中国アニメ 人材育成が困難

インターネットでニュースを見ていると、相変わらず「中国のアニメは日本を超えた」などという根拠希薄な記事を見かけます。ニュースメディアがそうした記事を配信している場合もあれば、個人のブログで発信している場合もあります
その日本を超えた、と称する中国のアニメ作品を当ブログでは紹介もしてきましたが、中国国内では興行収入の記録を塗り替えるヒット作にはなっても、日本で商業ベースで成功した例は皆無です。日本では中国の劇場版アニメが公開されても客が集まらず、テレビ放映されたものは視聴率を稼げないまま終わる…というパターンです
中国人クリエイターによる、「人材育成がネックになっている」との現場の声を取り上げているウェッブサイトがありましたので、紹介します
中国各地の大学には漫画やアニメを教える学科が開設されていると、当ブログで何度も言及してきましたが、そうした中国政府による育成策が必ずしも成功していない、とクリエイター氏は指摘しています


中国人アニメクリエイターが見た日中アニメ比較
https://zhuanlan.zhihu.com/p/34524328
(前略)
どのような産業でも、その繁栄を支えていくのは人材と技術です。
アニメ産業も同じで、日本人のアニメクリエイターは18歳ぐらいの若い歳で業界に入る人が沢山います。そして有名作家の元で修業をするというのが一般的です。
そのような人々が24歳の時、既に6年間の経験を積んで、一人前の作家となっていきます。
また日本人は30代に結婚する人が多いので、24~30歳の間は、自分の作品作りに没頭する時間をあてることができます。
一方、中国の若者は、24歳頃大学を卒業し、バイトと就労経験はあまり持っていません。卒業してから親に無理やり結婚させられることも多くみられ、仕事に夢中し、自分の能力を磨くどころか、仕事内容に慣れる時間も足りないのが現状でしょう。
日本アニメ産業が高いレベルを保てる理由として、アニメ専門学校の存在があります。日本には多くのアニメ専門学校があり、学校の先生は現役或いは元作家等の一流の人が多いので、人材育成が進みやすいです。
それと比べて、中国のアニメ教育には問題点が多く、講師のレベルが一定でなく、学校にも決まった規範がなく、理論ばかり強調するような内容になっていることも少なくもありません。
中国が人材を育てアニメ産業の基礎を築くには後約10年はかかると思いますが、この10年間に日本のアニメは更に進化しているでしょう。
現在中国アニメ産業の発展を妨げる要因として以下のようなのがあると考えます。
① 市場の過剰拡大と単一回収。つまり、出資者は多いですが、儲ける人が少ないです。
② 過剰な市場需要と薄弱な基礎。国産アニメを見たい人は増えていますが、それを制作できる人材が育っていません。
③ アニメ産業認知不足と専門家が少ない。日本のような長年経験を持ったアニメクリエイターが少ないです。また、アニメを教える人は増えていますが、専門性を持った講師とは言えない人も多いです。
④ アニメ出資者と製作者間の矛盾。偉そうな投資者は多いですが、しっかりした理念や、個性を持ったアニメ監督はまだ少ないです。
上記の四つが中国アニメ産業発展を妨げる要因になっていると感じます。
アニメコンテンツ産業がまだ中国に認知されているとはいいがたく、そうなると優秀な人材育成は進みません。そして出資者が製作側に意見をすることが多いので、クリエイターのアイデアや独創性が奪われてしまうことも起こりえます。
(以下、略)


中国全土の大学にアニメや漫画の学科を設けたのは国策によるものです。しかし、そこで講師を務めるのはプロの漫画家やアニメーターではなく、美術を教えていた教師だったりするわけです。つまり教える側の専門性や経験が不足しており、教育レベルが向上しないという問題があるのでしょう。加えて、教育過程も整備されておらず、各大学が独自に(バラバラに)カリキュラムを組んで授業をしているのが実態だと分かります
これでは素人に毛が生えた程度のアニメーターを養成するので精一杯でしょう
ただし、2000年代にアニメ制作会社で就労し、経験を積んだ人物が教える立場に就く機会も出てくるので、教育環境は次第に改善されるのかもしれません
また、教えるだけの経験や見識を有する人が足りないのは演出、脚本といった部門も同じであり、人材育成で迷走していたと思われます
大学で十分な教育ができないのなら制作現場で学びつつ経験を積むという方法はあるにしても、制作会社とて時間があり余っているはずもなく、人材育成に時間や人手を割く余裕はないと想像します
自分は中国のアニメ制作の現場をニュース動画で見た程度なので、確実なことは言えないのですが、概要としては以上のような現実があるのでしょう
日本からアニメーターを引き抜いて仕事をさせている中国企業もあるとは聞きますが、実態は不明です。近年、中国では日本風の作画の作品も増えていると聞きますので、原画作成やキャラデザインなど日本から渡ったアニメーターが関わっている可能性はあります

中国のアニメ制作会社が、日本の人材を獲得するために動いている。労働条件は?



余談ながら上記にクリエイター氏も、中国のアニメコンテンツ産業の発展を妨げる要因の中に、中国政府による各種規制を挙げるわけにはいかなかったのでしょう。一番有害な存在は中国政府だろうと思います
その中国政府による規制を別にすれば、中国のアニメコンテンツ産業の伸びしろはまだまだありそうな気がします。ただし、表現の自由を認めない以上、野心的な作品が登場する可能性は限りなく低くなります。中国で制作し、中国以外の国で売るというビジネスが成立するなら別でしょうが

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