犯罪心理学の准教授が妻を刺殺 妻との格差

3月16日、埼玉県庁前の路上で妻を刺殺し逮捕された、文教大准教授浅野正容疑者について2度目の言及になります
この事件に関するインターネット上の反応を見ると、浅野容疑者を「エリートの犯罪心理学者」扱いしている方が結構いて、ちょっと不思議な気分になります
殺害された妻法代さんは国家公務員Ⅰ種採用なので、夫よりも彼女の方がエリートと呼ぶに相応しいのですが。報道ではさいたま少年鑑別所職員と記されているだけで役職は伏せられていました。ようやく確認できた結果、統括専門官だったと判明しています
上級職であれば年齢からして少年鑑別所の首席専門官(組織的に上から所長、次長、首席専門官、統括専門官という並びになります)クラスの役職で順当なはずですが、子育てを優先するため育休など取得していたとの報道もありますので、自分の意志で出世コースから外れた可能性が考えられます
当然、出世するためには関東以外の遠隔地への転勤も覚悟する必要があり、単身赴任する人も珍しくありません。あるいはこどもを連れて転勤して歩くのなら、こどもたちに何度も転校を強いることにもなります
さて、浅野正容疑者の方は鑑定留置が決まっています。精神鑑定に要する期間は約3か月ほどで、精神科医が責任能力の有無について調べ鑑定結果通知書を作成します


さいたま市の県庁前路上で妻を刃物で刺し殺害したとして、殺人の疑いで送検された夫で文教大准教授の男について刑事責任能力の有無を調べるため、さいたま地検が鑑定留置を始めたことが捜査関係者の話で分かりました。
この事件は、3月16日午後6時ごろ、さいたま市浦和区の県庁前の路上で、文教大准教授の浅野正容疑者(51)が、妻でさいたま少年鑑別所職員の法代さん(53)の胸などを刃物で刺して殺害したものです。浅野容疑者は殺人未遂の疑いで現行犯逮捕され、その後、さいたま地検に殺人の疑いで送検されていました。調べに対し、浅野容疑者は犯行の動機の供述を拒んでいるということです。
浅野容疑者の刑事責任能力の有無を調べるため、さいたま地検が30日から鑑定留置を始めたことが、捜査関係者の話で分かりました。留置期間はことし7月2日までだということです。
(テレビ埼玉の記事から引用)


浅野容疑者が南イリノイ大学の大学院に留学したを経歴を有していることが、彼をエリートだと言わしめていると思われます
しかし、法務省からは職員を定期的に南イリノイ大学へ留学させており、留学した職員の多くが中途退職して大学の教員に転じています
これは法務省に限らず、財務省であれ経済産業省でも同じです。各省庁ごといくつか留学先の大学があり、キャリア形成のため職員を送り出していますし、留学しした職員が中途退職して大学の教員に転じるのも珍しくありません。以前、国会で「国費で留学させても、公務員を辞めてしまうのは国費の無駄使いではないか」と問題になりました
議論や批判はあれど、国家公務員の海外留学制度は今後も継承されるのでしょうし、官吏として出世を図るより大学の教員に転じようと考える者はいるのであり、問題は解決されないままでしょう。憲法は職業選択の自由を保証しているのですから、留学した公務員の転職を禁じる強制力は国にありません
本件の浅野容疑者のように、海外留学歴があるとしても最初から私立大学に教授待遇で迎えられるのは極少数であり、非常勤あるいは常勤講師からキャリアを再スタートさせなければならず、決して楽な道ではありません
浅野容疑者の場合、一橋大学社会学部から心理学を学ぶため横浜国立大の大学院(教育学研究科修士課程)を経て法務省に入っているのですが、いわゆるキャリア組ではありません(後日、浅野容疑者はキャリア組であるⅠ種採用だと判明しました)。大学教員への転身を考え、南イリノイ大への留学に応募したのではないか、という気もします
事件とは直接関係ありませんが、キャリア組である妻とノンキャリアの夫という立場の違いも、浅野容疑者が犯行に至った遠因になっているかもしれないと思い、書きました
追記:浅野正被告をキャリア組ではないと書いたのは間違いで、彼は国家公務員Ⅰ種採用試験(心理職)合格で法務省に採用されています。お詫びして訂正します。ただ、准教授である浅野容疑者より、統括専門官だった妻の方が高給取りという話になります

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