鹿児島5人殺害事件を考える 岩倉被告初公判

2018年、鹿児島県日置市で親族や知人併せて5人を殺害した岩倉知広被告の公判が始まっています
岩倉被告に対し起訴前に精神鑑定が行われたのですが、通常は3カ月要するところを7カ月もかけて実施されました
精神鑑定の結果、岩倉被告に被害妄想をともなう精神障害があったとされていますが、鹿児島地検は刑事責任を問えると判断して起訴しています
ですから、裁判では岩倉被告の責任能力が争点の1つです


被告が一部否認 日置の5人殺害事件初公判
「父を殺すつもりはありませんでした」。日置市の民家で2018年、親族ら5人を殺害したとして、殺人と死体遺棄の罪に問われている無職岩倉知広被告(41)は18日、鹿児島地裁での初公判で口を開き、起訴内容の一部を否認した。親族に迫害されていると思い込んだ被告の精神障害が起こした事件として弁護側が減刑を求めた一方、検察側は完全責任能力があったと主張した。
この日の開廷は午前11時。岩倉被告は黒の長袖とズボン姿で現れた。一昨年の逮捕時より痩せたように見え、メガネをかけて伸びた髪を後ろに束ねていた。
岩倉被告は罪状認否で、亡くなった5人のうち伯母ら3人の殺害については「間違いありません」と起訴内容を認めたが、父正知さんと祖母久子さんへの殺意は否認。父については「父が包丁を持ち出したので、組み合いになった」と語り、弁護人が正当防衛を主張した。
続く冒頭陳述で、弁護側は重い精神障害が「事件の本質」と強調。04年前後に妄想性障害とわかり、次第に悪化し、事件当時は深刻な事態に陥っていたとした。
「久子さんや伯父を中心とする一派が存在し、彼らが強大な権力を行使して被告を社会的に抹殺し、水道水に毒を盛るなどの直接的な手段で危害を加えている」。弁護人は妄想の内容も説明。一方、岩倉被告が唯一信頼を寄せていたのが正知さんだったという。
弁護側によると、事件の引き金は、テレビを見ようと訪れた久子さん宅で受けた言葉。久子さんから「相撲取りみたいだね」と言われ、母方の祖父母の悪口にも及ぶと、激しい怒りで感情を抑えきれず、止めに入った正知さんを左手で押さえ、久子さんの顔を何度も殴り続けたという。
瀕死(ひんし)の久子さんを見て我に返った岩倉被告はテーブルを挟んで正知さんと話し合った。救急車を呼ぶので帰れ、という正知さん。岩倉被告は父に危害を加えることはしないと伝えたうえで、「復讐(ふくしゅう)したい人間がいる。終わるまで黙っててほしい」と頼んだ。
その後、いったん席を外していた正知さんが両手に包丁を持ち、戻ってきた。「お前を殺しておれも死ぬ」と言われた岩倉被告は、包丁を振り落とそうとして父の首に腕を回し、締め上げた。「なぜ自分を信じてくれないのか」。気づくと父は絶命。しばらく遺体に寄り添い、涙を流していたという。
弁護側によると、岩倉被告が「復讐」を考えていたのは伯父。2人の遺体を山林に埋めた後、久子さん宅にとどまったが、それは伯父が立ち寄る可能性が高いと考えたためという。実際に現れたのは、伯父の頼みで安否確認に来た3人。岩倉被告は3人も自分を迫害する一派と錯覚、復讐の対象として殺害したという。
こうした訴えを検察側は否定。冒頭陳述で、岩倉被告は元来、衝動的で攻撃的、他罰的な性格だったと指摘。長らく折り合いが悪かった久子さんに一方的に重傷を負わせた後、止めに入った正知さんを「信頼していたのに裏切られた」などと感じて殺害。父を殺したことを久子さんのせいだと思い込み、とどめを刺すように首を絞めて久子さんを殺害したとした。
2人の死体を遺棄した後は、一方的に恨みを募らせていた伯父の殺害を考えたが、目の前に現れた伯母ら3人にも怒りを覚え、事件の発覚を遅らせようと立て続けに殺害したという。
検察側は「(被告人は)被害妄想があり、精神障害があった」と認めたが、その症状は軽度で「犯行に与えた影響は軽微だった」とし、完全責任能力があったと主張。正知さんと久子さんへの殺意も明らかで、正知さんへの正当防衛も「許容されない」と否定した。
第2回公判は19日午前11時から開かれる。
(朝日新聞の記事から引用)


殺害された親族・知人に明らかな落ち度があったわけでもなく、岩倉被告の八つ当たりの巻き添えを食って殺されたのですから、とても岩倉被告を擁護する気にはなれません
そして何より5人の命を奪ったという凶悪な犯行です。岩倉被告は凶器を使うのではなく、自身の手で5人を絞め殺していますので、そこには強い殺意があったと解釈できます
精神障害があったという鑑定結果からすれば、罪一等を減じて無期懲役にするべきでしょう。裁判官は死刑に処すか、無期懲役にするか、難しい決断を迫られます
もちろん過去には、複数人を殺害しても精神障害を理由に死刑を選択せず、無期懲役を言い渡している判例が多数あります。前例(過去の判例)に従い、無期懲役判決を下すのがもっとも無難な選択でしょう

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