中国アニメ 壁を乗り越えるには何が必要か?

日本と中国のアニメを比較し、どちらが優れているか劣っているかを述べる記事というのが中国メディアによって度々出されます。当ブログでも何度か取り上げているところですが、あまりに視野が狭く、枝葉末節だけを捉えている感が否めません
根本的な問題は中国政府(共産党)による介入であり、思想的な縛りにあるのは分かっていても、それを正面切って批判できないところにあります
過去にも述べてきたように、中国ではアニメ作品を少年・少女の健全育成と思想教育の手段として利用する方針があり、垂訓(教訓を垂れる)を根底にしています。要するに勧善懲悪であり、共産党主導による科学的社会主義建設に資する内容が求められるのです
なので、ダークヒーローなど登場する余地はありませんし、少年・少女の恋愛は不道徳なものとして容認されないのです
結果として毒にも薬にもならない、動物を擬人化した低学年児童向け作品ばかりが作られる状況から抜け出せません
2018年の少し古くなったサーチナの記事を引用します。この記事は以前にも引用したところですが、再度考察してみましょう


中国アニメと日本アニメの間に存在する「絶対に越えられない壁」 それは・・・=中国メディア
中国メディア・東方網は10日、「国産アニメと日本アニメの間にある、本当の差はどこにあるのか」とする記事を掲載した。
記事は、中国アニメと日本アニメの間にある差について、3つの点を挙げて論じた。まず1つ目として、「中国人の多くが、補助金を目当てにアニメに従事しており、プロ精神やアニメに対する愛情が不足している点」を挙げている。
2つ目は、思想の問題だ。「中国はこれまで保守的な思想を守り続けてきた。この思想は必然的に限界性や思考上の盲点を作ることになる」と指摘し、この保守的思想を改めるには、今から全力で変えようとしても100年、200年はかかるのではないかとした。
そして3つ目は、政治に関するテーマを自由に扱えない点である。「国の神経を刺激するようないかなるテーマも、われわれは根本的に作品の中で表現することができない。社会を風刺することなど、なおのことできないのである」と論じた。さらに、「アニメ作品はさておき、ネット上のコメントですら特定の言葉が遮断されるのだから、救いようがない」とまで指弾している。
記事は、「上述した3つの点は、実際は中国のアニメ産業だけの問題ではなく、中国のソフトパワー全体のボトルネックになっている。わが国が唯一得意なのは古代文化しかなく、それゆえアニメ産業もみんな仙人だの妖怪だの武侠などばかり。武侠小説や西遊記を何度も何度も繰り返して題材にするのは、本当につまらないと思わないか」と結んだ。
(サーチナの記事から引用)


保守思想と書いていますが、中国共産党の提唱する科学的社会主義を指します
これを否定すれば、政治犯収容所に送り込まれても文句が言えないところですから随分と思い切った表現です
このサーチナの記事に対し、日本からのコメントは以下のようなものがあります

学園ものが致命的に弱い。原作付きであろうとなかろうと

表現の自由思想の自由が制限されてるから何をやってもダメ

まあ熱血モノから地道に始めるといいんじゃなかろうか。上昇思考の作品は大体どの世界でも受け皿あるよ(´・ω・`)
つうか昔のカンフー映画はみなこれだったよね

絶対これられない壁って資本主義の壁だろ、やっぱ共産主義は欠陥品だよ。中国人も諦めて兜を脱ぐべき

絵はイラストなど個人力だけなら真似できると思う。表現とシナリオだけは今のところお国柄もあって不可能というかインプットも規制規制でお粗末

規制があるのは事実として、そこから突き抜けるくらいの面白さを引き出す創造力、大胆な翻案、軽妙な風刺、キャラの立った人物像など工夫の余地はあると思うのですが、難しいのかなと思ってしまいます
中国ではライトノベルを規制する動きがあるようですが、それでも万人の創作意欲を封じるなど不可能でしょう。日本の漫画にせよ、ライトノベルにせよ、それを維持し支えているのは素人作家・同人の旺盛な創作意欲です
もちろん、コミックマーケットに代表される素人・同人が参加できる市場を備えている日本が異例な存在ではありますが
素人の荒唐無稽な取り組みがブレイクスルーになる可能性もあると考えます
さて、上記の記事でも批判されている似たりよったりの中国アニメを紹介しておきます。少年が老師からカンフーを習い、成長し、悪者と闘うストーリーであり、ジャッキー・チェンの時代から何も進歩していません

電影 经典怀旧动画 武侠 勇闯天下


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