福岡女性転落殺人を考える1 懲役25年求刑

2015年に福岡県八女市で、知人女性に睡眠薬を飲ませた上で橋から転落させ(水面から55メートルもの高さ)、殺害した疑いで起訴された佐久田なつき被告の裁判について取り上げます
犯行の手口からして刑事ドラマのごときで、その後は解離性人格障害(いわゆる多重人格)を装って佐久田被告は責任能力を欠いているかのように振る舞っています
しかし、検察は論告求刑公判で佐久田被告の犯行を悪質と断じ、懲役25年を求刑しました。本来なら事件の経緯や逮捕のきっかけなど時系列に沿って取り上げるべきでしょうが、まずは昨日行われた論告求刑公判に言及します


福岡県八女市の山中で2015年、知人女性(当時25歳)を高さ約55メートルの橋から落として殺害したなどとして、殺人罪などに問われた住所不定の無職、佐久田なつき被告(33)の裁判員裁判の論告求刑公判が6日、福岡地裁(柴田寿宏裁判長)であり、検察側は「無慈悲で冷酷な犯行だ」として懲役25年を求刑した。公判で佐久田被告は無罪を主張。目撃証言など被告の犯行を示す直接証拠がない中、15日の判決での裁判員らの判断が注目される。
検察側は論告で▽被害者の池田麻里さんの遺体から睡眠薬など4種類の薬剤成分が検出され、被告は薬を処方し効能を事前に調べていた▽被告は無料通信アプリ「LINE(ライン)」で架空の男性になりすましたアカウントで池田さんに薬を飲むようにメッセージを送り、事件直後に消去した▽被告が知人に「自殺にみせかける」などと殺害をほのめかしていた――など複数の状況証拠を示した。
一方、弁護側は、橋に残る指紋の状況から池田さんが欄干の外側に立っていたとみられるとして、「どのように墜落したか立証できていない」と指摘。さらに池田さんが薬を飲んだ時間や量を検察側が特定できていないとして「検察は有罪立証に失敗した」と反論した。
この日の公判では池田さんの父実さん(65)が意見陳述し、「睡眠薬まで飲ませて未来を奪った。法の許す限り重い処罰を希望します」と涙ながらに訴えた。
起訴状によると、佐久田被告は15年4月29日未明、殺意をもって以前同居していた池田さんに睡眠薬などの薬を飲ませ、車で八女市の耳納(みのう)大橋へ連れて行き、橋の上から落として殺害したなどとされる。
(毎日新聞の記事から引用)


被害者の体内から睡眠薬4種類が検出されたと記事に書かれています。佐久田被告は何が何でも池田さんを殺害してやろうという強い決意があったのでしょう
同時に自分の考え出した犯行の手口(薬を飲ませ、意識が朦朧としたところで橋の上から突き落とす)に絶対の自信を持っており、執着心の強い性格をうかがわせます
裁判では事件当日、池田さんと行動をともにしていたことを佐久田被告は認めており、池田さんの体内から検出された睡眠薬も「自分が池田さんに渡したもの」と認めています。が、これは想定外であり、取り調べ段階で警察から追及され認めざるを得なかったのでしょう(Nシステムで走行車両の記録が残っていたり、街角の防犯カメラに画像が記録されていたり)
通常ならそこで観念するところですが、佐久田被告は開き直り、無罪を主張しています
弁護人の主張は上記の記事のとおりで、「検察は有罪立証に失敗した」と真正面から喧嘩を売るような真似をしており、状況証拠だけでは有罪にできないと強弁しています
犯行の動機は別途取り上げるつもりですが、池田さんと1人の男性を奪い合い、負けたため女の執念に火がついて殺害を決意したようです
その執念やエネルギーを自身の生活向上のため利用すればよいものを、佐久田被告は恋敵殺害に注ぎ込んでしまったのでしょう
佐久田被告の異常なまでの執念は、同僚ホステスを殺害した後、整形手術をしてまで逃走を続けた福田和子受刑者を思い起こします
あるいは、結婚話で男性を騙し、殺害して財産を奪おうとした木嶋佳苗に似たものを感じます(その執念に似たものを感じるというだけで、同種の事件と断じるわけではありません)
あるいは古いところで、1994年に起きた福岡美容師バラバラ殺人を想起させます。美容師の女性のバラバラ死体が九州各地で発見され、最初は変質者による猟奇殺人と思われたのですが、犯人はかつて同じ美容室で働いていた女性上司が犯人でした。女性でもその気になれば遺体をバラバラに解体できることを知らしめた事件です
次回は事件の経緯を中心に取り上げるつもりです

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