熊本高3いじめ自殺 当時の同級生を提訴へ

旭川でのいじめ凍死事件を取り上げたところですが、引き続いて熊本で女子高生が同級生からのいじめを苦に自殺に追い込まれた事件を取り上げます
学校がブラックボックス化し、中で何が行われたのが外から見えない状況を放置したのではこどもたちを安心して学校に通わせることはできません。しかし、学校側は保護者や警察、メディアが教育現場に入り込んでくるのを嫌がり、意図的に学校内を見えないようにしようとする傾向があります
こうして教育現場を過度に特権化して、学校のことは教師が全責任を持つから保護者や警察の介入を許すべきではないという、一部の教育関係者の思い上がりこそが、今日の教育荒廃の一因であると自分は考えます
いじめ問題を解決するだけの能力がない教師が何人集まっても、問題は解決できないと知るべきでしょう
まずは熊本県の女子高生が自殺に追い込まれた件で、遺族が当時の同級生7人と学校の管理者である熊本県を相手取り、損害賠償請求を求めた民事訴訟を起こすと報じた記事から引用します


同級生によるいじめが原因で自殺した熊本県立高校3年の女子生徒(当時17)の母親が、当時の同級生7人と県を相手取り、慰謝料などの損害賠償を求めて熊本地裁に提訴する。母親の代理人弁護士への取材でわかった。
山都町の県立高校に通っていた生徒は2018年に自殺した。県が設置した調査委員会などによると、生徒は同年3月から体育大会で披露するダンスを練習する際、複数の同級生から「おまえが踊れんとが悪かろがー」などと責められ、何度も1人で踊らされるなどのいじめを受けた。生徒は携帯電話で遺書とみられる文章を残し、4月に自宅の納屋で首をつった。
学校が設置した調査委員会は「いじめはあったが、自殺はいじめだけが要因と確定できない」と結論。県が設置した第三者による調査委員会は15年、「心理的負担の限界を超え、結果的に死の選択につながったと考えられる」として、いじめを自殺の要因の一つとしていた。
母親の代理人弁護士によると、母親は当時の学校側の調査が不十分で、加害者側からの謝罪がなかったことなどによる精神的苦痛を訴えている。生徒の携帯電話の履歴や学校の同窓会名簿、学校が実施したアンケートなどに基づき、生徒と同じ学科の同級生7人がいじめに関わったと特定。県の賠償責任も問うという。母親は「学校が信用できない。何があったのか、誰が加害者なのかを知りたい」と話しているという。
(朝日新聞の記事から引用)


これだけでは経緯が把握できませんので、熊本県の設置した第三者による調査委員会の調査結果を引用します


熊本県北部の県立高3年の女子生徒=当時(17)=が昨年5月、いじめをほのめかす遺書を書いて自殺した問題で、県教育委員会の第三者委員会「いじめ防止対策審議会」(会長・岩永靖九州ルーテル学院大准教授)は26日、調査報告書を宮尾千加子県教育長に提出した。女子生徒に対するクラスメートの発言など5件をいじめと認定し、自死の要因になったと判断した。
女子生徒の両親はこの日、「知華(ともか)」さんという名前や顔写真を初めて公表。父親(43)は「娘が生きていたという思いを伝えたくて出した。(報告書で)知華が傷ついたことがよく分かった。名誉が回復されたと感じている」と話した。
報告書によると、昨年5月16日、2年男子が友人らと撮影し、写真共有アプリ「インスタグラム」に投稿した動画に知華さんが写り込んでいたことがいじめの引き金になった。17日に動画を見た知華さんのクラスメート5人が2限目の授業中に「死ねばいい」「彼氏がいるなら彼氏を大事にせなんやん」などと発言。知華さんは3限後に早退して自宅で自殺を図り、翌18日に亡くなった。
第三者委は、授業中の発言や、2限後にクラスメートが動画を投稿した2年男子の所に知華さんを連れて行き、偶然写り込んだのか確認した行為など5件を「いじめ」と認定。授業中の発言の一部は遺書に記載されており「自死に至った要因と認められる」とした。
宮尾教育長は「二度とこのような悲しい事案が起こらないよう、学校とともに取り組みたい」と述べた。
第三者委調査報告書要旨
■昨年5月16日放課後に2年の男子生徒らを写した動画に女子生徒が写り込む。翌17日始業前に写真共有アプリ「インスタグラム」に投稿された動画をクラスメートが確認
■クラスメートが(当時女子生徒と交際していたとされる)同じクラスの男子生徒に動画を見せ「これどう思う」と言うなどしたやりとり▽授業中にこの2人を含む5人が「死ねばいい」「彼氏いるなら彼氏を大事にせなんやん」などと発言したこと▽男子生徒が動画を投稿した2年男子の所に女子生徒を連れて行き、偶然写り込んだのかを確認したこと-など5件を「いじめ」と認定
■「死ねばいい」などの発言の一部は遺書にも記載されており「自死に至った要因と認められる」。女子生徒は心理的視野狭窄(きょうさく)を起こし、自死につながった
■学校は以前から「死ねばいい」など粗暴な言葉が平然と飛び交う言語環境にあった。スマートフォンの使用などについて規範がなし崩し的に揺らいでいたことも自死の遠因
(西日本新聞の記事から引用)


これだけでも何が彼女を自殺に追い込んだのか、肝心なところは分かりません。たまたま撮影した動画に偶然、女生徒が写り込んでしまったこと(撮影者である生徒は邪魔になったと立腹した)をきっかけに、執拗ないじめが繰り返されたと思われます
女生徒の自殺後、高校側は校長や保護者からなる調査委員会を設けたのですが、「いじめはあったが、自殺はいじめだけが要因と確定できない」と結論付けました。校長が調査委員会のメンバーに加わるというのは変です(校長は当事者ですから、これでは第三者による調査委員会にはなりません)。調査結果も自殺はいじめだけが要因ではない=家庭にも問題があった、との内容になったのは校長の意向を強く反映した結果でしょう
実際、学校の調査委員会の報告は主要部分が黒塗りされた状態で両親に手渡されており、これでは学校内で何があったのかさっぱり分かりません。両親が不信感を懐き、熊本県に再調査を求めたのは当然です
いじめによる問題ではこのようにして学校側が事実の隠蔽を図るのが常態化している気がします。ゆえに損害賠償を求めて提訴するのも理解できます。熊本県は隠蔽を図った当時の校長らの責任を問い、処分するべきでは?

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