のような希有な事件が起きたときには、愛情でなんとかなるケースじゃない場合はどうしようもないんですよね、残念ながら。それが現実だと思います」
井原さんは、「事件でご家族が犠牲になったことの重みを考えれば、どうすればこうした悲劇を防げるのか、市民1人ひとりが考えて、国がルール作りを進めてほしい」と話している。
(FNNプライムオンラインの記事から引用)


確かに岡庭容疑者のように強固な殺人衝動を抱えた少年をどう治療し、教育するのか、明確な方法論はありません
神戸の連続児童殺傷事件の酒鬼薔薇聖斗の場合、男性教官が父親役、女性精神科医が母親役になり、育て直しのプロセスを体験させる処遇が行われたと聞いています。酒鬼薔薇聖斗が抱えていた父親や母親への不満や欲求を育て直しのプロセスの中で解消ないし、緩和させる試みだったのでしょう。そして酒鬼薔薇聖斗はいまだ殺人事件を起こしていないのですから、ある程度の成果はあったのかもしれません(本人がどう思っているのかは不明ですが)
医療少年院を出た岡庭容疑者は再び凶悪事件を起こした嫌疑があり、そこだけ見れば酒鬼薔薇聖斗との違いは明らかです
なので、「第二の酒鬼薔薇聖斗」などと安易にレッテルを貼るのは止めるべきで、どこに違いがあるのかをよくよく検討しなければなりません
ヤフーニュースのコメント欄には相変わらず、「少年法を廃止し、厳罰を課すべき」との意見が多く書き込まれています
しかし、当時16歳の岡庭容疑者に殺人未遂で懲役4年以上7年以下の不定期刑を言い渡しても、刑務所を出たら同じように殺人事件を起こした可能性が考えられるのであり、少年法云々の批判は大間違いです。殺人未遂事件ですから10年を超えるような長期刑を科すのは無理筋です
まったく別の話ですが、一部のメディアは2018年1月1日に起きたつくば市の老夫婦殺害事件も岡庭容疑者の仕業ではないか、と書いています
岡庭容疑者がいつ医療少年院を出たのか、はっきりしないので何とも言えません。ただ、つくばの事件で老夫婦は鈍器で殴打され失血死したものであり、ナイフを好む岡庭容疑者の犯行とは思えないのですが

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