新潟少女監禁事件を考える4 刑務所を出所

大阪の女児誘拐事件について情報を検索しているうちに、新潟で女子児童を9年2月に渡って監禁し、懲役14年の実刑判決を受けた佐藤宣行 が千葉刑務所を出所しているとの情報を見つけましたので取り上げます
刑務所服役が初めてで概ね懲役7年以上の長期受刑者、なおかつ35歳以下は、関東甲信越地区では千葉刑務所に収監されます
以下、ノンフィクションライターの方の記事を引用します


監禁期間は実に9年2ヵ月…新潟少女監禁事件、野に放たれた犯人が千葉県にいた!
(前略)
「あの子には可哀想なことをしたねぇ」。事件への気持ちを尋ねると、母親はどこか他人事のような口調で言うのだった。2003年7月10日、懲役14年の実刑判決が確定し、佐藤は千葉刑務所で服役生活を送ることになった。一方、事件発覚から10年ほどが過ぎた頃、母親が亡くなった。Sは当然ながら、母親の死に目に会うことはできていない。その佐藤は昨春、既に刑期を終えて、日常の中に戻っている。果たして、彼は今、どこで何をしているのか。事件のあった家は、母親の持ち家であったが、死後に息子である佐藤が相続し、彼の財産となっている。未だに取り壊されることなく、彼の地に建っている。「ここでは全く見かけませんね。事件の後、一時期は名所みたいになって、夜中に暴走族が来たり、窓ガラスを割られたりしたんです。最近ではそんなことも無くなりましたけど」(近隣住民)。
筆者も10年以上ぶりに事件現場を訪ねてみたが、玄関の扉には板が釘で打ち付けてあり、人が住んでいる気配は全く無かった。そして、更に取材を進めていくことで、驚くべき事実が明らかになった。佐藤は服役中に精神障害者と認定され、障害者2級の手帳を取得していたのだ。今は千葉県千葉市に暮らしているという。
この情報を提供してくれたのは、事件取材を精力的に行っている然るフリージャーナリストである。「佐藤は母親と暮していた当時から、自宅のトイレも使えない潔癖症でしたから、刑務所では通常の食事を一切取らず、流動食を常に食べていたほどです。刑務所の生活に耐えられず、何度も八王子にある医療刑務所に入院し、精神障害を訴え、その際に向精神薬の処方を受けていました。そうしたことが服役中に考慮され、障害者手帳が支給されたんです」。
障害者手帳取得には、事件を起こす前に向精神薬を服用していたことも考慮されたという。同手帳2級により、公共交通機関の利用料金が無料となり、所得税や住民税の控除、障害者枠で仕事を斡旋してもらうこともできる。更に今後、事件を起こした際には、精神病患者ということで実名報道されないことになる。ここで思い返しておかなければならないのは、「佐藤が監禁事件を起こしたのが最初の事件発生から1年ちょっと過ぎた頃、執行猶予中のことだった」という点である。あれだけの事件を起こした者が、刑務所で更生とは程遠い生活を送り、障害者手帳まで取得して出所した。全く更生していない男が、3度目の事件を起こす可能性は高いのではないか。只々、幼い女児を育てているご家族には「気を付けろ」としか言えないのが、心からもどかしい――。


佐藤宣行は事件を起こす前に精神病院に入院しており、そこではスキゾバイタル人格障害と診断されています。さらに逮捕後の簡易鑑定では強迫性障害(いわゆる潔癖症と呼ばれる神経症)とされていますが、一般論として神経症は心神耗弱とは認められませんので、責任能力に問題はないと判断され、新潟地方検察庁は起訴に踏み切りました
一審の裁判の途中で行われた精神鑑定の結果では、分裂病質人格障害、強迫性障害、自己愛性人格障害、小児性愛の4つの人格障害が認められると指摘されています
実は佐藤被告の二審裁判では、人格障害を理由に一審の量刑は重すぎると判断され、懲役11年に減じる判決が言い渡されています
しかし、最終的に最高裁は一審の判決を支持して懲役14年の量刑とする判断を示し、刑が確定しました
上記のスキゾバイタル人格障害というのは耳慣れない用語です
が、これは一審で行われた精神鑑定にも登場する分裂病質人格障害のことであり、統合失調症(精神分裂病)ではなくあくまで人格障害の範疇とされます。精神障害を表す名称やその分類方法は幾度もの変遷を経ていますが、精神科医によっては古い呼称をそのまま使う人がいますので、複数の名称が乱立する状態にあります
スキゾバイタル人格障害は「社会的に孤立していて、対人接触を好まず、感情の表出が乏しく、何事にも興味や関心が無いように見える」という性格特徴を表し、また、本症は外界への興味、関心そのものが薄いという点で、対人恐怖症や回避性パーソナリティ障害とも異なる、定義されています
さて、刑務所を出た後の佐藤元受刑者がどう暮らしているのかは不明です
ただ、この事件は1人の少女を9年2月も監禁し、人生をめちゃくちゃにするという凶悪な犯行であり、懲役14年の実刑に服したからと言って償えるものではないと考えます。刑期を終えた元受刑者ということで、報道機関の扱いとしては匿名にするのがルールだそうです
ただし、今後、佐藤元受刑者が罪を重ねないようにと思い、社会への警鐘の意を込めて実名で表記しました
追記:「捜査関係者への取材の結果、佐藤元受刑者は刑務所出所後1人で暮らしていたが、数年前に病死した」との報道がありましたので、付け加えます。死亡の時期、病名は不明です

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