山形女医殺害事件を考える 懲役18年の判決
山形県東根市のマンションに侵入し、女性医師を殺害した山形大学学生、加藤紘貴被告の判決公判がありました
さて、この裁判では公判廷でのやりとりを詳細に伝える記事がなかなか見つからず、犯行の経緯や被告の主張といった細部が不明のままで、どうにも掴みどころのないままブログで取り上げてきました
公判での検察側、弁護側の主張を取り上げた産経新聞の記事が見つまりましたので、まずはこの事件の概要に触れた部分を引用し、それから判決に話を進めます
起訴状によると、加藤被告は令和元年5月19日午前5時19分ごろ、山形県東根市のマンションで、眼科医の矢口智恵美さん=当時(50)=の部屋に侵入し、被害者宅にあったゴルフクラブで殺意をもって矢口さんの頭部を複数回殴打し、頭蓋内損傷で死亡させたとしている。
加藤被告は同年6月12日に山形県警に殺人などの容疑で逮捕されたが、2人に接点はなく、残忍な犯行に駆り立てた動機などが謎とされていた。
公判で検察側が明らかにしたところによると、加藤被告は事件前日の5月18日夕方、性的関係を目的にインターネットで知り合った県内の女性に連絡したが断られた。その後、近くの公園でコンビニで購入した酒を飲み、風俗店を探したり、別の女性にも会おうとしたがうまくいかず、午後10時ごろから、現場周辺で無施錠の女性宅を探し始めたという。
翌19日午前5時ごろ、加藤被告は、鍵がかかっていない、女性用の靴がある部屋を発見し、周囲を確認した上で侵入。廊下にあったゴルフクラブを手に取ってリビングに入ったところ、矢口さんと鉢合わせになったため、ゴルフクラブで頭部を何度も殴打したという。検察側は一連の行動は「性的欲求を満たすための誠に身勝手な行動」とした。
公判で加藤被告は、矢口さんとは面識がなく、犯行の2日後に初めて、自分が殴打した相手が女性だと知ったと述べた。弁護側は、加藤被告は現場が女性宅とは認識しておらず、性的暴行の目的はなかったと主張している。
意識障害の有無
公判では、殺意の有無とともに、加藤被告が服用していた抗うつ剤と飲酒の併用で意識障害が生じていたかが主な争点になった。
加藤被告は公判で、1回目の殴打は認めるものの、2回目以降は「記憶がない、覚えていない」と繰り返した。
加藤被告を精神鑑定した医師は「1回目の殴打後、パニックによる解離性反応や時間とともに嫌な記憶は蓋をして消し去りたい『健忘』が起きた可能性がある」と証言。その一方で、「抗うつ剤と酒との併飲で意識障害は考えられない」との見解を示し、鑑定時に「(加藤被告は)複数回殴打したと述べていた」と、公判での加藤被告の証言を否定した。
検察側は、精神鑑定の医師の証言や捜査段階での被告の証言から、「意識障害などなく責任能力に問題はない」とし、「殴打に危険性を認識し、殺意はあった」と指摘した。
弁護側は「パニックになっての殴打で、偶発的犯行で殺意はなかった」と主張。加藤被告は終始、「覚えていない」と繰り返し、最後まで犯行動機などについて口にすることはなかった。
(産経新聞の記事から引用)
犯行の細部について加藤被告が「覚えていない」と主張するのは、逮捕当時からです。精神鑑定を担当した医師は、抗うつ剤と飲酒の影響で意識障害は起こらないとし、犯行時の生々しい記憶を封じ込める「健忘」によるものと説明しています
判決では意識障害による心神耗弱を認めず、責任能力はあったと判断し、懲役18年の実刑判決を言い渡しています
「情状酌量の余地はない」と述べたとおり懲役20年に対して18年の実刑判決ですから、弁護側の主張はすべて退けられた格好で、弁護人は大いに不満でしょう
おそらくは、「犯行の細部を覚えていない」と主張する被告を後押しする形で弁護人は犯行時の心神耗弱説を編み出し、裏付けとして抗うつ剤と飲酒による副作用を裏付けに用いたのかもしれません
11日の判決公判で今井理裁判長は…
(裁判長)
「ゴルフクラブで何度も殴打するという執拗で残酷な犯行。被害者に落ち度はなく突如命を奪われるという恐怖・痛み・無念さは計り知れない」
こう厳しく指摘しました。
さらに「性的目的があったと推測が出来、酌量の余地はない」として検察の懲役20年の求刑に対し、懲役18年の実刑判決を言い渡しました。
判決を聞くと加藤被告は、ため息をついたり肩を落とすような仕草が見られました。加藤被告の弁護人によりますと、控訴する方針だということです。
(FNNの記事から引用)
まったく面識のない女性宅に侵入し、ゴルフクラブで滅多打ちにして殺害するという犯行ですから、何をどう言い繕おうと情状を斟酌する必要はないと裁判官が判斷し、裁判員も同調したのは当然なのかもしれません
しかも、公判において「覚えていない」と主張し、マンションに侵入した目的についてはまったく語ろうとしないのであれば、反省していないと受け取られます。公判の場で加藤被告が被害者や遺族に対して謝罪の言葉を述べたのかどうか、報道にはないので不明ですが
加藤被告は判決が不服で控訴するようです。しかし、控訴するにしても一審と同じ心神耗弱説で減刑を求めるのは無理があると思います
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