アカデミー賞「パラサイト」の一方で日本映画没落?

サーチナの配信記事が、「韓国映画『パラサイト』がアカデミー賞に輝く一方、日本映画は没落している」と書いています。元ネタは中国メディアなのですが、その質の低さには呆れます
もちろん、ここ最近の日本映画が漫画やアニメの実写化ばかりで、まったく覇気が感じられないのは誰もが認めるところでしょう


2020年のアカデミー賞で、韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が作品賞を受賞したことは大きな話題となった。
日本映画では2009年に「おくりびと」が外国語映画賞を受賞し、2019年に「万引き家族」が同部門にノミネートされたが、近年は全体的に日本映画はぱっとしないという印象かもしれない。
中国メディアの36Krは14日、「日本映画はピークを過ぎてしまった」とする記事を掲載した。
記事によると、日本映画の「黄金期」は1960年代から70年代にかけてだったという。
任侠映画の加藤泰氏や「座頭市」シリーズの三隅研次氏、それに、「ウルトラマン」の実相寺昭雄氏などの時代が、たとえアカデミー賞など国際的な賞を受賞していなくても「日本映画のピークだった」と振り返った。
しかし、1980年代に日本の映画は下り坂に入ったと記事は分析。例えば時代映画の場合、実力のある監督や俳優がいなくなってしまい、その後に続く人材が現れなかったと記事は指摘した。
特に俳優は、勝新太郎さんのような日本刀の似合う「恰幅の良い人」がいなくなり、最近の俳優はどうやっても日本刀が似合わない「さわやかで優しげな美男美女ばかり」になってしまったとしている。
さらに「特撮映画」が消えていったことも、日本の映画文化の没落を象徴していると記事は分析。
特撮は日本の十八番であったが、今では特撮より費用が安いCGに取って代わってしまったからだ。それで記事は「日本映画は時代劇と特撮映画の終了と共に没落した」と論じた。
だが記事は、日本には「アニメ映画がある」と紹介。
一時期は日本映画における「強大な戦闘力」となり、多額の興行収入を獲得し、多くの優秀なアニメ映画が誕生していったという。
しかし、期待の新海誠監督も「天気の子」では振るわなかったため、日本のアニメ映画の将来は明るくはないと論じている。
結論として記事は、日本映画の没落は「つまるところはお金の問題」であると分析。「成功した映画はお金と切っても切れない」のが現実だと指摘した。
とはいえ、「儲け」が出ないために優秀な作品が十分な評価を受けていないとすれば残念なことだ。日本映画の「黄金期」の復活を期待したいものだ。
(サーチナの記事から引用)


本当に日本映画のピークが1960年代から1970年代だったのでしょうか?
以下、Wikipediaから引用しますが、ベルリン国際映画祭での日本映画受賞歴です
1958年 - 今井正監督『純愛物語』が銀熊賞 (監督賞)を受賞
1959年 - 黒澤明監督『隠し砦の三悪人』が、銀熊賞 (監督賞)を受賞
1963年 - 今井正監督『武士道残酷物語』が、金熊賞を受賞
1963年 - 今村昌平監督『にっぽん昆虫記』で、左幸子が銀熊賞 (女優賞)を受賞
1975年 - 熊井啓監督『サンダカン八番娼館 望郷』で、田中絹代が銀熊賞 (女優賞)を受賞
1986年 - 篠田正浩監督『鑓の権三』が銀熊賞 (芸術貢献賞)を受賞
1986年 - 熊井啓監督『海と毒薬』が銀熊賞 (審査員グランプリ)
2000年 - 緒方明監督『独立少年合唱団』がアルフレッド・バウアー賞を受賞
2001年 - 東陽一監督『絵の中のぼくの村』が銀熊賞 (芸術貢献賞)を受賞
2002年 - 宮崎駿監督『千と千尋の神隠し』が、金熊賞を受賞
2008年 - 熊坂出監督『パーク アンド ラブホテル』が最優秀新人作品賞を受賞
2010年 - 若松孝二監督『キャタピラー』で、寺島しのぶが銀熊賞 (女優賞)を受賞
2014年 - 山田洋次監督『小さいおうち』で、黒木華が銀熊賞 (女優賞)を受賞
(特別賞の受賞も多数ありますが、省略)

カンヌ国際映画祭のコンペティション部門の最高賞パルムドールなどは以下の通りです
1953年 衣笠貞之助『地獄門』:パルム・ドール
1960年 市川崑『鍵』:審査員特別賞
1962年 小林正樹『切腹』:審査員特別賞
1964年 勅使河原宏『砂の女』:審査員特別賞
1965年 小林正樹『怪談』:審査員特別賞
1978年 大島渚『愛の亡霊』:監督賞
1980年 黒澤明『影武者』:パルム・ドール
1983年 今村昌平『楢山節考』:パルム・ドール
1987年 三國連太郎『親鸞 白い道』:審査員賞
1990年 小栗康平『死の棘』:グランプリ
1997年 今村昌平『うなぎ』:パルム・ドール
2004年 柳楽優弥『誰も知らない』:男優賞
2007年 河瀬直美『殯の森』:グランプリ
2013年 是枝裕和『そして父になる』:審査員賞 
2018年 是枝裕和『万引き家族』:パルム・ドール

モントリオール国際映画祭での最優秀作品賞を受賞した日本映画
1983年 『未完の対局』
2006年 『長い散歩』
2008年 『おくりびと』
特別賞など各種受賞作品は省略
こうした受賞歴からすれば、1960年代から1970年代がピークだという指摘は間違いでしょう
ただ、現下の衰えは指摘されるまでもないところです。漫画やアニメの安易な実写化に走るのは考え直してほしいところです

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