大阪女児誘拐事件を考える 通行人に助けを求めなかった?
大阪の女児誘拐事件について、雑誌「AERA」が、「靴下で逃げた女児はなぜ通行人に助けを求めなかったのか?」と題する記事を掲載していますので、取り上げます
記者が事件を取材して抱いた素朴な疑問をそのまま記事にした、という感もありますが、どうにも記者の感性がズレているよな気がして心地悪さがあります
【大阪女児誘拐】靴下で逃げた女児はなぜ通行人に助けを求めなかったのか?
(前略)
そんな伊藤容疑者の自宅に7日間にわたりいた女児。助けを求めた交番までは、大人なら徒歩10分ほどの距離だ。確かな足取りは不明だが、現場から交番までの道のりを歩いた。
まず、容疑者宅から東に向かって約200メートル歩く。突き当りを右折すると、広々とした公園が現れた。奥には子どもの遊具も見えた。だが、園内は閑散としている。その中で一人、ウォーキングしている男性(70)がいた。
「公園を利用するのは高齢者がほとんど。休日にはゲートボールなどをしています。でも女の子が見つかった土曜日は雨が降っていたから、人がいなかったんじゃないかな」
公園を右手に見ながら直進すると、交通量の多い県道にさしかかる。南北にかかるこの道を南に向かって直進すれば交番だ。途中にはJR水戸線をまたぐこ線橋がかかっている。脇道にそれると、歩行者用の階段があった。のぼりはじめると、大通りからは死角になる。先ほどまで聞こえていた車の騒音がたちまち静かになった。ここを女児が歩いたとしたら、どんなに心細かっただろうか。思わず胸が締め付けられる。橋の頂上から見渡すと、大人に引率されながら集団で下校する小学生の姿がみえた。
その後、橋を越えて数分歩くと「交番」という標識が見えた。右手をみると、2階建ての「犬塚交番」がある。駐車場にはパトカーが停まっていて、存在感を放っている。ここまで来れば、交番に気づかないということはなさそうだ。
ここまで歩いて、記者は多くの人とすれ違った。女児も3時間半の道のりでたくさんの人とすれちがっただろう。だが栃木県警によると、女児が通行人に助けを求めた形跡はなかったという。なぜなのか。犯罪被害者の心理に詳しい、目白大学心理カウンセリング学科の齋藤梓専任講師は「助けを求めることに無力感を覚えていたのでは」と指摘する。
「一定期間閉じ込められていたなかで、『帰してくれ』と求めてもそれをことごとく止められていたとしたら、人に助けを求めることに無力感を覚えていても不思議ではありません。そもそも、彼女は伊藤容疑者に監禁されるとは思わなかったと思います。容疑者に“裏切られた”ことでそれが覆された。誰が信用できて誰が信用できないのか、わからなくなっていたのかもしれません」
自力で交番にたどり着いた女児。幸いけがはなかったという。心配なのは、心のケアだ。
「トラウマ的な体験をすれば、不眠症状が出たり、周りを過剰に警戒してしまう恐れがあります。事件を思い出させるような行動も避けるでしょう。被害者は自らを責めてしまう傾向があります。彼女が安心して生活できる環境を整えることも重要ですが、周りの人が余計に傷つけてしまわないことも大事です」
女児の心の回復を見守りたい。
(AERA dot.掲載記事から引用)
別の報道によれば、交番へ向かって雨の中を靴下履きで歩く女児の姿を目撃した、と証言する男性もいるのだとか
目撃して、そのまま通り過ぎたのでしょう
むしろ、なぜ車を停めて声をかけなかったのか、なぜ助けようとはしなかったのか、と思うばかりです
上記の記事にしても、通行人に助けを求めようとしなかった女児の行動を「おかしい」と記者は疑問に感じたからこそ、書き起こしたのでしょうが、むしろその逆ではないのかと自分は言いたくなります
AERAの記者が「雨の中を傘もささず、靴下履きで歩く女児を複数人が目撃しすれ違いながら、なぜ声をかけようとしなかったのか?」との問題意識を抱かないことの方が驚きです
埼玉で中学生の女子生徒が監禁されていた事件で、監禁場所から抜け出した女子生徒は年配の女性と行き合い、「携帯電話を貸してほしい」と頼んだのですが断られています
断った年配の女性を責めるのは酷ですが、携帯電話を貸して110番通報すれば、あるいは事情を聴くなりすれば事件はもっと速やかに決着したはずです
適切な対応ができなかったのは、見ず知らずの不審な女の子からいきなり声をかけられた時点で年配女性が混乱し、当惑し、どう対処すればよいか判断できなかくなってしまったためです
日常生活で経験することのない事件や事故、火災、地震や津波といった災害に直面すると人間は混乱し、平静を失い、適切な対応ができなくなることが知られています。だからこそ、平素から地震を想定した避難訓練や、火災を想定した消防訓練を行う意味があるわけです
現在各地で小学生の登校時の事故や事件を防ぐため、見守り活動が行われています。これも日常のルーティンとして見守り活動に当たるのではなく、異常な事態とか緊急事態を想定して取り組まないと、いざという時に適切な対処ができず手遅れになってしまいます
こどもが雨の中、靴も履かずに歩いている姿を黙って見過ごさず、声をかけることで命を救える場合もあると知っていただきたくて取り上げました
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