千葉ベトナム女児殺害を考える 控訴審も無期懲役判決
控訴審でも渋谷恭正被告は、「一審千葉地裁の判決は事実誤認がある。DNA鑑定のために使用した煙草の吸殻はマンションのごみ置き場から警察官が令状もなしに無断で持ち去ったものであり、違法な捜査にあたるので証拠能力はない」と主張していました
東京高裁はこの渋谷被告側の控訴理由を退け、無期懲役とした千葉地裁判決を支持する決定を言い渡しています
検察は死刑が相当であると控訴していたのですが、東京高裁は「犯行は計画的なものとはいえない」として死刑を回避しています
千葉県松戸市の市立小3年の女児(当時9)が2017年に殺害された事件で、殺人や強制わいせつ致死などの罪に問われた同小の元保護者会長・渋谷恭正被告(49)の控訴審判決が23日、東京高裁(平木正洋裁判長)であった。高裁は無期懲役とした一審判決を支持し、検察・弁護側の双方の控訴を退けた。
被告は17年3月、登校中の女児を自身の車で連れ去り、首を圧迫して窒息死させ、同県我孫子市に遺棄したとして起訴された。一審・千葉地裁の裁判員裁判は、被告の車が事件当日に遺棄現場近くの監視カメラに映り、遺体の付着物から被告のDNAが検出されたなどとして犯人と認定。ただ計画的な殺人ではなかったとして、検察の求める死刑にはしなかった。
控訴審では弁護人が代わり、県警が鑑定資料としてマンションごみ置き場から被告のたばこの吸い殻を無断で持ち去った点の違法性も争点になった。弁護側は「住居侵入罪にあたる」として、将来の違法捜査をなくすためDNA鑑定を証拠から排除するよう主張。高裁はごみ置き場への立ち入りには令状が必要で「捜査は違法」としたうえで、「令状主義を没却するような重大な違法ではない」として証拠能力を認めた。
(朝日新聞の記事から引用)
前にも書いたように、控訴審であるからといって渋谷被告側が無罪の証明となる新たな証拠(映像証拠や物、証言)を提出したわけではなく、警察の捜査段階におけるDNA採取の違法性を争う裁判でした
犯行がなされたと推定される時間帯に渋谷被告が別の場所にいて、別の誰かと会っていたのであれば無罪を証明する証人たり得たわけです
しかし、渋谷被告は無罪を証明する証拠も証人も提示できないままでした。元々、渋谷被告の無罪を証明する人物など存在しないのですが
控訴審の判断としては、こみ置き場に捨てられた煙草の吸殻であっても、これを押収するには令状が必要であり、本件のように令状なしに警察が入手したのは「違法な捜査」だと断じています。が、それでも重大な違法ではないから証拠としての能力に疑いは生じないと許容しており、ここは気になるところです(過去には整形手術をしたり偽名を使い逃亡を続けた松山ホステス殺人事件の容疑者福田和子を逮捕するため、彼女が手を触れたコップを警察が密かに入手し、指紋を照合するという捜査もありました。令状なしで指紋やDNAを入手するのは、警察としては当たり前のように行っている捜査活動です)
ともあれ、渋谷被告の控訴は最初から無理筋であり、1審で有罪判決を受けた悔しさ、諦めの悪さから控訴したものと思われます
また、被害者遺族にすれば死刑を望むところではありますが、「被害者が1人の場合は死刑を回避する」という判例重視の傾向が特に強い高裁で、1審の無期懲役判決を破棄して死刑を言い渡す可能性はありません。これは最高裁に上告したところで変わらないでしょう
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