新潟女児殺害事件12 凶悪事件に共通点はあるのか?
少年事件を取り上げ、取材しているライターの草薙厚子が東洋経済オンラインに、「新潟少女殺害事件はなぜ防げなかったのか」と題する記事を書いていますので言及します
草薙厚子の記事は過去にも当ブログで幾つか取り上げていますが、見当はずれの残念な内容であったりします
今回の記事も、むしろ「新潟少女殺害事件は防げたのか?」と自分は思うばかりです
長文の記事なので、全容は東洋経済オンラインにアクセス願います
中身は神戸の連続児童殺傷事件、京進ゼミナールでの児童殺害事件、名古屋大女子学生による殺人事件を取り上げ、共通点を探るというものです。が、京進事件の犯人がアスペルガー障害であるのに対し、新潟事件の小林被告は現在のところ発達障害は疑われていません。犯人の人格や資質に大きな違いがあるのを無視して、犯行やその経緯という外在的な部分で共通点を探り出そうとするのは無益で、無茶な話です
凶悪事件を起こす「少年少女A」たちの共通点 新潟少女殺害事件はなぜ防げなかったのか
「まじめな普通の子だった」「物静かで問題を起こすようには見えなかった」
新潟市内に住む小学2年生の女児、大桃珠生ちゃん(7)が殺害された事件に関して、小林遼容疑者(23)を知る近所に住む人が語ったコメントだ。
新潟県新潟市のJR越後線の線路に遺体を放置し、列車にひかせるという残虐な行為。事件から1週間後、市内の電気工事会社に勤務する会社員、小林容疑者が死体遺棄、死体損壊容疑で逮捕された。
報道にあるとおり、小林容疑者は、珠生ちゃんの家から100メートルほどしか離れていない同じ町内に住んでいた。「物静かで目立たない」「普通の子だった」という評判の男がなぜ、あのような残虐な凶行に及んだのだろうか。
筆者はこれまで多くの少年犯罪を取材してきた。近著『となりの少年少女A』では、1997年に起こった神戸児童連続殺傷事件の酒鬼薔薇聖斗、いわゆる「少年A」の事件をはじめ、世間を震撼させた凶悪な少年事件を取り上げたが、いくつか今回の事件との共通点を感じた部分がある。
小林容疑者は23歳で、20歳未満の犯罪を指す少年犯罪の年齢を過ぎている。ただ成人後数年であり、自宅で家族と住んでいるなど条件には近いものがあり、過去の少年犯罪と比較する意味はあると考えた。
(中略)
事件の前、小林容疑者は山形県内に住む14歳の女子中学生にわいせつな行為をしていた。そして、この女子中学生を新潟県上越市内で連れ回したとして、4月に新潟県警上越警察署が、新潟県青少年健全育成条例と児童ポルノ禁止法違反の疑いで小林容疑者を書類送検していたことも判明した。
問題なのは、勤めている会社をはじめ、加害者の周囲にいる人たちがその事実を知らなかったことである。
小動物を何匹も切り刻んでいた少年A、教え子の女子生徒にストーカー行為を繰り返していた塾講師など、凶悪事件の実行前には、表ざたにならない未遂事件を起こしているケースが少なくない。
そうした行動の結果が予想したものと違ったり、未遂に終わった場合は不満を感じ、こだわりがさらにエスカレートしていってしまう傾向がある。そして「何がなんでも完遂しなければ」という強いこだわりに変わり、抑制が効かず、感情が抑えきれなくなって大きな悲劇が起こっている。
(中略)
強固に働く正常性バイアス
残念なことに今回の事件でも、子どもを疑う様子は見受けられなかったようだ。事件発生当時、小林容疑者の親は近所の人に「早く捕まればいい」と言っていたことが明らかになっている。自分の子どもを信じたいという思いが強く、世間体や風評を気にするあまり、シグナルに気づいていても早期に対応するという行動を取りにくかった側面もあったのかもしれない。
以上、これまでの青少年による凶悪犯罪事件にみる共通点を挙げた。凶悪な少年犯罪を起こす加害者の特徴、また、重大な事件を引き起こすまでの経緯上の問題点について認知と理解が進むことを願う。
経緯については、小林容疑者が直近で女子中学生を連れ回した件で逮捕されていれば、悲劇は起こらなかったのではないかという指摘は少なくない。事件1カ月前の犯罪で、なぜ身柄拘束ではなく書類送検だったのだろうか。警察は理由を公にするべきではないか。
二度とこういった痛ましい事件が起こらないためにも、一刻も早い真相の究明と、今後の再発防止のためのシステムの構築が望まれる。
長々と引用しました。元記事はさらに長いのであり、さりとて有用な指摘や発見が含まれてはいません。幾つかの凶悪事件を並べ、そこに共通点があると主張しているのですが、どうなのでしょうか?
新潟事件を語るのであれば、小林被告が自身の性的欲望とどう向き合っていたかを検討すべきでしょう。神戸事件も同様です。もちろん、そこには共通点もあれば、相違点もあるわけで、共通点だけ捜して何をか発見したように振る舞うのは大間違いです。精神分析の立場からすれば、むしろ相違点にこそ注目するべきでしょう
文中、草薙は「『何がなんでも完遂しなければ』という強いこだわりに変わり、抑制が効かず、感情が抑えきれなくなって大きな悲劇が起こっている」と書いています
これを精神分析家ジャック・ラカンの表現を借りれば、「欲望はそれが望む形で達成されるまで、衝動に駆り立て続ける」と解釈されます。つまり小林被告は女児との性交という欲望に縛られ、翻弄されており、女児との性交をなすまで衝動に駆り立てられ留まれなかったのであり、途中で断念できず死姦にまで及んだと言えます
なので、事件を読み解くには外在的な共通項捜しより、犯人の内面へと大胆に踏み込み、彼や彼女の抱いている欲望を直視する必要があると精神分析の側では考えるのです
小林被告が他人との交流スキルを欠いていたから性犯罪に走ったと断定できる理由はありませんし、美少女アニメ好きだから犯罪に走ったわけでもありません。美少女アニメファンが性犯罪に走るというなら、世の中は性犯罪で溢れかえっているはずで
新聞やテレビは犯人がアニメ好きだったから、性犯罪に走ったのだと鬼の首でも獲ったように指摘するのにはうんざりします
最後に、記事の文末で草薙敦子は「二度とこういった痛ましい事件が起こらないためにも、一刻も早い真相の究明と、今後の再発防止のためのシステムの構築が望まれる」と書いているのですが、犯罪報道に関わっている人物ならそのような防止システムの構築など不可能だと察知できるのではないでしょうか?
悲惨な事件が減ってほしいとの願望は理解できますが、人間の行動(犯罪)を事前に制御するなど無理であり、犯罪を減らすことはできても根絶するのは不可能でしょう。残念ながら非道な犯罪はこれからも起きるのです
記事の締めくくりとして鋭い問題提起をした気なのかもしれませんが、現実をよくよく検討するべきです
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