福岡女性転落殺人を考える3 解離性同一性障害

福岡県八女市で橋の上から女性が転落し、死亡した事件で公判中の佐久田なつき被告について、3度目の言及になります
佐久田被告は公判前に精神鑑定が実施されており、鑑定人は「事件前から解離性同一性障害と診断されている」と証言しています
そのうえで、「佐久田被告は無罪願望でわざと自己に有利な空想を作っている」と述べています
ただし、佐久田被告が事件を起こす前に精神科を受診し、解離性同一性障害と診断を受けたのは事実として、なぜ診断を求めたのかは報道されていません。佐久田被告自身、何かの精神的不調を感じていたのかもしれませんし、友人や知人から「あなたは二重人格ではないか?」と指摘されたとか、さまざまなシチュエーションが想像されます
しかし、解離性同一性障害との診断があったので、「それで決まり」ということにはならないのです
佐久田被告がどこの医療機関を受診し、どのような診断基準に基づいて医師が診断を下したのか、治療はしたのか、その経過はどうだったのか、精査しないと何とも言えません
比較的簡単に解離性同一性障害との診断を下す医師もいれば、診断基準を厳密に検討した上で判断を保留する医師もいるからです
加えて佐久田被告の場合、事件を起こした後に、「(事件前後の)記憶を失った」と吹聴していた、と報じられています


福岡の女性突き落とし 逮捕の女、周囲に「記憶がなくなった」 関与疑われ記憶喪失演じる?
福岡県八女市の橋から知人の池田麻里さん=当時(25)=を落として殺害した疑いで再逮捕された無職、佐久田なつき容疑者(29)が事件後、周囲に「記憶がなくなった」と話していたことが20日、捜査関係者への取材で分かった。
捜査関係者によると、福岡県警は事件直後の昨年5~6月に計6回、佐久田容疑者を任意で事情聴取したが、「覚えていない」と関与を否定。知人らにも同じように説明していた。県警は、池田さん死亡への関与を疑われていると知り、日常生活で記憶喪失を演じていたとみている。
佐久田容疑者は、池田さんに睡眠作用のある薬を飲ませて昨年4月に橋から転落死させたとして、殺人容疑で再逮捕された。佐久田容疑者と池田さん、容疑者の当時の交際相手は一時同居しており、県警は男女トラブルがあったとみて調べている。佐久田容疑者は、交際相手に対する殺人未遂罪で起訴されている。
(産経新聞の記事から引用)


解離性同一性障害で人格交替が起きた際、「別人格の言動だから記憶はない」と思われがちですが、必ずしもそうではありません
別人格による殺人行為を、まるでドラマでも見ているかのような視点で記憶している、というケースもあります
上記の記事にある佐久田被告の「記憶がなくなった」と周囲の人に吹聴する行為は、明らかに作為的なもののように思われます
そして佐久田被告は勘違いをしているようですが、解離性同一性障害だからといって、殺人が無罪になったりはしません。最近の判例を見ても、解離性同一性障害による責任能力の減退を認めながらも有罪判決を下しています(刑期は縮減)
裁判官の判断次第という面はありますが、佐久田被告が目論んでいるように「解離性同一性障害で別の人格によって殺人が行われたため、刑事責任は問えないので無罪」という判決にはならないものと予想します
この事件の裁判では佐久田被告の知人(複数)が、「佐久田被告が池田さんを殺してやる」と事件前に語っていた、と証言しており、それだけでも有力な証拠です
なぜ佐久田被告が複数の知人に対し、殺害をほのめかす真似をしたのかは不明ですが。強いて憶測すれば、自分が池田さんを憎む理由をあれこれ並べ立て、べらべらとしゃべりまくっていたのではないでしょうか?
同情してもらいたかったのか、共感してもらいたかったのか、あるいはその両方なのか?

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