新幹線3人殺傷事件を考える 小島被告の手記

週刊新潮に小島一朗被告の手記の一部が掲載されている、とJ-CASTニュースが紹介しています。引用の引用になりますが、お付き合いください
横浜拘置支所へ何度も足を運び、小島被告と面会を重ねたルポライターが手記を託されたのだとか
何度も言及したように、重大事件を起こした犯人の手記だからといって過剰な期待を寄せるのは間違いです。そこに真実が記されているとは限らないのであり、欺瞞や粉飾、弁解、他者への責任転嫁ばかりが吐露されている場合も少なくないのですヵら


無期懲役に万歳三唱の「新幹線殺傷」小島一朗!彼にとって心休まり過ごしやすいのは家庭や社会より少年院や刑務所
(前略)
「寝覚の床」の東屋で起きた木曽署の警察官とのトラブルも、計画を後押ししたようだ。雨の降る中、警察官3人に「ここから出ていけ」といわれる。小島は「雨が止んだら出ていく」と主張して譲らない。警官たちは「出て行け、邪魔だ」といい続ける。小島はこういう。「私には生存権がある」。すると、警官たちは彼の荷物を取って挑発してくる。
小島は「ホームレス自立支援法第11条に基づいて、まず社会の福祉を尽くしてから、法令の規定に沿って排除してください。生活保護の話をして、それでも私が受け入れなかったら、行政代執行してください」。警察官は「権利、権利ばかり主張して義務を果たしているのか?」と反論した。
小島はこういい返す。「生存権、その基本的人権は生まれながらにして持っている権利であって、何かの義務を果たさなければ与えられない権利ではない」
警官の挑発はエスカレートしていき、小島はケガを負うが、病院へ行くことは拒否する。役所の人間や警官に対して、カントやフロイトを持ち出して反論。そしてこう考えたそうだ。「警察すら、法律を守る気がないのに、自分だけ守っていてもしかたない。自分の人権は守られないのに、他人の人権を守っていてもしかたない」
3人殺したら死刑になるから、2人にして無期刑になり、刑務所で一生を終えたいと考えたという。<「一人を殺して二人に重傷を負わせたから、これでもう無期が狙えると思った」>(週刊新潮)
(以下、略)


浮浪者である小島被告が観光地の「寝覚の床」に設けられた東屋に住み着き、彼を排除しようとした警察官とトラブルになったのでしょう
しかし、警察官の対処に特段、非はありません。逮捕するだけの容疑はなかったのでしょうし、警察官が小島容疑者に生活保護受給の手続きを代行してやる必要もありません
カントやフロイトを引用し、警察官を論破しようと試みたようですが、自分の知能の高さでもアピールしたかったのでしょか?
手記の中で自慢話がしたいのか、と突っ込みたくなります
もちろん、カントやフロイトは殺人を肯定してなどいないのであり、何を読み違えているのかと言いたくもなります
要するに小島被告は、「自分の主張を正当化する論拠があるのだ」と世間にアピールしたくてカントだのフロイトだの持ち出していると推測できます
ただの浮浪者扱いされたくない、とのプライドかもしれません
警察官にすれば屁理屈をこねまくる「めんどくさい奴」でしかないのですが
状況からすれば自殺を企図してもおかしくないわけです。現に小島被告は「寒いところへ行って野垂れ死にするつもりだった」とも語っています
しかし、小島被告は自殺を選択せず、無差別に人を殺傷して刑務所に入ろうと行動に移します。なぜ自殺に踏み切らなかったのでしょう
小島被告が手記に何を記しているか、詳細は不明です。しかし、読むべきところは無差別殺人をしようと決意するに至った過程ではなく、なぜ自殺をしなかったかでしょう(書かれていれば、ですが)
精神分析の立場からすると、手記に何が書かれているかよりも、何が書かれていないかを重視します。上記の記事だけ眺めれば、殺人を決意するに至った理由についてはあれこれ書いている風に受け取れます。が、それは 大して重要ではありません。むしろ、小島被告が書こうとしない部分、書けない部分こそが重要なのです
秋葉原で17人もの無関係な人を殺傷した加藤智弘死刑囚は、犯行の動機を「掲示板が荒らされたからだ」と主張していました。が、その生い立ちを見れば実母に対する恨みつらみが根幹にあったのは明らかです
若者の死亡原因のトップは自殺というのが日本の現状です。しかし、加藤智弘は自殺を選択せず、無差別大量殺人を決行する選択をしました。その狙いは非道な殺人をすることによって、自分を生んだ母親への報復であったと推測されます。まあ、加藤智弘死刑囚は絶対に認めないのでしょうが(自殺したのでは実母への報復が達成されないわけで)
秋葉原の事件と本件を安直に同一視するべきではないにしても、小島被告の生い立ちを斟酌すれば、自分を愛さなかった両親や父方の祖母に対する報復として殺人を選択したのではないか、と思わざるを得ないのです

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