ナウシカに学ぶ女性リーダーシップ論
ビジネス本、自己啓発書のジャンルに「リーダーシップ論」というものがあります。ビジネス本や自己啓発書が大嫌いな自分はそれらを手にして読むことはありません
リーダーシップなど所詮は幻想に過ぎない、と思うからです。もちろん、歴史上には稀有な指導者がいて、国家の危機や企業の危機を救った偉人もいるわけですが、その偉人の言動をそっくり真似たからといって、第三者が偉人になれたりはしません
なので、「今、世が求めているリーダーシップはかくかくしかじか」などという本を読んでも、あまり役には立たないと思うのです。あるいは自分の上司にリーダーシップを求めたところで失望するだけでは?
さて、今回は「ナウシカと女性のリーダーシップ」というお題です
風の谷のナウシカから学ぶ最強の女性リーダーシップ
「風の谷のナウシカ」が最強の女性リーダーである理由
みなさんは、「ナウシカ」がどんな人物かご存知でしょうか?スタジオジブリ「風の谷のナウシカ」の世界には、ナウシカの住む国「風の谷」を含めた「ぺジテ」「トルメキア」という3つの国が登場します。
「風の谷」は主人公のナウシカ姫を筆頭に、自然と共存して生きることを教訓にしている種族。人間が作り出した恐ろしい力で自然を制圧し、人間のための世界を作ろうとする「トルメキア」と、その中間にあるのが「ぺジテ」です。
「風の谷」の姫である「ナウシカ」は、おおよそ少女のように若い見た目ですが、国民からの信頼は厚く、国を治める実力があり、老若男女誰もが彼女のいうことを聞くのです。また物語の後半では「風の谷」の国民が、他国の姫と自分たちの姫を比べては、「あんたも一国の姫なんだろが、うちの姫とは大違いだな」という場面まであります。
そして最終的には、他国のリーダーからも頼りにされ、信頼されるのです。
「ナウシカ姫」はどうしてこのようなカリスマ的なリーダーシップを持ち合わせているのでしょうか?
美しい
「風の谷のナウシカ」でナウシカが最強の女性リーダーであることの理由のひとつとして、「ナウシカが美しい」ことが挙げられます。
見た目はもちろんですが、運度運神経がすこぶるよく、風に乗るのが上手く、体が丈夫です。「姫」というと、家臣から守られて城にこもっているイメージがありますが、ナウシカは国に危険が及ぶと自ら動きます。行動力があり、俊敏で、健康的な美しさが魅力的です。
そして立ち振る舞いや、言葉遣いが美しいです。決して人の悪口を言わず、人や物に対して愛情を持った暖か言葉をかけます。どんな暴力的な言葉にも優しく冷静に、根気良く相手と向き合います。
勇敢である
「ナウシカ」は、見た目は少女のようですがとても勇敢な心を持ち合わせています。前述のように、自国に危険がおとずれれば誰よりも早く動きます。自国や仲間だけでなく、救うことに迷いがなく、助かる見込みのある人や動物は誰でも自分の命をかけてでも救います。
劇中、明らかに銃や凶器を持った相手に対して、武器を持たず身ひとつで争いを止めようと立ち向かうシーンが何度となくあります。相手はナウシカのその姿に胸を打たれて、攻撃をやめてしまうのだから大したものです。これは戦闘の場面だけでなく、私たちのビジネスの場で応用できるのではないでしょうか。
攻撃を相手にせず、自分の手のうちを見せて信頼してもらう勇気。誰でもできることではないと思います。
(以下、略)
美しくない女性はリーダーにふさわしくない、と決めつけているのでしょうか?
上記のサイトに記事を書いている方は、おそらく善良な女性なのだと思われます。スタジオジブリのアニメーション作品が大好きで、ポジティブな生き方をしており、女性が日本社会の中でリーダーシップを発揮して活躍してほしいと、真面目に考えている人なのだと
であるからこそ、劇場版「ナウシカ」を鑑賞して上記のように「ナウシカは女性としてのリーダーシップを備えた人物」だと、迷うことなく言い切れるのでしょう
漫画版「ナウシカ」を熟読し、虚無やシュワの墓所について考えたりはしない人物だとも言えます
はっきり言って自分の苦手なタイプです(闇を抱えている女性の方がよい、とまでは言いませんが)
さて、宮崎駿は優れたリーダーシップを持つ理想的な女性としてナウシカを創造したわけではありません。姫を主人公に据えるのは最初の構想だったとしても、ある意味ナウシカは宮崎駿自身なのであり、ナウシカならどう行動するか(自分ならどう行動するか)を問いつつ物語を編み上げていったと考えられます
つまりナウシカのリーダーシップとは、物語の展開にしたがって付与された資質だというのが実際なのでしょう
そして漫画版「ナウシカ」においては、族長の娘として一族を嘘で騙し、決してたどり着けない「青き清浄の地」を目指すと説いて結束させ、導くのです。それが滅びに至る途かもしれないと思いつつ
これは会社が倒産する危機に陥るかもしれないと思いつつ、無謀なプロジェクトに部下を駆り立てるのと同じでしょう。しかし、それが正しいか、誤りであるかはリーダーシップ論の枠外なのかもしれません。結果は事前に分からないのですから
当ブログで漫画版「風の谷のナウシカ」を取り上げるため、インターネット上で様々なサイトを読み、学術論文を読んでいた中で、リーダーシップに絡めて書かれた記事を見つけ驚いた、というのが今回取り上げた理由であって、上記の記事を書いた人物を批判したり、くさすのが狙いではないと申し上げておきます
なので、特段、結論めいたことは書きません
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