新入社員を自殺に追い込む研修 ゼリア新薬工業

企業で行われる研修という名の洗脳に違和感と嫌悪感を抱く自分は、これまでもブログで取り上げてきたところです
今回はゼリア新薬工業で行われた新人研修で自殺した社員の遺族が、会社側と和解したとの報道を取り上げます。例によって新人研修は外部の研修請負企業に丸投げで行わえました。研修を引き受け、講師を派遣していたのはビジネスグランドワークス社(通称BGW)です
まず、ゼリア新薬工業がなぜ新入社員を自殺に追い込むような研修を実施したのか、その狙いを考えます
おそらく役員が、「最近の新人はだらしない。もっとビシバシ鍛えて、意識を変えなきゃいかん」と思ったのがそもそもでしょう。猛烈サラリーマンとして滅私奉公し、出世の階段を駆け上がった役員にすれば、若い社員がだらしなく映るわけです
そこに研修請負企業が登場し、「新人研修で意識改革を行い、企業戦士に生まれ変わらせます」と営業トークを展開、研修の様子を収めた動画など見せて役員の眼鏡にかなったものと推測します
では、新人研修という名で何が行われていたのでしょうか?
インターネットからいくつか、情報を拾ってみました
ゼリア新薬工業の研修は4月から8月までの長期間であり、指定された宿泊施設にカンヅメにされ、週末は帰宅が許される仕組みだったようです。ビジネスグランドワークスの講師が担当した意識行動改革研修はそのうちの3日間ですが、自殺したAさんを精神的に追い詰める内容だったと思われます


何が起きていたのか。
中央労基署の認定によると、労基署が注目したのは、4月10日〜12日の3日間、ビジネスグランドワークス社が請け負って実施した「意識行動改革研修」。その中で、Aさんの「吃音」や「過去のいじめ」が話題になった。講師から過去の悩みを吐露するよう強く求められた上で、Aさんはこうした話をさせられていたという。
Aさんは、研修報告書に、次のように書き残していた。
「吃音ばかりか、昔にいじめを受けていたことまで悟られていたことを知った時のショックはうまく言葉に表すことができません」
「しかもそれを一番知られたくなかった同期の人々にまで知られてしまったのですから、ショックは数倍増しでした。頭が真っ白になってその後何をどう返答したのか覚えていません」
「涙が出そうになりました」
一方、研修の講師は、Aさんの報告書に赤字で次のようなコメントを残している。
「何バカな事を考えているの」「いつまで天狗やっている」「目を覚ませ」
どのような研修だったのか。
原告たちの聞き取りに対し、ゼリア新薬の新人研修担当者は、「自分も受講したことがある」として、次のように供述したという。
「軍隊みたいなことをさせる研修だなと感じました」
「いつも大きな声を出す必要があり、機敏な動きを要求され、指導員が優しくない」
「指導員は終始きつい口調。大きな声で命令口調だということです」
「バカヤローといった発言も多少はあった」
「最終的には感極まって涙を流す受講者も出るような研修」
「研修会場はある種異様な空間でした」
「個人的にはもう受けたくない」
「途中で体調不良者が出ることもあります」
中央労基署は、このビジネスグランドワークス社の実施した「意識行動改革研修」の中で「相当強い心理的負荷があった」と認め、それが原因でAさんは統合失調症を発症して、自死に至ったと結論付けた。
なお、ビジネスグランドワークス社の研修は3日間だけだったが、それ以外の研修期間中、土日に帰るにも外泊許可が必要だった。会社が、他の研修生たちに面談した結果として、「私も当時は3時間しか寝られなかった」という告白があったという。
Aさんは入社後、自宅にゆっくり帰ってきたのは、ゴールデンウィークの期間中だけだったという。玉木弁護士は「宿泊施設にほぼ拘束され、6時間の睡眠も確保できないような長時間研修を受けていた」と指摘する。
(バズフィード・ニュースの記事から引用)

この3日間の研修ですが、中日は朝6時から始まって夜9時までとか、首を傾げざるを得ない長時間のプログラムです。中身は研修を受ける新人社員の前で、自身のことをあらいざらい告白させるとか、そんな内容でしょう。それを意識改革と称しているなら呆れて物が言えません
ゼリア新薬工業が他にどのような新人研修を実施していたかは不明ですが、こんな研修をやって何の役に立つのかと(本当に意識改革なんてできるのか?)と思ってしまいます
社員を自殺に追い込むような研修は間違いであり、無駄であり、企業にとっても損失です
ちなみにゼリア新薬工業はAさんの自殺もあって、意識改革研修は止めたのだとか
Aさんの遺族はゼリア新薬工業とビジネスグランドワークス、研修の講師を相手に1億500万円の賠償を求める民事訴訟を起こし、和解という形で決着しました
和解内容は非公開ですが、講師が原告らに哀悼の意を表わすとともに、和解時に100万円の解決金を支払うことなどで合意した、と伝えられています。この講師は「元」と報道では表記されていますので、ビジネスグランドワークスとの契約は切られてしまったと推測されます。トカゲのなんとかでしょう(契約期間終了により、と説明されるのでしょうが)
以上書いてきたのは私的な見解です。引用した元記事に依存した上での私見であり、裏付けは取ってはいません
賠償を求めたのは1億500万円ですが、和解金として払われるのは半分程度でしょう。Aさんの遺族が告発したことにより、大学を出て就職した企業が、かようなバカな研修をやって新入社員を自殺に追い込んでいると知れ渡り、それをやめさせ、犠牲になる若者を1人でも減らすのであれば十分に意義があったと考えます

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