老人ホーム睡眠薬殺人 最高裁判決懲役24年

仕事を終えて帰宅する同僚職員に睡眠薬入りのコーヒーやお茶を飲ませ、意識を失った状態で交通事故を起こさせたとして起訴された元准看護師波多野愛子被告の事件では、一審千葉地裁が交通事故に巻き込まれて負傷した対向車の運転者に対しても殺意があったものと認め、懲役24年(求刑は懲役30年)の判決を言い渡していました
控訴審の東京高裁は千葉地裁判決を、対向車の運転手にまで殺意を認めるのは誤りだとし、審議をつくすべきと差し戻していました。
上告審となった最高裁判所では一審千葉地裁の判決を認め、懲役24年の刑が確定しています


千葉県印西市の老人ホームで平成29年、睡眠導入剤入りの飲み物を同僚らに飲ませ、交通事故などで6人を殺傷したとして殺人や殺人未遂などの罪に問われた元職員の准看護師、波田野(はたの)愛子被告(74)の上告審判決で、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は29日、殺意の一部を認めなかった2審東京高裁判決を破棄し、被告側の控訴を棄却した。懲役24年とした1審千葉地裁の裁判員裁判判決が確定する。4裁判官全員一致の結論。
2審判決は「事故に巻き込まれた対向車の2人に対する殺意までは認められない」として1審判決を破棄、審理を地裁に差し戻した。これに対し第2小法廷は、対向車の2人が事故を避けられたとは限らず、2人が死亡することも「十分あり得る」などと指摘。殺意を一部否定した2審判決は「誤りだ」とした。
判決によると、波田野被告は29年2月、准看護師として勤務していた老人ホームで、同僚の山岡恵子さん=当時(60)=に睡眠導入剤入りの飲み物を飲ませた上、車を運転して帰宅するよう仕向け、交通事故を起こさせて殺害。対向車の男性にもけがをさせた。同様の手口で同年5~6月に別の同僚2人と同乗者、事故の相手の計4人にも重軽傷を負わせた。
(産経新聞の記事から引用)


波多野愛子被告は現在74歳で、裁判の途中から犯行動機を質問されても「忘れた」とか「思い出せない」と答えるようになっています。反省していない証拠、と被害者は憤っていたのですが、痴呆症の可能性も否定はできません
ただし、裁判の途中で痴呆症になったとしても、現に波多野被告の犯行によって1人を死亡し4人に重軽傷を負った事実に変わりはないのであり、被告が責任を負う必要があります。波多野被告が被害者に対してどこまで補償を行ったのか、記事では触れていないので不明ですが、十分な資産があったとは思えないので補償などほとんどしていないと推測されます。被害者と示談が成立しているとの報道もありません
74歳で痴呆症を発症したと推測される被告をこの先24年間、刑務所に服役させるというのは非現実的な話ではあるものの、それはまた別の問題としておきましょう
肝心の犯行動機ですが、はっきりしません。勤務先の施設が正看護師の採用を計画したため、高齢で准看護師の資格しかない波多野被告は、自分がクビになると邪推し、同僚職員への嫌がらせを計画した、とされているものの納得できません
職場で必要とされなくなりつつある波多野被告は、同僚たちの言動から自分が差別されていると感じたのでしょうか?
何人もの人を巻き込んだ理不尽な事件であるのに、犯行動機は曖昧という何とも後味の悪い事件です
波多野被告は自分がどうして刑務所にいるのか、それさえ思い出せないまま獄舎の中で日々を過ごす結果になります

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