「君の名は。」が中国で大ヒットした理由 BBC
クオリティメディアと評されるBBCですが、その配信記事が必ずしも見識を伴っているとは限りません。読み違い、誤解もあります
今回は新海誠監督作品の「君の名は。」が中国で大ヒットした理由に言及した記事を取り上げます
おそろしくクオリティの低い記事であり、逆に驚いてしまいます。多少なりとも記者自身はアニメーション作品を語る見識を持ち合わせているつもりなのでしょうが、この程度では日本のアニメファンに笑われてしまいます
『君の名は。』が中国でも大ヒット その理由は
日本のアニメ映画『君の名は。』が、日本だけでなく中国でも大ヒットしている。中国で最も成功した日本映画の記録を塗り替えた、その理由は何なのか。
有名なハリウッドスターや高額なスタントを使っているわけではないものの、12月初めの公開以来、興行収入は7800万ドル (約91億円)近くに達した。なぜこれほど好調なのか? BBCのアシュリー・ニーム記者が探った。
現実逃避を求める中国ファンを魅了
新海誠監督(43)原作の『君の名は。』は、体が入れ替わる10代の男女2人の恋愛を描いている。悲運の若きカップルがすれ違う幻想的なドラマが、中国の観客の想像力を掻き立てた。
その証拠に、中国の映画評価サイトの猫眼電影では、レビューの平均値が10点満点中、9.3点になっている。
映画ファンの1人、テイラーさんは「言葉にならないほど美しい映画で、ひとつひとつのショットがまるで絵画のようだった」と評価している。
しかし、ささやかな現実逃避を求める中国の若者たちには、ファンタジーの要素がアピールしたのかもしれない。
「この映画を見たら、自分が若かった頃の青春時代が恋しくなって、本当に心が動かされた」という感想もあった。
タイミングがすべて
中国の映画専門家たちは、『君の名は。』がちょうど良いタイミングで若い中国人の琴線に触れたと考えている。「映画ブームをけん引している、いわゆる『ポスト90』と呼ばれる1990年代生まれ、可処分所得が一番大きいこの層をターゲットにした恋愛物語だ」。情報サイト「チャイナ・フィルム・インサイダー」のアナリスト、ジョナサン・パピシュ氏はこう分析する。
さらにパピシュ氏は、「中国で人気が高まりつつある若年層のサブカルチャー、ACGN(アニメ、コミック、ゲーム、小説)にもちょうど当てはまる」と言う。
2億人の若い消費者のおかげで、中国の若年層向けエンターテインメント市場は急速に拡大している。中国の投資銀行、中信証券によると、市場規模は今後数年のうちに、5000億元(約8兆43000億円)に倍増する見込みだという。
今の中国は今までになくハリウッドへの出資を拡大しているが(映画スタジオから映画館まで、大連万逹があらゆるものに投資しているように)、それと同時に、ハリウッド以外のプロデューサーによる映画をもっと受け入れられる状態にまで、中国市場は熟してきたとパピシュ氏は言う。中国の消費者は、ファッション、旅行先、購買習慣において国際的なテイストを求めている。ならば、映画市場もこれに違わない理由はない――というのが、パピシュ氏の見解だ。
一度きりの現象なのか
『君の名は。』は7800万ドル近い興行収入を上げ、『STAND BY ME ドラえもん』に代わり中国での日本映画の興行収入歴代1位となった。アニメ・クリエーターにとって、これは氷山の一角に過ぎないかもしれない。
日本動画協会によると、日本アニメの海外での興行収入は昨年、3億ドル弱(約352億円)と80%近く急増した。ただし、増加分のうち中国が占める割合は不明だ。
ただし、ひとつはっきりしている。成功は、保証されているわけではないのだ。
「日本アニメは中国でよく知られていて、人気もあります。でもすべての映画がヒットするわけではありません」と話すのは、アジア映画コンサルティング会社のアーティザン・ゲートウェイで最高責任者を務めるランス・パウ氏だ。
今年中国で公開された日本映画11本のうち9本がアニメ作品だったが、チケットの売り上げが2000万ドル(約23億4000万円)を超えたのは3作品だけだった。パウ氏は、ファン層を確立した有名な日本のシリーズ作品なら、そのキャラクターを色々と見ながら育ったミレニアル世代を中心に、好成績を収めるだろうと言う。
しかしそれでも、中国での日本映画の売り上げは、ほとんどのハリウッド大ヒット作に大きく遅れを取っている。
チケット売り上げで比較すると、『ワイルド・スピード SKY MISSION』が3億5000万ドル(約410億円)超、『トランスフォーマー/ロストエイジ』が2億8600万ドル(約335億円)、『ズートピア』が2億2100万ドル(約260億円)だった。
(以下、略)
余談ながら、省略した部分では東宝のプロデューサーが、「今後も一番重要な市場は日本」だと発言しており、中国市場攻略こそが日本のアニメ業界にとって生命線だ、などとは発言していません。中国で多少なりとも稼げたらOKというスタンスです
さて、話を戻して上記の記事から、「君の名は。」が中国でヒットした理由を理解できる人がどれだけいるのでしょうか?
自分にはどこにヒットした理由があるのか、さっぱり分かりませんでした
強いて挙げれば、中国の少年少女向けアニメーションは恋愛を描くことが禁止されていますので(こどもに色恋は早い、不道徳だという理由)
なので、ボーイ・ミーツ・ガールの新海作品が新鮮に映ったというのが理由でしょう
それ以外のダラダラと記事に盛り込まれた売上の話はまったく余計であり、本筋から外れたものです
中国の映画関係者の指摘する、「タイミングがすべて」などという話はしらけるだけです。中国の映画関係者には「君の名は。」がなぜヒットしたのか理解できていない、と断じるしかありません
彼らは確かに映画ビジネスに従事している人たちなのでしょうが、映画を理解し、映画を咀嚼し、映画を語るだけの素養が欠けており、金勘定の話しかできないと分かります。それを漫然と記事の中に盛り込み、何を指摘した気分になっている記者も、頭は大丈夫なのでしょうか?
これだけで終わらせるのは物足りませんので、日本の評論を1つ紹介しておきます
『君の名は。』の大ヒットはなぜ“事件”なのか? セカイ系と美少女ゲームの文脈から読み解く
新海誠を安直に宮崎駿、高畑勲、押井守、庵野秀明、細田守といった、戦後日本アニメ史の正統的な文脈の中に置こうとする風潮を批判し、アニメ界の異端児だとし、何が違うのかを執拗なまでに語っています。以前、取り上げた中国メディアの記事でも、宮崎駿の後継者は新海誠であると単純に決めつけ、世界観や作風の違いなどまったく考慮していないのに驚かされました
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