元農水事務次官 息子殺害で懲役8年求刑

息子を殺害して罪で起訴されている元農水省事務次官熊沢英昭被告の公判で、検察側は懲役8年を求刑しています
もう少し長い刑期を求刑すると予想していたのですが、随分と大幅に割り引かれています
「上級国民だから特別扱いされている」との批判が沸き出しそうです。さすがにこの事件で求刑を上回る判決を言い渡す可能性はなく、裁判員の同情が集まれば判決は懲役6年くらいになるのでしょうか?
求刑が8年という判断は、一般的な殺人事件ではなく、無理心中で親がこどもを殺害し親だけが死にきれなかったケースを検察が考慮したのかもしれません
弁護人は執行猶予を求めています。しかし、殺害の事実を踏まえると、裁判官が実刑を回避して執行猶予の判断を下すことはないでしょう


東京都練馬区の自宅で長男の熊沢英一郎さん(当時44)を刺殺したとして、殺人罪に問われた元農林水産事務次官熊沢英昭被告(76)の裁判員裁判が13日、東京地裁で開かれ、検察側は懲役8年を求刑した。
被告には強い殺意があり、長男の不意を突いて一方的に攻撃したなどと主張。一方、被告が長男の将来を心配し面倒を見るなど考慮するべき点もあると指摘した。判決は16日に言い渡される。
検察側は論告で「被害者の傷は首や胸に集中し、傷は36カ所以上もあった。被告は強い殺意を持って、不意を突き、一方的な攻撃を加えたことは明らかだ」と犯行の悪質性を主張した。
被告は事件の約1週間前、長男から激しい暴行を受けており、「刺さなければ殺されたと思う」と主張している。検察側は「警察などの行政機関に相談しなかった。資産もあり、専門家にも相談できたはずだ。取り得る手段を取らなかった。酌量の余地は乏しい」と指摘した。
一方で「被害者の将来を心配して面倒をみていた。自首が成立するなど考慮すべき点がある」とした。「大きく考慮すべき点がなければ、懲役10年を下回らないのが通例」と説明した上で、懲役8年を求刑した。
弁護側は執行猶予付き判決を求めた。事件について「長男から激しい暴行を受けて死の恐怖を感じ、暴行時と同じすさまじい形相で『殺すぞ』と言われ、本当に殺されると思い、やむを得なかった」とした。被告については「妻がうつ病を患ったり、愛娘が自殺する中でも、発達障がいだった長男を支えた。時に厳しい言葉を投げかけながらも、献身的なサポートを続けてきた」と指摘。「経緯や動機から酌量の余地は大きい。これまでの人生、事件への真摯(しんし)な反省を勘案して、執行猶予付き判決が妥当」と主張した。被告の知人らから減刑を求める1609通の嘆願書が寄せられたことも挙げた。
初公判時と同じ黒色のスーツに青色のネクタイを締めた被告は時々、ギュッと目をつぶりながら、論告を聞き入った。最終意見陳述で「私は反省と後悔の日々を過ごしています。犯した罪の重大さを十分、自覚しております。この罪を償うことが大きな務めと考えている」とした上で「亡き息子のために毎日、祈っております。息子があの世で穏やかに暮らせるよう、これからも祈りをささげることが私の務めと思っております」と淡々と話した。公判終了後、弁護側、裁判長、検察側にそれぞれ一礼し、うつむきながら退廷した。
(日刊スポーツの記事から引用)


事件の悪質性という検察側の表現の稚拙さはともかく、熊沢被告が36か所を刺したのは事実です。そこには確実に殺す決意があったのでしょうし、殺しそこなえば反撃され、自分や妻が息子に殺されるだろうという確信があったと推測されます
つまりあの日、息子を何が何でも殺さなければならないと覚悟を決め、絶命するまで執拗に刺したとのです
それを悪質性と表現するのが適切であるとは、自分は思いません
犯行前、熊沢被告はインターネットで、「殺人 執行猶予」と検索したと報じられています
殺人の計画性を示す証拠との扱いですが、熊沢被告にすれば「殺人を犯しても執行猶予になった判例」を捜したのは藁にも縋る気持ちであったかもしれません。だから罪を一等軽減すべき、とは言いません
隣の小学校の運動会の音にいらだち、「殺すぞ」といきりまくる息子を止める手段として「殺すしかない」と発作的に包丁を手にしたと解釈するか、事前に殺害を計画し決行したと解釈するかは裁判官次第です
ただし、どう理屈をこねくり回しても執行猶予付きの判決は下せないでしょう

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