バチカン枢機卿 強制猥褻で起訴されるも無罪判決

カトリック教会は聖職者が少年、少女に猥褻行為を繰り返していた件で多くの訴訟を抱えています。その象徴的な事件の1つ、オーストラリア出身でローマ法王庁(バチカン)の財務事務局長を務めるジョージ・ペル枢機卿に対する刑事裁判で、オーストラリア最高裁判所は無罪判決を言い渡しています
順番として、まずはメルボルン地方裁判所による有罪判決を紹介し、続いて最高裁による無罪判決を取り上げます


メルボルン地裁の陪審団は昨年12月、ペル枢機卿は、メルボルン大司教に就任した1996年、セント・パトリック大聖堂内でミサの後、当時13歳だった聖歌隊の少年2人に性的暴行を働いたとして有罪評決を下し、今年3月に6年の禁錮刑が言い渡されている。
枢機卿は、性的暴行で有罪となったカトリック教会の聖職者としては最高位。控訴が棄却されたことで、枢機卿は仮釈放が認められる2022年10月まで服役する。ただ枢機卿が、オーストラリア高等裁判所へ上告する可能性もある。
訴えによると枢機卿は、少年たちが聖餐のワインを飲んだことをとがめ、それぞれの少年にわいせつ行為を強制したという。被害者のうち1人は、1997年にも虐待を受けた。
公判では、被害者の1人が証言した。もう1人の被害者は2014年、薬物の過剰摂取で死去している。
アン・ファーガソン裁判長は、「クリス・マクスウェル裁判官と私は、原告は有力な目撃者であり、うそをついていないことは明らかで、夢想家でもなく、真実を目撃していたという検察側の意見を受け入れる」と説明した。


オーストラリア最高裁は7日、ローマ法王庁(バチカン)財務事務局(財務省)長官だった枢機卿のジョージ・ペル被告(78)が1990年代に聖歌隊院の複数の十代男児に性的虐待を働いたとして有罪判決が出ていた案件で、逆転無罪を言い渡した。
同枢機卿は、メルボルン大司教時代に日曜日のミサの後に16歳以下の少年二人に強制性行為やわいせつ行為を働いたとして訴えられ、刑期6年の有罪判決を受けていた。同枢機卿は、性的虐待で訴えられたカトリック聖職者としては最高レベルの人物だが、一貫して無罪を主張していた。
最高裁は、下級裁判所が枢機卿の有罪に疑念を抱かせる根拠について審議しなかったとして、この判決を覆した。
審理では7人の判事全員が、この裁判の陪審員らが枢機卿の有罪に「疑念をいだいていたはず」との見解で一致したという。再審は行われない。
枢機卿はメルボルンの刑務所を後にするに際して声明を発表し、「原告に悪感情を持ってはいない。私への無罪判決が、多くの人が感じている心の傷と苦しみに追い討ちをかけることを望まない。もちろん、傷と苦しみはもう十分ある」と述べた。
復活祭前の聖週間のさなかに出された判決に対し、バチカンは今のところコメントしていない。
2014年にペル枢機卿をバチカンの財務事務局長官に任命したローマ教皇フランシスコは、この問題についてすべてが出尽くした後にコメントするとの立場を示していた。
ペル枢機卿は、枢機卿の位は失っていないが、告訴により昨年に財務事務局長官の肩書きを剥奪されている。
(ロイターの記事から引用)


2人の被害者のうち、1人は故人です。密室の中の犯行であり、他に目撃者もないのですから、証言の信ぴょう性だけで有罪か、無罪かの判断が分かれるのであり、オーストリア最高裁の判断が妥当であるかは疑問です
そもそもこの事件は、メルボルン教区で複数の神父による少年、少女へのレイプや強制猥褻の訴えがあったにもかかわらず、当時の責任者であったジョージ・ペル大司教がこれを無視し、隠ぺいを図ったと告発されたものです。そしてジョージ・ペル自身も少年2人に対する性的虐待で罪に問われた…という経緯です
メルボルン教区を監督する大司教として、聖職者による性犯罪を放置していた責任はどうなるのでしょうか?
被害者の少年、少女は後に自殺したり、薬物中毒やアルコール依存になった者もいるのであり、決して「終わった話」ではないのです

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