新潟女児殺害事件14 無期懲役判決
新潟地方裁判所で小林遼被告に無期懲役の判決が言い渡されています。判決では犯行の計画性は認めず、偶発的な犯行と判断し、線路に遺体を遺棄した件についても、死体損壊の法律で定められた刑の範疇におさまり、より重く罰するのは不適当との見解を示しています
結果として、被害者が1人の場合は死刑を回避するという、従来の判例に則った判決です
新潟市西区で昨年5月、下校中の小2女児=当時(7)=が殺害された事件で、殺人や強制わいせつ致死など七つの罪に問われた元会社員、小林遼(はるか)被告(25)の裁判員裁判の判決公判が4日、新潟地裁であり、山崎威裁判長は無期懲役を言い渡した。争点の一つとなった殺意については認定したが、殺害行為には計画性がなかったなどとして検察側の死刑求刑を退けた。
判決によると、小林被告は昨年5月7日に新潟市西区の路上で、わいせつ目的で女児を車でひいて車内に連れ込み、わいせつ行為をした上で首を絞めて殺害。遺体をJR越後線の線路上に遺棄し、電車にひかせて損壊した。
公判では、殺人と強制わいせつ致死、電汽車往来危険罪の成立の可否が争われたが、新潟地裁はいずれも認定した。
殺意については、首を絞める行為が人を死亡させる危険が高く「子どもでも分かること」と指摘し、被告も認識していたとした。遺体の状況から生前にわいせつ行為があったのは明らかだとし、強制わいせつ致死罪を認定。線路上に女児を遺棄したことによる電汽車往来危険罪についても、運転士の証言から罪が成立するとした。
検察側の死刑求刑で注目された量刑の説明では、「まれに見る凄惨(せいさん)な事件」「無差別な犯行で悪質」と非難した。一方で、生命軽視の甚だしさを計る重要な指標とした殺害の計画性は認めなかった。「(死刑適用の)慎重さと公平性を放棄して遺族の思いにこたえることは、残念ながらできない」と無期懲役の選択理由を語った。
殺意は認定したものの、首を絞めた動機は「気絶させようとした」とする被告の主張に沿い、当初から殺害する計画性は認められないとした。「首を5分以上絞め続けた」とする検察側の主張は採用せず、女児が脱力した時点で首を絞める行為をやめたとして「殺害の執拗(しつよう)さもない」とした。線路に遺棄した点は悪質としながらも、「死体損壊の法律で定められた刑の範囲内で考えるべきだ」と説明した。
無期懲役の判決に対し、遺族は「加害者に寛大な司法で憤りを感じている。これでは娘が浮かばれない」とする文書を公表した。
死刑を求刑した新潟地検の秋元豊次席検事は「判決内容を精査し、上級庁とも協議の上、適切に対処したい」とのコメントを出した。弁護側は、控訴の有無など今後の方針について「一切コメントしません」とした。
(新潟日報の記事から引用)
弁護人は有罪を認めながらも、「傷害致死罪で10年以下の懲役刑が相当」と主張していました。なので、殺人罪と強制わいせつ致死罪を認めた判断は小林被告も弁護人も判決には不満でしょう
もちろん、検察側も被害者遺族も死刑を回避した判断には不満があります。結果として、控訴審で争われる展開になるのでしょう
裁判に参加した裁判員は、「永山基準を見直すべきだ」と会見の場で発言し、注目されています
裁判員制度が形骸化しているとの批判もある中で、判例踏襲を善しとする裁判官たちに届くかはともかく、裁判員として参加した国民の意見として傾聴に値ます
「『永山基準』を見直すべきだ」。新潟市西区で小学2年の女児=当時(7)=が殺害された事件の裁判員裁判で、裁判員を務めた40代男性は4日に新潟地裁(山崎威裁判長)で開かれた判決公判後、記者会見で見解を述べた。
最高裁が死刑選択の判断基準として示した「永山基準」。犯行の動機や態様などのほか、「特に殺害された被害者数」と言及しており、これに基づき、被害者が3人以上で死刑判決となるのが“相場”とされていることを踏まえた発言だ。記者から「量刑で迷いはあったか」との質問に答えた。
男性は「当然迷いはあった。個人的な感情としては、(女児の)ご家族と同じ気持ちだったが、裁判の公平性を考え、永山基準に沿って判決を出した」と話した。
その上で、昨年6月に東海道新幹線の車内で乗客の男女3人が殺傷された事件で、殺人などの罪に問われた無職、小島一朗被告(23)が「3人殺せば死刑になるので、2人までにしておこうと思った」と法廷で供述しているという報道に触れ、「今後、犯罪も多様化してくるし、考えられないような犯罪もある。基準を見直していかなければいけないのではないかと個人的には思った」と思いを語った。
さらに、「せっかく裁判員制度で一般の意見を受け入れていこうということになった。家族の心情とか、割合は大きく入れた方がいいのではないか」と指摘した。
(産経新聞の記事から引用)
当ブログで過去に述べたように、永山基準が現在でも絶対視されるのは異常であり、異様です。永山基準は世間の同情を集めていた永山則夫に死刑を言い渡すための方便として作られたものと考えます。いくつもの判断基準を並べ、その1つ1つに照らした上で、死刑はやむを得ないのだと世間を説得するためのものです
よって永山基準の1つ、「被害者が複数であること」が本件でも壁になっており、死刑を回避する理由になっているわけです
今回のように、殺害後に死姦にまで至るような異常な犯罪は、別の基準があって然るべきではないでしょうか?
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