「君の名は。」は「セカイ系の完成モデル」
週刊女性の2016年10月4日号に掲載された新海誠監督作品「君の名は。」についてのレビューを取り上げます
映画パーソナリティであるコトブキツカサ(漢字で表記すると寿司)が「君の名は。」をセカイ系の完成モデルだと激賞しており、それを考えたいと思ったからです
映画パーソナリティであるコトブキツカサ(漢字で表記すると寿司)が「君の名は。」をセカイ系の完成モデルだと激賞しており、それを考えたいと思ったからです
以下、週刊女性の記事から引用します
『君の名は。』の勢いが止まらない!「ポスト・ジブリ」「“セカイ系”の完成モデル」
青春を終えた人にも刺さる物語
「『君の名は。』は、ポスト・ジブリと言ってもいいと思います。日本のアニメといえばジブリですが、若い人たちにとっては親世代の作品です。やっと自分たちの世代の映画が登場したという感じで、10代と20代が映画館に足を運んでいますね」(映画パーソナリティーのコトブキツカサ氏)
恋愛ゲームの要素を取り入れたことが若い世代に通じた。
「新海監督はもともとゲームのクリエーターです。観客は、自分自身がプレーヤーになった気持ちで、作品にのめり込める作りになっています。男女のすれ違いは誰もが経験していますから、どんな年代の人でも主人公に共感できるんでしょう」(前出・コトブキ氏)
監督・新海誠の世界観に入り込む
新海監督の手がけた作品の世界観は特徴的だ。
「“セカイ系”の完成モデルだと思うんですよ。“セカイ系”というのは、主人公が男性ならばヒロインの女性、女性ならば恋い焦がれる男性との友達以上恋人未満の関係に重きを置きつつ、世界の重大な危機や終末論を描いた作品を指します。『エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』が該当します。新海監督の得意とするジャンルです。
今回は彗星の落下をモチーフにして魅力的な物語を作り上げました」(前出・コトブキ氏)
自分と重なる魅力的キャラクター
ラストシーンで涙を流す観客が続出する。どうして泣くほど感動してしまうのだろう。
「前半はほのぼのとした青春コメディー風ですが、途中で流れが変わってハラハラする展開に。最後にホッとして泣いてしまうんですね」(映画ライターの小泉浩子氏)
共感できるキャラクター像も起因している。
「“高校生のとき、こうだったなー”と思う場面がたくさん出てきます。友達とご飯を食べたり、ケンカしたりするような日常が、エンターテインメントとして描かれているのがすごいと思います」(前出・小泉氏)
(以下、略)
コトブキツカサは芸人、映画コメンテーターなどをこなす人物です
特段、彼の発言にツッコミを入れようというわけでもなく、否定したくて取り上げたわけでもありません。単に「セカイ系アニメの完成モデルとはなんぞや?」と思ったからです
セカイ系の定義そのものはいくつも提唱されていますので、ここで無理に1つに絞り込む必要はないのでしょう。作り手、あるいは観客が「これはセカイ系だ」と思ったのならセカイ系だと解釈できます(いくつかの条件を提示しその条件を満たすものがセカイ系だとキメキメで解釈するのではなく、ゆるーく解釈してよいのではないでしょうか?)
重要なのはボーイ・ミーツ・ガールと、2人を取り巻く事件、加えて事件との関係性といったところでしょうが、さまざまな展開があってよいのですし、ガール・ミーツ・ガールというパターンもあり得るのでしょう
加えて事件が必ずしも世界の崩壊に結びつく絶体絶命のピンチ、である必要があるとも思えません。日常のささやかな、事件とも呼べないトラブル、またはアクシデントでもセカイ系は成立するのかもしれません
以前、当ブログで言及した劇場版アニメ「HELLO WORLD」をインターネットの有料配信を利用して視聴しました。これも紛れもなくセカイ系のアニメでしょうが、そこまで面白いとは思えなかったというのが正直なところです
HELLO WORLD
SFの要素を盛り込み、なるほど仕掛けは大きいもののそうまでする必要があるのかと。上記の記事にあるコトブキツカサの言うところの、ボーイ・ミーツ・ガールに加えて「世界の重大な危機や終末論を描いた作品」がセカイ系であるとして、セカイ系の作品を見るたび、毎度のように絶体絶命のピンチが襲来するようでは観る側も疲れてしまいます
「セカイ系の完成モデル」を見本にし、似たような作品ばかりになるという現象が日本で起こる可能性はないのでしょうが、中国では起こるかもしれません(現に、西遊記をベースにしたアニメが短期間に20本以上も作られた、という事実があります)
成功例を見習い、真似るというだけでは面白い作品などできないのであり、やはりオリジナリティが決め手ではないでしょうか?
例えば以前にも取り上げた映画「小さな恋のメロディ」も、ある意味、セカイ系と言えるのかもしれません。大人の思惑はどうあれ、ダニエルとメロディには「2人の世界」にしか見えていないのであり、他のことは考えられないのでしょうし、人類滅亡の危機なんて関係ないと思われます。ならばセカイ系とは初恋の衝動に駆られている物語である、と言い換えられるのでは?
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