「黒子のバスケ」脅迫事件その後

2013年、当時漫画雑誌で人気となり、アニメ化もされた「黒子のバスケ」を巡ってイベントの中止など要求する脅迫事件がありました。メディアなどに多数の脅迫状を送り付ける(その数およそ400通)ほか、硫化水素を発生させる容器を置いたり、放火を仄めかすといった手口で犯行を重ねた挙句、逮捕に至っています
その経緯については当ブログでも数回にわたって取り上げたところです
犯人Wは懲役4年6月の実刑が確定し、服役を終えてすでに出所しています。が、あらためてまとめサイトを読んだところ、あまりに内容がひどいので「その後」と題して取り上げることにします。全体として記事の書き方が稚拙であり、これを直す編集者もないままライターの手により記事をアップしたと思われます。そこはサイトの方針なのでいちいち指摘しませんが


黒子のバスケ脅迫事件の概要!犯人Wの動機&出所後の現在まとめ!
(前略)
【5】臨床心理士の解説を否定する犯人
紙面で臨床心理士(長谷川博一)が「好きなキャラ云々」などという黒子のバスケ脅迫事件(現在出所済み)の動機を推測しました。きっと漫画「黒子のバスケ」のキャラに熱中しすぎて過激な犯行に及んだのではと、現在の狂信者としての動機を挙げたのでしょう。
しかし、黒子のバスケ脅迫事件の犯人・渡邊博史はこれを全て否定します。すると「図星だから感情的になって反論した」と臨床心理士はなぜか応戦(動機が不明)。黒子のバスケ脅迫事件の犯人は本当に真意と違うため、純粋に否定しただけであり、臨床心理士(長谷川博一)の対応に強い憤りを感じています。
こうした点から黒子のバスケ脅迫事件の犯人Wは上記の臨床心理士(長谷川博一)より知性が高く、思想犯であることが分かります。また、世代間のギャップもあったのでしょう。
一見すると黒子のバスケ脅迫事件は愉快犯のようですが、犯人Wの意見陳述(動機)を読むとそうでないことは明白です。


何をもってこのライターが犯人Wを、「上記の臨床心理士(長谷川博一)より知性が高く、思想犯であることが分かります」と断定しているのか、意味不明です
事件が起きると新聞社やテレビ局は犯人像を描くよう有識者に依頼します。長谷川氏はこの手の事件報道において、頻繁に登場する臨床心理士です。もちろん、捜査情報など秘匿された状態でメディアの注文に応じ犯人像を語るのは難しいのであり、当たりはずれを云々するのはフェアではありません
犯人Wが「事件の動機を読み違えている」と言うのは勝手です。が、知性が高いとか、思想犯だとライターが断じるのはあまりに突飛です
そもそも犯人Wに思想と呼べるものがあったのかどうか?
起訴された犯人Wは初公判の場に膨大なメモを持ち込み、意見陳述を試みるのですが裁判官に静止され、一部を読むにとどまりました。その陳述内容は自身の犯行を「人生格差犯罪」と表現し、格差社会の犠牲者と自分を位置づける内容だったのでしょう(メモはその後、月刊誌「創」に収録されています)
ただ、犯人Wは公判中に自身の考えを改め、格差社会によって引き起こされた犯行との主張から、両親による虐待が自身を歪め生きづらい人生を歩まざるを得なかったと主張するに至ります

『生ける屍の結末「黒子のバスケ」脅迫事件の全真相』の衝撃。冒頭陳述は間違っていたのか

ただ、このエキサイト掲載の記事もどうか?と思ってしまう内容です。「独自の臨床経験を持つ高橋和巳医師の洞察に見られた〈社会的存在〉や〈異邦人〉といった概念を独自に発展させて、「社会的存在vs.生ける屍」「努力教信者vs.埒外の民」「キズナマンvs.無敵の人(浮遊霊、生霊)」という3組の2項対立を駆使し、・なぜ自分が犯行におよんだかを説明すると同時に、・なぜ自分が冒頭陳述でうまく自己を開示できなかったかをも説明している」と書かれていますが
現代哲学を少しでも齧った人間なら、単純な二項対立による思考の積み重ねで何かが分かったような気になるなど、錯覚にも等しいと切って捨てるはずです。思考を突き詰めるなら三項対立、四項対立もあるわけで
これで犯人Wを思想犯、などと断定するのは大間違いでしょう
拘置所に収監されておりおりに差し入れられた一冊の本の影響で、主張をコロコロ変える人物を思想犯、などと呼ぶべきなのか。と言いたくなります
犯行に至る内面の告白内容が、事件後、時間の経過とともに変化するのは珍しくありません。研究例は多くはないと思われますので、その意味では犯人Wの内面の変化を詳細に検討し、研究する意義はあると考えます
精神分析家ジャック・ラカンの研究でいえば、「人格との関係からみたパラノイア性精神病 」の症例のように

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