宮崎アニメを批判する福岡教育連盟

検索すると、大して重要でもないサイトが上位にくることがままあります。代金を支払って検索サイトで上位にヒットするよう手配りするのは、商売人として当然です。が、そうではないサイトが上位にあったりして不可解な思いを抱く場合もあります
宮崎駿関連で検索すると、なぜか福岡教育連盟による「私たちの主張:批判されない宮崎アニメ」という御意見が上位に出てきて、うざったいといつも思っています
主張内容はあまりに幼稚で、誰がこんなものを読むのかと言いたくなります
日教祖とは逆の立場の、保守的な教師による組織が福岡教育連盟なのだそうです。中年教師が額に青筋を浮かべて「宮崎駿、許すまじ」と書いている姿が目に浮かびます
コロナウィルス関連のニュースばかりで気分も塞ぎがちなのため、気分転換に取り上げます
宮崎駿が左翼思想の持ち主であるのは今更申すまでもないのですが(世間では自然大好きのトトロのおじさん、というイメージでしょうが)、それを攻撃して何を主張したいのか意味不明な文章が並んでいます


子供に見せたくないアニメの筆頭に挙げられるのが『クレヨンしんちゃん』だ。親を呼び捨てにする、下品、猥褻…とまあいろいろ。原作はもともと『漫画アクション』という大人向け雑誌での連載で、アニメ化によって全国区になったためやり玉に挙げられた格好だ。原作者亡き後も未だに賛否両論である。
批判されない宮崎アニメ
では宮崎アニメはどうか。『ナウシカ』にしろ『千と千尋』にしろ批判の声を聞かない。否、そもそも批判の対象にならない。『もののけ姫』に残虐なシーンがあるとか、『風立ちぬ』で喫煙シーンが多過ぎるといったつぶやきは聞こえても、世の常識では礼賛だ。否、絶賛だ。
宮崎駿は左翼主義者である。「心情的左翼だった自分が、経済的繁栄と社会主義国の没落で自動的に転向し、続出する理想のない現実主義者の仲間にだけはなりたくありませんでした」(『時代の風音』)と自らの「転向」を語っているが、左翼体質は抜けていない。
アニメを観、見せるのは各自の自由にしても、以下の言動を踏まえ、薄甘い左翼主義者の作品を観、また見せているという自覚くらいは必要ではなかろうか。
左翼主義者・宮崎駿
「憲法を変えることについては、反対に決まっています。選挙をやれば得票率も投票率も低い、そういう政府がどさくさに紛れて、思いつきのような方法で憲法を変えようなんて、もってのほかです。」(『熱風』2013年7月)宮崎駿の政治発言は多い。スタジオジブリ発行の『熱風』には数多くの迷言が登場する。
「慰安婦の問題も、それぞれの民族の誇りの問題だから、きちんと謝罪してちゃんと賠償すべきです。」(同)朝日新聞が誤報を認める以前の発言だが、そもそものスタンスが左翼だ。
「領土問題は、半分に分けるか、あるいは『両方で管理しましょう』という提案をする。この問題はどんなに揉めても、国際司法裁判所に提訴しても収まるはずがありません。」(同)言ったのは鳩山由紀夫では無い。中露韓にエールを送らんばかりの脳天気発言の主は宮崎駿である。
「スタジオジブリは原発ぬきの電気で映画をつくりたい」という横断幕がスタジオジブリの屋上に掲げられたのは2011年6月17日。東日本大震災三ヶ月後の意思表示である。今ここで原発の是非については問わないが、論調は明らかに左翼である。
労働組合書記長・宮崎駿
学習院大学政経学部卒。1963年、東映動画に入社、翌年労働組合の書記長となる。60年代の空気は若者の多くを左傾化したので宮崎一人を責めるわけにはいかない。ただ「理想のない現実主義者」を拒否した「心情的左翼」が、原始共産社会を理想とする夢想家として形作られていったことは、その後の彼の作品で想像できる。
作品が良ければ良いでは無いか、とも言える。確かに「血沸き肉躍る冒険、はらはらどきどきのストーリー展開。奇想天外な形状をした飛行機械と、辺りを一瞬にして火の海と化す破壊兵器。天高く駆け抜ける飛翔感と、それ以上に蠱惑的な墜落感。あるいは純朴な少年と高潔な少女の恋とも言えぬ淡い想い」(青井汎『宮崎アニメの暗号』)等々エンターテインメントとしての面白さは抜群だ。ところが観終わると「少なからぬ人々が『面白かったんだけど……』と、何かしらのわだかまりを『……』に忍ばせながら帰途に着く」(同)
カリオストロやラピュタ等エンターテイナーとしての面目躍如だった宮崎作品も、だんだん意味がわからなくなってきた。あの金魚は何だったのか。なぜ城が歩かなくてはならないのか。顔の無い化け物に追いかけられていたヒロインが、直後にその化け物と一緒に電車に乗っている。観客は「ファンタジーだから」と意味不明を無理に飲み込む。あるいは隠された暗号を読み解こうと躍起になる。
ハイジでもコナンでも面白いものは面白い。ただジブリの先輩・高畑勲が明確に共産党支持を打ち出しているのに対して、宮崎駿は今ひとつはっきりしない。そんな人物の作品が「単なるアニメじゃないか」と切って捨てられないほど巨大な影響力を持つに至った。
(以下、略)


長々と引用しました。長々と書いていますが、要するに「宮崎駿は左翼だからけしからん」と言いたいだけなのでしょう。ならばそう書いておけば1行で済みます
記述内容にコメントすると、「なぜ城が歩かなくてはならないのか」との疑問は「ハウルの動く城」が、イギリスの児童文学作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズの「魔法使いハウルと火の悪魔」をベースにしたオリジナルストーリーだからで、魔法使いハウルの住む家(城)が動くという設定に宮崎駿が飛びついたからです
そう説明を書いたところで、上記の長文を書いた人物はあまりアニメーション作品に詳しい人物でない、と分かります。もちろん、アニメを語るのに大量の知識など必要ないのであり、感じたままを書くという方法もあります
しかし、上記の長文にあるのは「左翼活動家であり、左翼思想に染まっている宮崎駿がアニメを作り、人気を得ているのはけしからん」という内容であり、それ以上ではありません
加えて、「宮崎アニメは誰にも批判されないアンタッチャブルだ」と言いたいようですが、それは大間違いです。新作が公開されるたびに大量の批判を生み出しており、日刊紙などは無視して取り上げないだけです
福岡教育連盟の文章に、もう少し作品の本質に踏み込むような鋭い批判があればまだよいのですが、これまで述べてきたように表面(宮崎駿=左翼)に触れるだけで物足りません。あまりに単純な決めつけで語られており、もっとテーマを絞って掘り下げてみてはどうでしょうか?
本質に踏み込めないのは作品の理解が不足しているからでしょう。作品を批判するにしても、表現内容を理解する必要があります。駄作だから理解不能だ、と書く人も見受けられますが、それは批評を放棄した、負けを認めた態度です
例えば「風立ちぬ」への批判を当ブログは拾い集めていますので、一読いただければと思います。もちろん、質の高い批判もあれば言いがかり程度のものまで、多種多様です
当ブログとしては福岡教育連盟の活動を批判する意図はなく、賛同する気もないと言明しておきます

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