つがる4人死亡事故 懲役20年判決
青森県つがる市で飲酒運転の上に車を暴走させ他の車両にぶつかり、4人を死亡させたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われた同市の無職、高杉祐弥被告(34)の裁判員裁判で、青森地裁は求刑通り懲役20年の判決を言い渡しています
弁護側は飲酒運転で事故を起こしたことを認める一方で、「正常な運転が困難な状態ではなく、その認識もなかった」として危険運転罪の成立を否定し無罪を主張していました。弁護士も商売なので、高杉被告の言い分をそのまま代弁したのでしょう
しかし、検察の求刑通り懲役20年の判決を言い渡したのですから、裁判官も裁判員も高杉被告の主張を荒唐無稽なものと見ていたと思われます
高杉被告は不満タラタラで控訴するのでしょう。ですが、泥酔して時速120キロ以上のスピードで運転しながら、「危険運転ではなかった」との言い分が現代の日本で通用するはずはありません
青森の地元紙、東奥日報が判決の全文を掲載していますので、一部を引用します。判決文特有の、切れ目がなく延々と続く文章は読みにくいと思いますが、これが実際の裁判で用いられている形式なのでご理解ください
つがる市4人死亡事故 青森地裁判決全文
(前略)
◇争点に対する判断
1 本件の争点は、(1)本件事故当時、被告人がアルコールの影響により正常な運転が困難な状態であったか、また、(2)被告人がその状態を認識していたかである。
2 争点(1)について
(1)本件事故は、被告人が、夜間、指定最高速度が50キロ毎時の見通しのよい片側一車線の直線の国道上で被告人車両を運転して走行中、同車両を先行車両に追突させたというものである。そして、被告人車両の速度は、本件事故現場の約0.8キロメートル手前を通過する時点で既に法定速度を大幅に超える時速約129キロないし138キロであり、その後もさらに加速して追突の約2秒前には時速約163キロであったと認められる。本件事故当時、降雨により路面が湿潤で滑りやすい状況であったことも踏まえると、こうした被告人の運転態様は、本件事故現場の約0.8キロメートル手前を通過する時点において、正常な状態にある運転者であれば考えられないような、本件事故当時の道路状況に明らかにそぐわない異常なものであったといえる。
また、関係証拠によれば、被告人は、本件事故現場の約200ないし300メートル手前の地点までには、先行車両のテールランプ等を発見し、その存在を認識できたこと、それにもかかわらず、先行車両に追突する約2秒前まで被告人車両のアクセルを踏んで同車両の加速を続け、衝突直前に至って初めて急制動の措置を講じており、先行車両の存在に直前まで気づいていなかったことが認められる。被告人車両の速度等を勘案すると、被告人は、約4ないし6秒程度の間、先行車両の存在を認識しないまま高速度運転を続けていたことになるが、このような運転行為に及ぶことも、正常な状態にある運転者であれば通常考え難い異常なものといえる。
以上のような本件事故直前の運転態様からすれば、被告人は、本件事故現場の約0.8キロメートル手前の地点を時速約129キロないし138キロの速度で被告人車両を走行させていた時点で、道路交通の状況等に応じた運転操作を行うことや、前方を注視して道路状況等を的確に把握して対処することが困難な状態にあったと認められる。
さらに、関係証拠によれば、本件事故直前、被告人車両を運転中であった被告人が同乗者Cの呼びかけに応じないことがあり、同人が「起きでらか」などと声をかけると、被告人は体をビクッとさせ驚いた様子であったことが認められる(なお、同事実については、Cの検察官に対する供述調書によって認定したが、この点に関する同調書の内容は、会話の文言等が具体的であり、他の証拠に照らして不自然な点はなく、同人が飲酒をしていたことを踏まえても、十分信用できる)。このような本件事故直前のCの呼びかけに対する被告人の反応に加え、被告人が運転開始前および本件事故後に眠気を訴えていたと認められることも踏まえると、被告人は、本件事故当時、被告人車両を運転中に一時的に意識もうろう状態ないし仮睡状態に陥ることがあったと考えられ、このことからも、被告人は、前方を注視して道路状況を的確に把握し得る状態にはなく、正常な運転が困難な状態であったことが裏付けられる。
(中略)
(4)これに対し、弁護人は、本件事故前に立ち寄ったコンビニエンスストアにおいて、被告人がATM(現金自動預払機)の操作や買物を問題なく行っていること、本件事故現場に至るまで、被告人が交差点や踏切、暗く狭い道路等の緊張を強いられる道路状況に応じた運転をしていることなどを指摘して、正常な運転が困難な状態であったとはいえないと主張する。
しかし、事故前に一定の社会生活上の動作や正常な運転操作ができていた部分があるからといって、その後も正常な運転をなしうる状態であったとはいえない上、弁護人の指摘するような道路では、そもそもスピードを出しにくく、慎重に運転せざるを得ないため、被告人の酩酊の影響が顕在化しなかったにすぎないと考えられる。したがって、弁護人が指摘する事情は、本件事故当時、被告人がアルコールにより正常な運転が困難な状態にあったという上記認定を左右しない。
(以下、略)
高杉被告はこの判決文を読めるのでしょうか?
あるいは、理解できるのでしょうか?
高杉被告と弁護人の用意した弁解はことごとく退けられています(当然です)
速度超過で他の車両にぶつかっておきながら、「正常な運転をしていた」などと主張するのが大間違いです
20年の服役期間中に、4人の命を奪ったという事実をよくよく噛み締め、自身のどこが、何か間違っていたか内省を深めてもらいたいものです
家族にすれば暴走した車の事故に巻き込まれて死亡するのも、凶悪犯に刺されて殺されるのも同じであり、理不尽に命を奪った高杉被告に対する怒りは収まらないはずです。それを単純な交通事故(業務上過失致死傷)扱いの禁錮4年程度の判決で納得できるはずはありません
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