前橋連続強盗殺人土屋和也被告 最高裁も死刑判決支持(その1)
2014年の暮れ、群馬県前橋市で高齢者を狙った強盗殺人事件2件を起こし、2人を殺害し1人に重傷を負わせた土屋和也被告について、最高裁判所は死刑判決を支持し、上告を棄却しています
弁護側は「犯行の背景には土屋被告の不遇な生い立ちによるパーソナリティー障害がある」と指摘し、無期懲役が相当と訴えていました
しかし、最高裁は「強盗の決意、殺害の実行などは被告の意思によるものだ。人命軽視の態度は強い非難を免れない」と述べた上で、「執拗にバールで殴打し、包丁で突き刺した殺害時の態様には障害の特性が現れている」とし、「それを考慮しても、刑事責任は極めて重大だ」と死刑を支持しています。これは裁判官5人全員一致の意見です
控訴審判決の時点でこの事件に1度言及したのですが、あらためて犯行の内容と、パーソナリティ障害の影響について2回に分けて取り上げようと思います
今回は土屋被告による犯行の内容が中心です
1件目の強盗殺人で土屋被告が奪った金は数千円にすぎないとされます。93歳の一人暮らしの老人を殺害して、仏壇やタンスを漁ったものの現金はそれくらいしか見つけられなかったのでしょう
土屋被告は「年寄は小金を持っている。抵抗もしないので簡単に奪える」と犯行動機を語っているのですが、あまりに行き当りばったりの犯行です。弁護人は「計画的な犯行ではなかった」と主張していました
が、事前に凶器となる刃物を準備して家に侵入し、家人に出会ったら躊躇なく殺害しているのであり、それで「殺すつもりはなかった」と土屋被告が主張しても通用しません。最初から殺すつもりだったと解釈した方が自然です
つまり人を殺害する行為に迷いもためらいもなく、冷静冷酷に手を下しているわけです。ここらがパーソナリティ障害とされる所以ですが、それは次回取り上げます
当時、土屋被告は勤務していた警備会社を辞め、無収入であり、課金ゲームにはまってサラ金から100万円以上借金している状態でした
食うに困った挙げ句、盗みをしようと決意したのだとか。そして実行したのが老人を狙った強盗です。しかも、侵入したら家人を即殺害するという荒っぽい手口です
これは他人との会話が苦手でうまく交流できない土屋被告ですから、刃物で脅して「金を出せ」云々のやりとりは無理だと半ば自覚した上でのスタイルだったと推測できます
土屋被告の生い立ちなどについて、週刊女性が記事を掲載していますので関心のある方は一読ください
ただ、このライターは「死刑囚との面会」という自身の行動に陶酔し、感情移入しすぎているきらいがあります。そこは割り引いて読んだ方がベターでしょう
土屋被告の生い立ちが悲惨で、施設暮らしの上にいじめられ、身の置所のない少年時代を過ごした事実をもってしても、老人を2人殺害し1人に重傷を負わせた罪は消えないのですから
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